第33話 地下墓地通過
本と化したラップローヴは命じれはすぐに剣へと戻った。ガヴィンの過去に遺物が混入したのかも知れないが、今後の目的は依然として東の僧院領へ向かい、ロドー家並びに〈夜居〉の関係者から話を聞くことだ。
オアシスを旅立ってやって来た地下迷宮は、かつて探求したドルススの〈浅き墓穴〉よりも墓所としての特性が色濃い場所で、石の棺に収まった骸骨が並んでいる。人族ではないものも含め、大小様々な亡骸が、相応のサイズの棺に収まっていた。あの屍術師の同行者ならば、ここにもっと興味を抱いたかも知れんな、とエゲリアが言った。彼女とは組んで長いのか? と尋ねられてガヴィンは、ベイリンからオアシスまでの旅で同行したに過ぎない、と答える。
「そうだろうな。我らもそうだが大抵の迷宮守りの一団は、強力な利害関係がなくば、そう長続きはしない。迷宮は単独か、ごく少数のみでの侵入を望んでいるからな」
棺から飛び出した人骨が錆びたサーベルを手に突如襲い掛かり、エゲリアは赤い光を纏わせた手で払いのける。それだけで頭蓋骨とその周辺が消失し、骸骨は倒れた。ナシラが自分には扱えないと言っていた、帝国戦魔道士の奥義〈破壊の光〉だ。
やはり、迷宮そのものが作用しているのか、とガヴィンが言うと、
「そうだ。多くの探索者は、迷宮が自らにもたらす心身の変化について頓着しない、する必要もないだろうが。迷宮に長くいると身体能力は上昇するし、そうでなくとも高揚し、恐怖心は多少なり薄れる。だから、単独で少しばかり危険な場所へ飛び込むことにも躊躇しない。
そうではない者もいる、各国の軍隊や、ソラーリオの迷宮守りどもだ。徒党ではなく部隊を組んでな。死ににくくなるのは確かだが、それは障壁でもある。集団訓練なぞせずに、単独で気軽に飛び込んで欲しがっているのだからな、迷宮というやつは。もっと言えば、死んで欲しがっているのやも知れんぞ」
エゲリアは〈破壊の光〉のみならず、ガヴィンが見たこともない魔術を色々と行使する。空間の穴に骸骨がねじ込まれるように放逐されたり、不気味な黒い火球が射出されたりといったものだ。いくら魔力に富むエルフといえど、これほどまでに乱発できるものだろうか。カプリムルグスのように、なんらかの道具を補助的に用いているのか。さすがは各組織の強者を引き抜く〈烏合衆〉から勧誘されるだけのことはある。
この道ではエゲリアが事前に言ったとおり、ガヴィンは見ているだけで良かった。大した大きさではないな、と言って彼女は魔物から獲得した魔石をすべてくれたが、ガヴィンには、そうは見えなかった。




