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DUNGEONERS:LIFEPATH  作者: 澁谷晴
5:Thyella Caskbottom
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第146話 円卓の騎士ケビラ

 メリッサはかなり早足で進むシエラに送れずついて来た。息が乱れることもなく、世間話をしている。前に仲間の迷宮守りが骨折した際の話だ――異常事態の最中、どんな経緯を経てその話題になったのか分からないが――そいつが治療院へ行くと四つの選択肢を提示された。魔術で今すぐ治す、魔術と治癒力を併用して早めに治す、魔術を使わずギプスで固定して肉体の治癒力のみに任せる、回復を抑制してわざとゆっくり治す。値段は勿論それぞれ違うが、ゆっくり治す意味はあるのか、と尋ねると治癒師(ヒーラー)は、あんたの状況では加害者とか保険会社から、より多くの治療費をふんだくれる見込みがあるという話をし始めたという――そんなことを喋りながら森林と化した都市を進んで行くと、眼前に突如、大柄な騎士が現れた。


 鎧と兜で顔と種族は分からない。こんな暑い中、フル装備の武装を纏っているということは、それなりにカネのかかった付与魔術(エンチャント)が施されている、まあまあ上級騎士か金持ちということになる。その衣装にシエラは見覚えがあった。〈竜と円〉の紋章の入ったサーコート。バカンの〈円卓騎士団〉のものだ。前保有者の〈名も無き者〉が未だシャロウシープと名乗っていた頃、リースという名の騎士が闘技場(アリーナ)へ誘引し無茶な興行に参加させた。騎士達は本拠地ラウンドテーブルの宣伝と、己の力を誇示するために、各地へ遠征を行っている。


「ほう、生命探知に人族の反応があったから来てみれば、このような見捨てられた地に風生まれの旅人とはな」


 彼はケビラと名乗った。彼はコンスタンスフェアの領主ヒエロンから、都市周辺に発生した転移扉(ポータル)の調査を依頼され、中に踏み込んだ所、この地に出たという。


「わたしはこれより調査を終え、帰還するところだ。貴公らも来るか? 幸い、〈扉〉を潜るに当たって迷宮病に罹患するとか、魔物に襲撃されるといった罠はなかった」


 メリッサは同行したいと申し出、ここは結局何なの? と尋ねる。


「分からん。エノーウェンにある不明な迷宮の一つ、ということ以外はな。香辛料半島は帝国とイーグロン――すなわち異なる世界同士の――境目に位置している。転移も比較的多く発生するし、〈扉〉も多い。シヴ=イルヴァのような、空間的異常を抱えた場所も見られるほどだ」


 ガヴィンもかつて、あの都市へ転移させられた。もうずいぶん昔のことのように感じる。メリッサは曖昧に頷いていた――彼女はここが、エノーウェンのどこかに実在するデュルガリアという地なのか、迷宮内なのか、〈語り手〉の生んだ物語の中なのか、それをはっきりさせたかったようだが、それらは全て同じなのかも知れず、区別する方法はなさそうだった。

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