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06、ファーストダンス再び

こちら、投稿が抜けておりました。すみません。

 次の夜会に着るドレスが送られてきたのは婚約した翌月でした。2ヶ月毎の公式夜会に向けて私達も準備です。


「誠実であれと上司に言われて、ドレス、負担にならないようにしたつもりなんだけど、その、迷惑でなかった?」


 仮の婚約者なのに準備してくださいました。もしかしたら、今回はお詫びも兼ねているのかもしれません。


 婚約解消できるように自分の色をドレスに入れていないところが好感度高いですわね。黄色は私の髪色に合わせているようです。


「迷惑だなんて。ありがとうございます」


 こちらはドレスをもらったこともないので緊張です。


「アクセサリーは当日になりそうなんだ」


「え?わざわざオリジナルを作られたのですか?」


「いや、えーと、うちの親が乗り気でな。初めてのドレスを贈る話でアクセサリーは自分達に任せろと」


 なんで?仮の婚約よね?


「期間限定とは話しておりませんの?」


「いやぁ。喜んでいて、言い出せなかった。ごめん」


 ごめんじゃないでしょう。言い出せない気持ちもわかりますが。


「もうすぐうちの親も帰ってきます。夜会も参加できると聞いてますわ。挨拶はその後ね。販売前の販路は夜会の後に全て判明する予定です」


「わかった、では当日に」

「ええ」


 お互いに仕事の報告のように頷き合いました。


「あ、とそれと、今日はよろしくおねがいします。」


 このあとはダンスの通し稽古です。私の婚約事件で隣町の貴族に嫁いだ私の姉が押しかけてきて「注目されているのだからちゃんと練習くらいしておきなさい」と無用の気遣いをちょうだいしたからです。


 思い出しても理不尽ですわ。



「最近踊ったのはいつ?」

「…」

 覚えておりません。えーっとデビュタント以降2回くらい?

「…はぁ。結婚したい上位に入る男の婚約よ。すでに騒がれているわ。品定めしようと今度の夜会は荒れるかもしれないわ。粗探しももちろんあるわね」

「脅さないでよ、姉様」

「脅し?事実よ。今まで誰にも靡かなかったのに、急にこの事件なのよ。みんな興味津々よ。あなたは見た目は整えたらそんなに悪くないはずなんだから、そこはなんとかなったとして、後はダンスよ。情けない姿を見せてみなさいよ。私でもチャレンジできるというお嬢さんがセカンドダンスを待ち望んでいるわ。いい?婚約したばかりなんだから、セカンドまで踊ってもいいのよ」


 姉は解消前提の婚約であることを知りませんので当たり前のようにセカンドも踊ると考えているのでしょう。ちなみに姉上の旦那様は高身長のワイルド系です。整った顔立ちなので、婚約してからも誑かそうとする美女もいたのかもしれません。


 姉権限をどれだけ使ったのかわかりませんが、私がクラフト様に会う予定があるとわかった時にはダンスの通し練習ができるように手配がされておりましたのよ。


 ”氷鉄の”と言われるようになってからは体よく断っていたそうで、最近はあまり踊っていなかったそうです。セカンドダンスのお誘いを断られるのが分かっていても、その冷たさを感じたい令嬢がチャレンジすると聞いておりますもの。そりゃ結婚したい男の上位者であれば、次から次でしょう。


 ということで、ステップの確認は私中心でした。もし困ったら私に合わせてねと流し目で言われました。残念ですが事実です。



 打ち合わせもなんとか終わり、夜会当日、今日も眼鏡は無しです。アクセサリーは彼の瞳のアイスブルーより少し濃い青でしょうか。婚約感がでますね。解消しますのに。


 ー目立つ、目立つ、目立つ。クラフト様はいつもこの視線を感じながら歩いているのでしょうか。見物客が多すぎてホールに着くまでが遠く感じました。


「ファーストダンス、いきましょう」


 今回のお誘いはシンプルです。私は久しぶりの見られるダンスに緊張を隠せません。汗ばんだ手を知られたくなくて恐る恐る重ねます。


「ふふっ。私も緊張してますよ。大丈夫」


 そこで笑うの!?いや、私の動きが緊張でおかしくなってる自覚はあるけどさ。一応、“氷鉄の”が付くほどのクールなイメージなのよ!?注目されている中で今の笑顔はないわー。


 ざわつく周囲、私へ向けた微笑みの流れ弾があたった模様のご令嬢は叫びふらつき、隣の男性にもたれかかる様子。

 男性も満更ではない様子、なるほど。ああやって恋が始まるのもいいわね。


 ―現実逃避したところで曲が始まります。


 ステップを間違えないように集中していると、


「いた!」

 いえ、踏んでません!クラフト様は私の後ろを見て呟きました。


「まだ踏んでないわ」


 くるくる回り、こちらは見る余裕なんてありません。


()()ね。はは。君の両親を見つけた」

 なるほど。間に合ったようですわね。旅先から直接来ると話しておりましたもの。手を握る力が少し強く感じましたので、


「緊張してますの?」

 と聞いてみましたら、

「もちろん」

 と即答されました。緊張している割にステップには乱れがないですわね。無難に踊りきりまして、セカンドダンスのスタート前に逃さないぞの件の連行スタイルで両親の元へ向かいます。


 ええ、注目の的よね。セカンドダンスを“われこそは”というお嬢さん方が集まっております。ほら、モニカも見てます。完全取材モードね。そんなにキラキラした目で見ないでくださいまし。


「ミツルバーグ補佐官様、次はわたくしと」

「すまない。今夜はこのまま彼女と先約があるんだ」


 声をかけた令嬢に流し目で断りをいれました。慣れていらっしゃいますね。速度緩めずに両親のもとへ向かいます。


「お初に「お父様、お母様、お久しぶりでごさいます。ここではなんですから会談室へ参りましょう」」


 クラフト様の声掛けを振り切り強引に案内していきます。緊張してたのね。この状況が見えないなんて。


「…すまない。また話題になるところだった」


 そうね。クールな次期宰相とも誉れ高い補佐官様はどうやらこの婚約に関してはスタートからくしゃくしゃの丸めた紙のようですわね。書いてみて途中で止められなくて全部くしゃくしゃにしちゃう。昨日書いて丸めた紙を思い出しながらダンスホールから退出してクラフト様についていきます。あそこでお初にお目にかかります、なんて言ったらどんな噂がたつのかしら。想像するだけでおそろしいわ。

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[気になる点] このあとはダンスの通し稽古です。私の婚約事件で隣町の貴族に嫁いだ私が押しかけてきて「注目されているだからちゃんと練習くらいしておきなさい」と無用の気遣いをちょうだいしたからです。 嫁…
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