第25話 徒党
それからもナシラとは定期的に迷宮へ潜っていたが、このダグローラ広場で出会った迷宮守りたちは他にもいた。
最初に出会ったのは〈汽水のカリグラ〉と呼ばれる、海神ヴァトノーラの加護を受けた人物だった。彼は定期的に海水を飲んでおり、そのままだときついので真水で薄めていたためにこの二つ名を持っていた。
リウィア鐘楼でたまり場になっていた部屋の主はあなたか、と尋ねると、それは別人だ、カリグラっていうのは昔の皇帝か執政官か将軍の名で珍しくない、とのことで、事実これからもガヴィンは同名の迷宮守りと数多く出会うことになった。
カリグラと組んでいたのがポーカという、長身の甲冑戦士で、この人物は常に大兜を脱がず声も発しなかったので、性別も種族も年齢もまったく不明だった。名前にしても、かつて存在した無言の癒し手である同名のエルフにあやかって呼ばれているだけだ。
ポーカは〈辻治療師〉と呼ばれる、迷宮の付近で通りがかる負傷者を無差別に治す癒し手だった。そうする理由はいくつかあり、ソラーリオの聖律のように守ることで神からさらなる恩寵を得るため、修行のため、趣味のためなどが考えられるが、ポーカの目的はもちろん分からなかった。
何度かカリグラやポーカと迷宮や酒場で出くわしたあと、一時的に徒党を結成しないかという話が出た。特に何か目的があるわけでもない集団で、毎回参加する必要すらないということで、まずナシラとガヴィンとこの二名がメンバーに入ったが、その後もこの時期に近くにいた人々が加入と脱退を繰り返した。
代表的な団員に〈漁り屋ヌミトル〉、〈ダミ声〉、〈炎刃のオベロン〉、〈炎刃〉ではない方のオベロン、ダフネの妹、〈雨乞い師〉、〈向こう傷のテセウス〉、〈夜番〉、バーデン親方、〈金角杯のゼノビア〉〈痩せ身のアガトン〉などがおり、他、一度だけ参加してきて名前も知らない人物もかなりいた。
六王国ではソラーリオを除き、大半の迷宮守りが単独で潜り、組んだとしてもろくに連携を取ることはないが、帝国ではその傾向がさらに強く、ひどい場合はとにかく全力で各自が攻撃し続けるという戦略に終始した。この集団もポーカが腕のよい治療師であったことも手伝い、傷を負うことも恐れずに突撃を繰り返し、各自が役目を果たす整然とした部隊にはなり得なかった。
これらの人々の中で、ナシラは意外にもかなり上位の強さを発揮した。彼女の影が角の生えた大柄の怪物に変形したかと思うと、その姿そのままの山羊頭の悪魔が姿を現し、魔物を蹂躙した。それは〈悪魔憑き〉とか〈悪魔呼び〉と呼ばれる、迷宮で獲得できる力の中でもかなり強めのものだった。乱戦の中で、ガヴィンも剣を振るった際、たびたびこの悪魔や他の戦士たちを傷つけたり、逆に傷つけられたりしたものだが、ポーカがたちどころに治し、誰一人として傷を負ったまま迷宮を出ることはなかった。




