表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

第7話 禁じられた舞 The forbidden perform.

「江戸時代初期、阿波地方の領主・十河存保(そごうまさやす)は、自身の藩の存続に江戸幕府が脅威になると考え、遥か昔縄文の海人(うみんちゅ)の時代から伝承されてきた武術を民の踊りに仕込んだ。」


「…しかしそれが四代将軍徳川綱吉の耳に入り、明暦2年(1656)、盆の3日間以外の踊りは一切禁止され、さらに徳島藩士に祭中の謹慎令を出し、武術としての踊りはここで息途絶えたかに見えた。…しかしその中の秘技は脈々と生き続けていたのだ…。」

 ー木戸(標準語変換済)は話した。


 しかしあまりに信じ難い話だったので

吾郎は言った。

 「でも私は誰からもそんな話聞かされませんでしたよ?私の父なんて阿波踊り実行委員長を随分長い間務めていたんですけど?」


木戸は吾郎の眼を見ながら溜息を付いて言った。

「おまはん、ゴロさんは19才で上京したじゃろ? …トクシマの人間はな、今でも地元で成人式を迎えた者にだけにこの事実を話すんじゃ。それが親の大事な役目でな。

 …軽率に地元から離れる様な薄情もんに大切な土地の秘密ばバラすとでも思っちゅうかじゃ。」


「クゥッ、」

吾郎は納得しながらも、唇を噛んだ。


 ー幼い頃から毎年毎年、たった3日間の夏の祭りの為だけに1年間、親にほぼ毎日ひたすら踊りを教え込まれた記憶が蘇った。


…“もっとヒザを曲げェ! コラ! いつも嬉しそうに笑顔作っとけ”


自分もこんな親になるのかと、高校在学中にずっとアルバイトして貯めた数十万を片手に卒業式のその日に、吾郎は四国から出た。



吾郎は力無く言った。

「もっと詳しく教えて下さいませんか?…木戸さん。」


木戸はそうか!と両膝を両手で叩いて言った。


「では!」


「おまはんら(君達)、カポイエラっち武術は

知っとるかのう?」


 吾郎は佐藤と目を合わせた後、言った。

 「しっちょります。いや知っています。

ブラジル人が体制に反抗する為にダンスの中に戦闘術を仕込んだって言うあれですね。」


 木戸は話した。

 「おう。それは知っちょうな? しかしありゃ動きも大きく、バレバレもええ代物じゃ。しかし徳島の踊りは動きも掛け声も面白うて、それよりももっとずーっと前からあったきに(あったのに)ずーっとバレんかった。

 …だが、情けない事に、太平洋戦争後に上陸してきたアメリカのマッカーサーちゅう将軍にバレてしもうた。」


吾郎と佐藤は固唾を飲み込んだ。

「それで…どうなったんですか?」


木戸は言った。

 「…奴は、屈強な何名かの兵士と踊り子を闘わせたんじゃが、ことごとく兵士は負かされて…その様子を見てこう言うた。


『いくら襲いかかっても、まるで泡が湧き出るかの如き美技と幻影にやがて集中力が削がれ、気付いたら倒されている。

 これはまるで


“The Dance with Bubbles(泡踊り)”


だ』と。」


木戸は続けた。

 「その後、おクニで“阿波おどり”と当て字で呼ぶ事になった。

 それまではただ単に、


”盆踊り“ とか

”騒踊り(ぞめきおどり)“ とか

”組踊り(くみおどり)“ だとか


好きに呼んじょった。」



…驚くには充分な内容だったが

 この後木戸の口から伝えられた内容が吾郎を少しずつ変えていく事になる。


 「んでマッカーサーがの、日本人が未だに知らん武術…ちゅう事で今後は永年、米軍エリートにも舞を伝授する事で踊りの廃止はしなんかった。

 …しかしゴロはん、あんたワシが観た舞の中でもピカイチじゃ。


 いずれぁCIAの頂点とひと踊りせんといかん運命やろな。」



「なんせここ50年米軍に阿波おどりを教えとったんは

…あんたの親父やきに。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(通信終了まで5秒)

…吾郎をどこにでもいる高齢者と紹介した事は謝罪する。

ただ彼も一発の銃弾で死ぬ君達と同じ普通の人間だ。

だから君達には彼の話を聞いてほしい。


それは未来を変える力になるのだから。


2136年8月17日


東京都千代田区日本武道館跡にて


著者



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