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第1話 ヒーローに憧れて

「はぁ…今回もプニキュアか…」

彼の職業はスーツアクター。

キャラクターショーなどのいわゆる中の人だ。

しかし男なのに事務所の都合でプニキュアの着ぐるみを着ることなってしまった。


もともと子供のころから特撮ヒーローなどの戦隊ものが好きだった。

そのなかでスーツアクターという職業を知り、学生の頃から体力づくりや演技や殺陣の練習をたくさんしてきた。努力の甲斐あって無事キャラクターショーなどイベント関連の事務所に入社しスーツアクターになることができた。

彼は合格したとき涙が出るほど嬉しかった。

子供のころから憧れていたヒーローになれるんだって。


勿論志望したのは特撮ヒーローのショーチーム。しかし希望はなかなか通らなかった。

問題はきっと身長。

彼は155cm、成人男性としてはかなり低身長。特撮の戦隊ヒーローや仮面ライダーのアクターとしては最低でも170cmは希望されることが多い。

それは背が高い方がヒーローとしてやはり見映いいからだ。

しかしそんな彼に白羽の矢が立った。それはプニキュアなどの女児向けアニメの女の子の着ぐるみのショーチームからのオファーだ。


どうやら特撮のショーチームから話が伝わったらしい。

「動ける若い男性アクターがいる。ヒーロー志望なんだが背が低くてうちでは彼を手に余している」と。

彼は業界の人たちからは演技も殺陣も問題ないし、同年代の中ならかなりいいと好評だったらしい。

男だから体力もある。プニキュアなど女の子の着ぐるみ役が必要なショーチームでは身長の低い彼のような男性アクターが大変貴重なのだ。

先輩達からも「せっかくチャンスを貰ったんだからやってみてはどうか?」と言われ、気が乗らないがオーディションを受けた。

引く手数多だった。色んな女児向けアニメの着ぐるみのショーの仕事が舞い混んできた。

そして最近では専らプニキュア専属のアクターになってしまっている。


それはとても複雑だった。

目指していたのは子供のころから憧れていた格好いいキレキレの動きをする正義のヒーロー。

しかし現実は全身を肌色のタイツで覆われ、女性でも着るのが恥ずかしいフリフリの可愛らしい衣装を身に纏い。アニメからそのまま出てきたような大きな目を持つ可愛いFRP製のマスクに顔を覆われる。そして可愛いプニキュアとして、中に男性が入っていると思わせないように女の子らしく可愛くふるまわなければいけない。可愛い振り付けのダンスも覚える必要がある。練習の場でもプニキュア役はほとんど女性。その中にひとり男性の彼が混じって女の子の役の練習をする。恥ずかしくてたまらない。


プニキュアのショーチームの女性陣からはかなり有難がられた。体力のある男の彼が入ることで彼女たちの負担がかなり減ったらしい。

しかし実際、彼女たちから見たら彼はどう映っているのだろうか。

きっと背の低い彼では特撮チームで仕事がないからこっちに回されてきたとか、可愛そうだからとか、内心そう思われているのだろうか。彼は与えられた仕事と自分の気持ち、周りからの視線といった複雑な心境の中で仕事にあたっていた。

同期はみんな特撮チームでバリバリやっている。仕事がなまじあるばかりにこんな相談さえできない。


そしてプニキュアのショーチームで割り当てられる役が彼をさらに憂鬱にさせた。

彼が着るプニキュアの着ぐるみは主にピンクや黄色。

ピンクは主役、一番動きが多くショーの花形。体力的にもきついし一番目立つ。みんなの目にさらされる。

そしてもっと大変なのが黄色。所謂可愛い女の子を体現したような役。つまり演じる彼も女の子のような可愛らしい演技が求められるのだ。

せめてカッコいい動きをする女性役がよかったがそういったキャラはショーの中でも背が高い女性が割り当てられる。

これも彼の背が低いからなのか。

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