転生したら王蟲だった件
心が王蟲と入れ替わった女の子のお話です。
一人声劇用としてご利用頂けます。
あなた:う、うぅ…
あなた:なんだろうこの感覚、あたまを撫でられているような、、
あなた:誰、やめてよ、まだ眠い、やーめーてって
あなた:あれ?言葉が出ない
あなた:手がうまく使えない…
あなた:身体をよじろうとしてもよじれない
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モノローグ:何故か快適に動く目で見上げた先
モノローグ:視界に入ったのは…
モノローグ:片思いの彼(彼女)!?
あなた:ちょっと待って!
あなた:私(僕)なんであの人に撫でられてるの?
あなた:これってどういう状況!?
モノローグ:情報を得ようとさらに目を動かすと
モノローグ:360度見渡せることに気がついた
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あなた:な、なんなのよコレ!?
モノローグ:そして見つけた姿見、そこに映った私(僕)らしきものの姿は…
モノローグ:王蟲
あなた:まって!何よこれ?これが私?
あなた:目がめっちゃあるんだけど?!
モノローグ:姿見に映る私のようなものは青い目が縦横に無数に並んでいてさながら王蟲のようだった
あなた:…てか、王蟲でしょコレ
あなた:ナウシ○どこよ?
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あなた:あっ…
モノローグ:そしてまた彼(彼女)に不意に撫でられる
モノローグ:どうやら私は意識が王蟲の中にいる
あなた:でもどうして?
モノローグ:そういえば私は買い物の帰りだったはず
モノローグ:そこで子どもたちがダンゴムシを蹴飛ばしてて
モノローグ:それを助けたところに・・・
あなた:そうだ!そこに車が突っ込んできて!
あなた:そっか、そこで私は死んじゃったのか…それで王蟲に転生…
あなた:って、そんなわけあるか!!
あなた:ていうかダンゴムシ助けたから王蟲って無くない?!
あなた:ダンゴムシって目が14個もないじゃん!
あなた:てかそもそもヤツらに目あるの?
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モノローグ:そんな考察を張り巡らせていると彼が私をベッドに下ろして立ち上がった
あなた:あ、もっとなでなでプリーズ
モノローグ:彼とは、幼なじみの腐れ縁だ
モノローグ:長い間いっしょにいるから当たり前のように好きになってた
モノローグ:断じてイケメンだからではない
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モノローグ:だから彼はモテる とにかくモテる
モノローグ:次から次へと女の子が寄って来る
モノローグ:だから幼なじみの立場をよく羨ましがられる
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モノローグ:でも本当は優柔不断で
モノローグ:陰キャ高プライドな彼
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モノローグ:誰とも付き合う気なんてない
モノローグ:そういって誰とも付き合わない
モノローグ:いつも一緒にいる私のことはペットか何かだと思っていそう
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あなた:は?ペットって何よ?
あなた:私はちょっとメガネで陰キャで、すぐ調子乗っちゃうけど
あなた:本当は超カワイイキャラなんですが1?
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モノローグ:でも本当は、誰とも付き合わない彼なら
モノローグ:ペットの位置も悪くないかな? なんて思い始めていた
モノローグ:そんな矢先の…王蟲
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あなた:いや待って、
あなた:ペット的立ち位置でもいーかなーとは思ったよ?
あなた:でも人外って何よ!しかも王蟲!
あなた:これファンタジーじゃん!
あなた:ジブリワールドじゃん!
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モノローグ:と、残念なセルフツッコミをしていると電話を終えた彼が戻ってきた
モノローグ:なんだか様子がおかしい…
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あなた:なんかめっちゃ暗いんだけど…大丈夫かな?
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モノローグ:彼は部屋に戻ってくると静かにベッドに座り私を抱き上げ
モノローグ:また膝の上に乗せて撫で始めた
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あなた:どうしたの? なんでそんな絶望した顔をしてるの?
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モノローグ:心から出た言葉は布袋寅泰のギター音となった
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あなた:ギキキギキキギ・・
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モノローグ:そうか、私は王蟲だったんだ
モノローグ:もう慰めてあげることも撫でてあげることも出来ないんだ
モノローグ:襲い来る悲しみに顔を覆いたくなる
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モノローグ:そんな時だった
モノローグ:私の下から金色の触手が伸びた
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あなた:これってあの金色の野になる癒すやつ!
あなた:これなら彼を少しでも癒せるかも知れない!
