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*♡異世界恋愛♡*

推しの魔法使いに溺愛されすぎてどうにかなりそうです!

作者: 虎娘

魔法が当たり前に存在するこの世界。

私こと、オリーブ・ガーランドには、密かに恋い焦がれている人がいる。

魔法学校に通っていた頃に一目惚れした推し……所謂アイドル的存在である、眉目秀麗という言葉が見事に当てはまるお方、魔法使いのアクタス・ロイド様。


彼の周りにはいつもたくさんの女の子たちが群がっていた。私もその群に交じりたいと思いつつも、いつも柱の陰から遠目に推しである彼を見つめていた。

時折、目が合ったような錯覚に陥ることもしばしば。


いかんいかん。こんなことをしていれば変人ストーカーとして見られてしまう

……モブキャラはモブらしく生きていこう


そんなこんなで、彼と一度も話をすることなく5年間過ごした魔法学校を卒業。

その後の私はというと、唯一の肉親である祖父が営む店を継ぎ、毎日地味に魔法薬を調合しては売りさばく仕事をしている。


ある日、店に通う常連客から少し調合を変えて欲しいと依頼を受けた。

魔導書に記されていた通りの物を準備し、必要量を順不同に大鍋へと放り込んだ。

このちょっとしたことが失敗を招く、と散々教えられてきたはずであったが、私は何も考えずに作業にとりかかってしまったのだ。


モクモクモク……

見慣れない煙が上がりだした、と次の瞬間。

ボフッ

紫色の煙が部屋中に蔓延した。


やってしまったぁ。入れる順番を間違えた……


気を取り直して立ち上がろうとしたが、これまでとは何かが明らかに違う。


まず、先程までは目の前にあったはずの大鍋……

見上げないといけない?何この大きさ……


辺りを見渡すと、室内に置いているどれも見え方が違う。


よし、一体この状況を整理しよう


そう思い、腕を組もうとした。


え?

えぇ?

私の腕って、こんな色だった……か?毛むくじゃら……?


自分の腕をまじまじと見つめ、手のひらを確認。


なんだ、この肉球は……指……んっ?

指が……ぬっ!!

