第42話 幹部募集
市民が遠巻きに見守る中、警備隊によって羽を生やした犬は抱えられ、どこかに連れて行かれた。その様はまるで、私貿易船で屈強な小母さんに描かされた絵のようだとエルナは思う。
「まあ一般市民や迷宮守りどもはあのザマだったけど、警備隊とか軍はしっかりしてるみたいだねぇ、当然だけど。さて、あたいらが逃亡後に使う予定だった潜伏場所の一つがこの街にはある、そこを当たってみようじゃないか」
メイヴは本当にその場所を知っているのか怪しいものだった。ある一点を目指して進むにしては無駄な移動が多く、実は未だ敵の一味で、エルナは自分を誘い込もうとしているのではという疑いを若干持った。それを晴らすためにもう一度殺害したほうがいいかも知れないと思い始めた頃、迷宮公社支部に到着した。
「軍府方の刺客が差し向けられたときに備えて、仲間しか知らない合言葉が必要になってくるんだ。ここらのどっかの支部に指名依頼が出されてるはずなんで、その依頼主のとこに行けばいいって寸法よ」
そうして、床で寝ている人や臓器を取られた魔物の死体、反吐などを避けて掲示板に向かい、メイヴは「むっ」と声を出した。
「エルナ、こいつを見なよ。〈銀の黎明〉幹部募集とあるじゃないか。いきなり徒党の幹部ってのはうまい話じゃないかい」
その集団はモーンガルドでは結構な有名集団らしかったが、〈七人衆〉という幹部が何の前触れもなく殺人鬼に虐殺され、半壊滅の憂き目に合った。残ったメンバーたちは破れかぶれで、新たなる指導者を募集。だが、迂闊に復活なぞしたら人殺しがまたぞろ手を下すのではないか、と恐れる人々は誰も応募して来ない。という窮状らしかった。
しかし自分は復讐を果たすという使命があるので、余計なことはしていられない――と口に出してみたが〈銀の黎明〉の力を使えば、復讐も楽になるかもしれない。どうせやらなくてはいけないなら、確実に、簡単にやりたい。
エルナはこの募集に応募してみようと思った。メイヴの言う潜伏場所とやらも当てになるか怪しいものだし、今はこの周囲で協力者が必要だ。それでもし、誰かに「復讐をないがしろにしているのではないか」と批判されたら「友達が勝手に応募しちゃって」などと言ってごまかそう――そんな「誰か」というのが存在するはずもないが、復讐者として定義されているエルナは、そこから外れることを気にしていた。
そうしてエルナは、二つ上の階層に移動した。昇降機は錆びていて、すさまじい騒音を上げたが、誰もが慣れているのか気にする様子がなかった。降りた先は酒場ばかりが並んでいて、人々はメイヴよろしく酔っぱらっていた。彼女もそこいらの店によどみなく入り込んだので、ほったらかして〈銀の黎明〉の拠点へ向かった。




