第23話 魔女見習いナシラ
キーラから獲得できたのは奇しくも、麻痺の効果を無効化する指輪だった。呪術師ギルドで鑑定してもらったところ、先に買った首飾りよりも強力であり、そちらを売却し賞金と合わせて、当面の生活費と旅費はどうにか工面できた。
そのころ出会った迷宮守りの中に、〈薄暮街のナシラ〉という少女がいた。ベイリンのダグローラ広場の公社と、呪術師ギルドの両方に出入りしている修行中の魔女見習いだった。
〈薄暮街〉とか〈夕刻街〉と呼ばれる場所は世界中にあり、魔力灯の光とその階層に留まっている魔力のために、一日中夕方のような雰囲気となっている。そういった場所では特有の魔術や魔法薬が生まれ、出身者の体質にも影響を及ぼすこともある。
魔女と呼ばれる者たちも世界各地に存在し、貴族階級を指すフォルディアの魔女や、異端者の呼称であるソラーリオの魔女という例外もあるが、概ね徒弟制度を有する伝統的な女性の薬師や付与術士、祈祷師などを意味する。今日の帝国における魔女は、薬師と占い師の側面が強い。彼女たちは〈毒蛇の時代〉における毒薬と治療薬の技術や、錬金術師たちの御業の後継者であり、ナシラもまた、日々雑用と同時に修行を続け、迷宮における実戦もこなした――帝国の魔法使いは総じて戦魔道士たることを旨としている。
ナシラはカプリムルグスの知り合いであり、彼の〈山羊の乳絞り〉という名――ヨタカを意味する語――に共感を抱いていた。現在、この見習いは、魔術を用いたチーズの熟成技術について、乳絞りから学んでいたからだ。彼女の師匠は、迷宮や旅路のための兵糧作成に長けた一族らしかった。
あるとき、食堂でナシラと出くわし、隣にいた師匠と思しき老婆が突如ガヴィンを見つめ、「お前さん、魔術に興味はないかい?」と尋ねた。
ガヴィンが、戦闘に使えるものが欲しいとは思っていた、と答えると、老魔女はナシラを指し、「なら、この子に教えさせよう」と宣言する。
「ええ!? 師匠、何言ってるんですか!?」
「こちらの兄さんは結構な才覚の持ち主だよ、ナシラ。何も大魔道士にしろってんじゃないよ、基礎的な技術だけでいいんだ。お前さんのためにもなることだよ」
「だけどチーズ作りが忙しくて――」
「ふん、そっちは一旦お休みさ、まだまだ客に出せるようなもんじゃないし、及第点には程遠いからね。さあ、この兄さんと迷宮へお行き、今からは実戦をこなすんだよ」




