表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DUNGEONERS:LIFEPATH  作者: 澁谷晴
4:Shallowsheep
116/164

第116話 〈大王ムカデ〉亭

 最初に入り口を入ると、テーブルが並んでいてカウンターの向こうにはバーテンダーがいる、一般的な酒場だ。上下のフロアへ向かう階段と、隣の部屋への扉があり、そのいずれの先にも、同じような部屋がある。もちろん魔物や罠が当たり前のように存在し、客や店員にも油断ができない。先に述べたように、酒にはすべて毒が入っているが、それを浴びせかけてくる者もいるし、言葉巧みに飲ませようという者もいる。


 シャロウシープは隣室へ入った。凄まじいほどの煙で、室内は霞んでいる。客たちがふかしている煙草のせいだ。この煙幕に乗じて襲ってくる相手に用心しながら、部屋を抜けた。ジャックを見ると、いつの間にか鉄パイプを手にしている。動きも素早く、足運びに隙がない。平凡そうに見えても、迷宮守りとして熟達者なのかも知れない。


 壁や床にどす黒い染みが付着していて、饐えたにおいが漂う殺人現場みたいな部屋で、ナイフを持ったゴブリンが三体襲い掛かって来る。シャロウシープは手元に衝撃波を発生させる術で一体を吹き飛ばした。ジャックは鉄パイプで危なげなく二体を叩きのめす。それから彼は、周囲に注意を配りながらゴブリンのナイフを拝借し、胸部から魔石を摘出する。いつもこうして、誰かと組んで探索をしているのか、と尋ねると、


「最近までそうだったが、相棒の迷宮病が悪化してしばらく休むことになってな。幻覚がひどくなって、始終恐ろしい幽霊が追っかけてくるらしい」


 幻覚なら自分も見た。男前の騎士がぐちゃぐちゃな肉の塊に変化するやつだ。


「とはいえ、大して(こた)えていないようだな」


 よくあることだからな。肉が食いたくなったのはそいつのせいだ。それから最近、頭の中によく分からないイメージが浮かんでくる。誰か別の奴の記憶かも知れない。


「なるほど。迷宮を通して、別人の記憶が流入することがたまにあるらしい。ちょっとした転生者みたいなものだ。運が良ければ、なにがしかのスキルや魔術が仕えるようになることもあるそうだ。期待すべきではないだろうが」


 それからもジャックは最近のニュースを話しながら、悪漢や魔物を退治していく。警備隊(チェス)が大規模な組織(シンジケート)の摘発作戦を行い、〈ヨルガオ党〉なる団体が捕縛されたらしい。そいつらは鼻水が止まらなくなるチョコレートを密造していたが、押収されたことで市民の関心を惹き、現在とんでもない値段で取引されているらしい。


 彼は話しながらも手を動かし続け、〈転がり臓腑〉を叩き潰したり踏みつけて腐った汁を飛ばした。次の一室で目当てのものを発見した。酒場の内部にガラス製の水槽が並んでいて、中に白っぽい人造肉がいくつも浮かんでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