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モノローグ:すると彼はそっと私の手に触れ、声を上げて泣いた
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あなた:ねぇ、泣かないでよ。私にできることはない?
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モノローグ:言葉にならないことは分かってる
モノローグ:でも思いだけでも伝わらないかな
モノローグ:あなたには笑っていて欲しい
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モノローグ:そう考えていたら彼がポツリポツリと電話の内容を呟き始めた
モノローグ:私が虫を助けようとして車にはねられて意識不明の重体・・・え?
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あなた:え、まって!?
あなた:私死んでないの!?
あなた:えっ、えっ、死んでないのに王蟲に転生したの!?
あなた:あ、この場合は転生じゃない意識だけが王蟲の中に飛ばされたんだ!
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モノローグ:死んで転生したと思っていたのにまだ私は生きていたんだ?
モノローグ:それが分かると安心と同時に当然の疑問がわいてくる、、
モノローグ:どうやって元に戻ったら良いんだろう?
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モノローグ:そんなことを考えていると
モノローグ:泣いていた彼が顔を上げて出かける用意をし始めた
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あなた:え?もしかして病院に行くの!?なら私も連れてって!
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モノローグ:体のそばに行けば戻る方法も見つかるかもしれない
モノローグ:そう思った私は必死に彼に擦り寄った
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モノローグ:でもそこはさすが
モノローグ:節足動物門甲殻類鋼等脚目ワラジムシ亜目
モノローグ:…に似た腐海の王様・王蟲
モノローグ:どうやらスリスリしたら外殻がめっちゃ痛いみたい、ごめんね
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モノローグ:それでも必死に訴えかけたら思いが伝わったようで
モノローグ:猫を入れるゲージに突っ込まれた私は彼と共に死にかけの自分に会いに行くことになった
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あなた:ていうか彼、猫飼ってたんだ
あなた:かわゆっ!
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モノローグ:病院につくとロビーでママが彼を待っていてくれた
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あなた:やだ!ママ!2日ぶり!
あなた:私はここだよ!気がついて!
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モノローグ:気が付かれるわけもなくママは憔悴しきった顔で彼に私の状態を話した
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モノローグ:どうやら私は頭を強く打って2日間意識が戻らないこと
モノローグ:体は奇跡的にかすり傷で済んでいたこと
モノローグ:脳への損傷が確認できないが意識はすぐ戻るのかずっと戻らないのか全くわからないということ
モノローグ:など、一通り話すと面会へと歩き出した
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あなた:そっか…体は無事なんだ
あなた:…って、ちょっと待ったぁぁぁ!
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あなた:2日経ってるんだよね?
あなた:お風呂入ってないよね?
あなた:歯も磨いてないよね!?
あなた:髪もボッサボサでしかも・・・
あなた:ノ ー メ イ ク !!!
あなた:いや、無理だから!
あなた:ママ!思い直してぇーーー!!
あなた:眼の前で娘カッコだんごむしカッコトジルめっちゃピンチなのよー!!
モノローグ:病室に入るとベッドには沢山の触手…じゃなくてチューブに繋がれた私が寝てた
モノローグ:頭はミカンネットと包帯みたいなのでぐるぐる巻き、顔は酸素マスクで半分隠れていた
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あなた:看護師さん、ぐるぐるグッジョブ!
あなた:目も瞑ってるからアイメイク無しでもも大丈夫・・・よね?よね?
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モノローグ:そしてベッド脇でうなだれてたパパが彼に挨拶をした
モノローグ:促されて隣の丸椅子に座る彼は、パパから色々説明されてパパと似た形でうなだれた
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あなた:あれ?なんかうなだれポーズがパパと彼、超似てない?うける!
あなた:え、でもなんか恥ずいんだけど?
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モノローグ:そんな馬鹿なことを考えているとどこからともなく聞き覚えのない声が頭に直接流れてきた
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あなた:え?なにこの声?こわっ!!
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あなた:私は王蟲?
あなた:仲間を助けてくれてありがとう?
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あなた:ちょちょちょちょっと待って!
あなた:これってこの王蟲の意識!?
あなた:てか、ダンゴムシって王蟲の仲間なの!?
あなた:てか王蟲って日本語喋れるの!?
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あなた:(早口で)ていうかあんたホントに王蟲?
あなた:ガチ?
あなた:てかなんで私あんたの体に乗り移ってるの?
あなた:てかあんたダンゴムシの祖先なの?
あなた:ならダンゴムシは腐海の王様なの?
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モノローグ:混乱から矢継ぎ早に質問をすると
モノローグ:少し間があってようやく王蟲が色々教えてくれた
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モノローグ:仲間の危機を察して助けに行ったら、私が助けてて車に跳ね飛ばされたこと
モノローグ:それ見てやべー死んだと思って、意識だけ剥がして取り入れたこと
モノローグ:肉体無事だから戻してあげたいけど、愛する人の口づけが無いと戻れないこと
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あなた:…え?
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あなた:おーむさん、今、何て言いました?
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あなた:ふむふむ、なになに
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あなた:愛する人の口づけのラブ引力で肉体が強く意識を引き寄せるから
あなた:メーヴェみたいにヒューンっと意識が肉体に戻るよ……と
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あなた:はは。
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あなた:ははは。
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あなた:んなモンスターボックス60段成功する筋肉番付レジェンドアスリートみたいな高いハードル設定すなぁーーーーー!!!!!
あなた:はぁはぁはぁ・・・少し落ち着こう・・・
モノローグ:愛する人からのキス、それが私が元の体に戻るためのトリガー
モノローグ:でもその愛する彼は私のことをペット位にしか思ってない
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あなた:そんな状態でキキキキキスなんて…
あなた:・・・詰んだ もう詰んだ やれ詰んだ
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モノローグ:そんなツンダーランドの超高速メリーゴーランドに乗っていると、都合よくママとパパがドクターに呼ばれて部屋を出て行った
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あなた:え?ふたりきり・・・よね? 展開都合よすぎません?
あなた:いやそんなことより、これってワンチャンあるってことよね!?
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モノローグ:私はこの機を逃すまいと触手でゲージの蓋を開け彼の膝の上に乗り必死で訴えた
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あなた:ギギゴギギゴギゴギ ※適当に鳴いて下さい
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モノローグ:でもやはり私の涙の訴えは今井美樹の旦那のギター音にしかならず
モノローグ:翼があったら飛んでゆくのに、と、嘆きたくなったよジャスラック
モノローグ:そしてそうこうしていると突然、彼が人間の方の私の顔を覗き込んだ
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あなた:え!これって、チャンスじゃない!?
あなた:すかさず私は触手で私の酸素マスクを跳ねのけ、続いて信じられない速度で彼の後ろに回り込み
あなた:私の顔を覗き込む彼の後頭部にダイビングフライングボディーアタックをお見舞いした!
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あなた:行け! 届け! くちびるへ!!!
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あなた:あーーーーーー!!!
あなた:歯磨きと口紅してないじゃーーーん!!!!
あなた:ちゅーしてオー願い!いーよー!!
あなた:(↑知ってる人はあのリズムで)
あなた:(知らない人は「ちゅーして!」でOK)
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モノローグ:私のぶちかましでよろめく彼
モノローグ:そしてその唇は居眠り姫カッコ私カッコトジルの唇へ!
モノローグ:・・・とはならず
モノローグ:手で自分を支えた彼はすぐに私の酸素マスクを付けるのだった
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あなた:だよね、知ってた。ふつー避けるよね・・・ははは・・・
あなた:おまけに、ノーメイクだもんね・・・目、ちっさいしね
あなた:目と眉の間が広めだから、メダカ泳げそうだしね・・・
あなた:いや!泳げねーわ!! ・・・って、そこじゃない!
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モノローグ:と、虚しいセルフツッコミをしていると彼がポツリと呟いた
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あなた:!?!? え…?なんですと?
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モノローグ:彼は続けて呟いた
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あなた:え、あ、あの、え?
あなた:あら?聞き違いかしら?
あなた:なんだか妄想が激しすぎて、彼の口から
あなた:「目が覚めたら絶対に告白するから
あなた:もしそれで付き合えたら真っ先に唇を奪うからな・・・」
あなた:って、蛇口ひねったら水じゃなくてフルーツポンチが無限に出てきたみたいな衝撃ワードが聞こえた気がしたんだけど、
あなた:もしかして私、もう蓮池の淵にでも居るのかしら?
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モノローグ:と妄想していると今度は聞き間違いようのない昇天ワードが飛び出した
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あなた:わわわわわわ私のことがががががが
あなた:すすすすすすスキだですってぇー!!!???
