表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DUNGEONERS:LIFEPATH  作者: 澁谷晴
3: Bouleau The Wheeler
104/164

第104話 血の探求者

 荷車を引き、砂漠を歩んでいく。頭上には二つの月。砂漠の向こう、ある一線から先は急に木々が異様に繁茂し、その上にかかっている雲も、すっぱりと線を引いたようにこちら側で途切れている。世界の接合点だ。


 帝国南部に踏み入ろうとするブロウだったが、歩みを止める。砂が盛り上がり、地中から巨体が姿を現した。門番のように待ち受けていたのは、アスラの石像だった。


 彼の周囲から、更に何体もの石像が現れる。実際にはアスラたちは本気でブロウを恐れており、その脅威をここで排するつもりなのか。それとも、戯れのつもりか、単なる形どおりの防衛に過ぎないのだろうか。


 いずれにしろ、眼前の石像たちを粉砕しなければならない。ブロウは双剣を手に、跳躍する。


 フォルディアの死体漁りだった彼は、新たな役目(ロール)として迷宮守りを選択した。だがそれも、単なる手段に過ぎなかった。異なる世界の彼と〈黄昏の宝珠〉を通して融合し、アスラを狩るという使命を見出した。


 〈宝珠〉は本当に単なる象徴だったのだろうか。この先何らかの力を、ブロウに与えることもあるかも知れない。彼が迷宮守りや吸血鬼として、更なる高みに上ったとき。狩りの中で誰かと出会い、どこかの場所に到達したとき。さもなくば、単なる時間の経過によって、その真なる輝きを見せ得る――そうだとしても、それは今ではない。


 今夜はただ、血だけを求めて前に進む、そう剣を振るいながらブロウは】


―――――――――――――――――――――――――――


 そう書かれたページが風に飛ばされていく。継承者は、それを読むことはなかった。剣を持っていないし、荷車に乗せて運んでいるわけでもない。自らがその所有者ということを自覚していなかった。ラップローヴは、使用者が何時でもそれを思いのままに振るうことを定義し、保証しているが、その意志を持たない者が剣を使うことはできない。


 それでも、その定義と資格を失ったわけではない。


 異世界の英傑アレッシアもまた、その近くに佇んでいるが、誰かが彼女を気にすることはない。認識できていても、世界そのものと同じく、存在するのが当然だからだ。アレッシアはただ、傍観する。剣もまた然り。無自覚なる保有者を、今はただ見守っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