このままではモノを掴めない、それどころかこのぷにぷにする肉球……舐めたい

はっ!!この衝動ななんだ

このままでは埒が明かない


そう思ったは私は急いで鏡のある洗面台へと向かおうとした。

が、今にも先ほどの大鍋が爆発しそうな雰囲気を醸し出していることに気付いた。


ここにいてはまずい

店を吹っ飛ばす可能性もあるが、命だけでも助かれば何とかなるだろう


私は少し隙間を開けていた窓から脱出。

勢いあまって目の前の人にぶつかってしまった。


「おっと。ナイスキャッチ」


キャッチされたと同時に、

大きな爆発音とともに店は吹き飛んだ。


あぁじいちゃん、ごめんよ。いつか必ず立て直すから…


一瞬で吹き飛んだ店を眺めながらあることに気付いた。


そうだ、私、慌てて人にぶつかりそうになったんだ

親切な人が近くにいてとよかった


そう思い、ふと顔を上げるた。

間近にあったのは、彫が深く、ぱっちり二重に透き通ったターコイズブルーの瞳。

魔法学校時代から隠れて眺めていた推し……紛れもない、アクタス様のお顔がそこにはあった。


おおぉぉっと

これは心臓に悪い

早くこの場から逃げ出さねば…


もぞもぞもぞ

必死に動いても、逞しい腕にホールドされた状態の私は身動きが取れなかった。


「君、もしかしてこの家で飼われてたのかい」


こくりと小さく頷いた。


「そうか…このままだと、君の身が危ないね……そうだ、私の家で一緒に暮らそうか」


ちょっい待て待て待て

いくらなんでも唐突過ぎる

いや……アクタス様とひとつ屋根の下で暮らすだなんて……

いくら心臓があってももたない……

と言うか、確かに彼が言うことに一理あるような、ないような

このまま野宿なんてすれば、数多いる魔法使いの格好の餌食に成り兼ねない

ここは素直に彼の家に行くべきか


色々と頭で考えているうちに、見慣れない建物まで来ていた。


「はい、着いたよ」


なぬ。いつの間に……


目の前には石造りの家があった。

私の居た店とは雰囲気はまるで違うが、どこか懐かしいようにも思えた。


アクタス様に抱えられたまま、私は推しの家へと足を踏み入れていた。


ここがアクタス様のご自宅

くんくんくん……

アクタス様の匂いが染みついている


「何か変な匂いでもするかな?」


とんでもございません、むしろいい香りすぎて酔ってしまいそうです


なんてことは言えないため、頭を左右に振った。


「良かった。まずは……と。君の名前を決めないとね。何がいいかなぁ」


いずれこの家を離れますので、お名前なんて要りませんわよ

それよりむしろ、私は一体どのように変わってしまったのか教えていただきたいです


辺りをキョロキョロすると、ちょうど近くに鏡を見つけることができた。

私はそこへ向かって走り出した。

鏡の目の前に着き、自分の姿を確認……。


なんてキレイな色なのかしら

それに、このツヤツヤとした毛並みも素敵

どこからどう見ても可愛らしい猫ね……猫……?ネコっ!?

調合に失敗した結果、猫になりましたぁ

って笑えないよぉ

しかも、推しのアクタス様にも大変なご迷惑をかける結果になるだなんた……


「オリーブ」


名前を呼ばれてついつい反応してしまった。


「この名前でいいかい?君の毛並みや瞳の色から、絶対にこの名前がいいと思ったんだ」


人間だった頃の名前と同じ名前

しかも、ずっと恋焦がれていた推しから呼ばれるだなんて……

このままでは本当に心臓が止まってしまいそうですわ

今すぐにもでもこの場から逃げ出そう


ピョンと、床へ降りた私に対し、あろうことかアクタス様は何やら呪文を唱えた。

すると、首の辺りに深緑色の紐状のものが巻き付いてきた。

それが首輪であることに気付くまでほんの数秒……。


「これをしておけば、オリーブがいなくなってもすぐに探せるよ」


なんと!!

これでは逃げるどころか、逃げてもすぐに連れ戻されてしまう

くぅ……なんということだ


「お腹空いたでしょ。オリーブ、こっちにおいで」


これからはアクタス様のいう事を聞くしかなくなってしまった私。

こうして推しであるお方との生活が始まったのである。



□⋆□⋆□

猫になってしまった私と、長年の推しであるアクタス様との突然の生活が始まって約1年が経過。

私は今も尚、人間への戻り方がわからず猫として生活していた。


文字は読めてもモノが掴めず、調合すらできない身体となってしまった私。

アクタス様の疲れを癒すために、今日も彼の膝の上にゴロンと寝転がった。


「オリーブは私の言葉がわかるみたいだな。君が来てから、私の心は満たされているよ」


私も満たされます

満たされ過ぎてどうにかなりそうです……


「欲を言うならね、私もそろそろ身を固めたいと思っているんだ」


へっ……はい?

何を仰っているのか、私にはわかりません……


思わずアクタス様の顔を見つめてしまった。


「私はね、これまで誰かと一緒になりたいなんて考えたことなかったんだ。別に1人で生きていける自信はあったからね。けど、こうして君に触れていると、どうしても恋しくなるんだ」


この展開はなんだ……

猫だからと言って何でも打ち明けていいわけではない

貴方様の口から見知らぬ女性の話は聞きたくありません……


両耳を手で抑えるような恰好となった私を見て、アクタス様は笑い出した。


「ははははは。本当に君は変わらず可愛いね。私の愛しい愛しい人」


どういうことかわからず、耳を塞いでいた手を離した。

膝の上でアクタス様を見上げるようにしていると、優しく抱き上げられた。

目の前には長年恋焦がれた推しのアクタス様。

恥ずかしさのあまり、視線をはずそうとした。だが、それは叶わなかった。


「オリーブ・ガーランド、愛しい人よ、どうか元の姿に戻っておくれ」


気付いたときには、私の小さな唇にアクタス様の唇が触れていた。

煌びやかな光のベールに包まれ、私は元通りの姿に戻ることができた。

と同時に、逞しい腕をお持ちのアクタス様に抱き上げられたのだった。


「私の愛しい人、ようやく抱きしめられる。これからもずっと私の傍にいてね」

虎娘『推しの魔法使いに溺愛されすぎてどうにかなりそうです!』

を読んで下さり、誠にありがとうございます。

今回の作品は、これまでとは少しテイストを変えてみました。


良かったなぁ、いいじゃん

と思っていただけましたら、お星様★をポチポチたくさん押して下さいませ。

感想もいただけましたら、私の励みにもなりますので、よろしくお願いいたします


今後とも虎娘の作品をよろしくお願いいたします。

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