モノローグ:へんじがない ただのしかばねのようだ…
モノローグ:私へのまさかの告白を終えた彼
モノローグ:静かに薄いブラウンの瞳からは清水があふれている・・・
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あなた:あ、むり、、、、尊すぎて好きすぎて私も泣く・・・
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モノローグ:でももちろん王蟲である私は泣けるはずもない
モノローグ:ちなみに、まぶたもない目らしき半球体はいい武器や防具に加工できるそうだ
モノローグ:有頂天天国から絶望地獄へ強制的にバンジーさせられた私
モノローグ:辛さと切なさに えづきながら彼の涙を触手で拭い…その唇に触れた
モノローグ:濃厚プルンのフロマージュを使ったケーキのような唇に
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あなた:こんなにも近くにあるのに、一番触れたい感じたいと震えている私の体は、
あなた:寝たきりで少しも動いてくれないんだね…
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モノローグ:そして仕方なく彼の唇に触れた金色の触手を自分の唇へと忍ばせる
0:…
あなた:せめてもの間接キス
あなた:これだけは許してほしい
あなた:だって…もう…叶わないのだから
0:(泣きの演技をお好きなだけどうぞ)
モノローグ:その時だった
モノローグ:彼が私の酸素マスクをおもむろに外し、眠る私にキスをした
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あなた:えっ?
あなた:何、この不意打ち!!??
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モノローグ:その瞬間、眩い光に包まれたかと思うと意識が元の体に流れ込むのを感じた
モノローグ:少し痛む頭と体と、、、、少し臭う髪
モノローグ:そーっと目を開けると、驚いた彼は椅子から転げ落ちた
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あなた:(か弱く)クスクスクス
あなた:何よそれ、眠ってる幼馴染にキスして何で驚いて転げ落ちてるのよ?
あなた:しかも今のは、私のファーストキスなんだよ? 責任とれるの?
あなた:しんどいのコッチなんだけど?
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0:(セリフだけど、これまでの感じのモノローグっぽく)
あなた:やったよ、最悪だぞ私・・・
あなた:大好きな彼からの告白と生還の嬉しさで、頭がパーリィナイツ!
あなた:ファーストキス奪われて照れマクリマクリスティー発情フェスティボー!
あなた:だからって、なんで憎まれ口を叩くのよ私めっ!
あなた:あー、むり、マジで詰んだわぁ・・・あ、そうだ、王蟲に戻って腐海に沈みたいなぁ・・・
あなた:いやそれじゃあ生ぬるいわ、いっそクシャナ殿下に薙ぎ払え!ってやってもられないかな
あなた:嫌われたよなぁ、、、責任取れとか何様サマンサだよ・・・
あなた:あー、せっかくここから良い流れで付き合えて、チュッチュだけじゃなく
あなた:あんなことやこんなこと出来ると思ったのに・・・うへへ
あなた:うへへじゃないわ! あぁそうだ…彼のために揃えた勝負下着も供養しなきゃなぁ。。。
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モノローグ:その時、ベッドの下から彼の大笑いが聞こえた
モノローグ:あれ?なんで笑ってらっしゃる?
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モノローグ:泣き笑いしながら起き上がってきた彼はノーモーションで私にガバっと覆いかぶさり、今度は、大人の、キスをした
モノローグ:そして・・・一生忘れない言葉を耳元で呟いた
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あなた:(女性のままで読んで下さい)
あなた:おかえり
あなた:その憎まれ口も好きだよ
あなた:勝負下着は供養しないでくれないか?楽しみにしてるから
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モノローグ:上半身の穴から一気に流れる水、そして必死に答える私
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0:(ぐちゃぐちゃの涙と満面の笑みで)
あなた:何よそれ。ちなみに勝負下着はセクシーな王蟲の柄なんだけど
あなた:それでも愛して、共に生きてくれるのかしら・・・セルム?
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エピローグ:その時、彼と私のすぐ脇で小さなダンゴムシが例のギター音を鳴らしていた
エピローグ:まるで笑っているようなギギゴゴギギ
エピローグ:なになに?セルムはナウシカの原作漫画読んでないと、ハッピーエンドの匂わせが分からないって?
エピローグ:煩いわね、ここから三度目のチューする良いとこなんだから邪魔しないでよっ!
エピローグ:ぷちっ。
エピローグ:あっ。
とにかくおっちょこちょいで可愛い女の子のお話。
彼氏と上手く行くといいですね。