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第12話 頂上にて。  On The Summit.

「みんな!声張ンぞー! ソーレ!!」


(兵士達) エライヤッチャ

エライヤッチャヨイヨイヨイヨイ

 踊る阿呆ゥに観る阿呆ゥ。

 エライヤッチャ

エライヤッチャヨイヨイヨイヨイ

 ソレッ!同じ阿呆ゥ…♪



サナダ)「…では決着を付けましょう!」


    

---------------------------

 佐藤) 「…男踊りが?」


 木戸) 「あぁ。全てのモンには2面性が備わっちょる…『光と影』、『男と女』とか『火と水』まぁそんなもんじゃ…んで女踊りは受けとか引き専門の守りの武術で、男踊りは荒々しく我の強い攻撃…」


 佐藤) 「んであのゴロちゃんが、受けよりも攻撃の踊りの方が得意だって? てやんでい!!」


 木戸) 「ほんまじゃき(汗)。

  しかしなんで今まで出さんかったんかのう。」


 佐藤) 「なんで…理由が?」


 木戸) 「笑) ゴロはんの事じゃ。たぶんあれじゃ、サナダの為…女踊りであれじゃきぃに…恐らく。」


 佐藤) 「恐らく…?」


 木戸) 「…強すぎるんじゃ。ゴロはんの男踊りは。」


(兵士達)

 ♪踊る阿呆ゥに…エライヤッチャ…♪


 闘技場は兵士達のお囃子のうねりで一丸となり興奮はピークに達した。


 木戸) 「…始まるのぉ。」


※ 再   開  ※


 マエダ) 両足をガニ股に腰を大きく落とし、まだ使える右腕を突き出した。ーその先のサナダを見据えて。


 サナダ) 「…行くぞ!」

  急速に間合いを詰め、鋼鉄ナックルを活かした鋭いワン・ツー(パンチ連打)を浴びせる。


 マエダ) 低い姿勢のまま左足から右足、前後を入れ替えながらパンチを俊敏にかわす。


 サナダ) 体重を乗せた重い右ストレートを放つ。


 佐藤) 「ヒィィ!」


 マエダ) サナダの右ストレートを、

同じく右の裏拳にて、軌道をずらす。


 木戸) 「上手いのぉ!!」


 (兵士達)

  「ウオーー!!!」

 ♪エライヤッチャエライヤッチャヨイヨイヨイ…


 サナダ) また同じ右ストレート。今度もまた裏拳でパンチを左に流される…が、今回のそれはサナダのブラフで、その流れの軌道に乗った速い回し蹴り。


 マエダ) しゃがんだ姿勢で左足を伸ばしスピードの掛かったサナダの蹴りを足裏で止める。


 サナダ) 「…グッ!!」


 木戸) 「甘いのぉ!ゴロはん(苦笑)。踵で受けてサナダの脚潰せたのに。」


 佐藤) 「そうなの!? そんな余裕無いと思ってた…。」



 サナダ) (クソッ!!!)

 (でも私は負けない!

 …じゃあ観せてあげましょう!!)

  マエダの方を向きながら後ろに丁度5歩下がる。


 木戸) 「何じゃぁ…?

 おい!ゴロはん気ィ付けなもし!!」


 サナダ) そこからマエダに向かって全力疾走、約1m手前で大きく宙高くジャンプして高速飛び回し蹴り。

 

 マエダ) サナダの蹴りに気付き、方向を合わせて旋回するも、サナダのキックの圧倒的なスピードにそのまま背中を強打し、地面になぎ倒される。

 「ふがああ!!」



 (兵士達) ザワ…(冷)。

 

 「なに…今の?」

 「なんか飛んで…回し蹴り…?」

 「た、滞空時間よ…。」

 「…あんなの観たことない。」

 「マエダにがっつり入ったな。」

 

 「…あれは一体…?」



 木戸)「…『ダブル・アクセル・パウルゼン』じゃ!!」


 (兵士達) 「ダブル…アクセル?」

 「あ! フィギュアスケートか!!」

 「いや!これ格闘技だぞ!」

 「ダブ…2回転半かよ?蹴りで?」

 「ヤベー!!」

 「でもなんかくるくる回ってたよな!?」

 「…アイツ一体?今…作ったのか!?」


 佐藤) 「…『サナダカイシュウ:ロシア生まれ北海道育ち』ってなんかで読んだ。」


 (兵士達)

「じゃあスケートの動きはお手のもの…。」

「だからってそんなすぐ…組み合わせれるものなのか…?」

「…とんでもない天才だな。」


サナダとマエダ、2人はもう常人では到底理解できないレベルで闘っていた。



サナダ) 「…さぁ起きて下さい。アナタまだ立てるんでしょう!?」

 

 サナダは蹴りの方向にマエダが上体を回転させた事に気付いていた。


 マエダ) 「いやぁ(苦笑)、こりゃ…うわいた

たた。」

 

 サナダ) 「あー。…これはもう逃げられませんね。…ではこれで最後です。」

 

 サナダが先程と同じ位置まで下がった。


 (兵士達) … (汗)。

 「ヤ、ヤベー。」

 「気、気を付けろマエダー!!」

 「みんな、が、合唱ー!!」

 エライヤッチャエライヤッチャ

 ♪踊る阿呆ゥに観る阿呆ゥ。

 同じ阿呆ゥなら踊らにゃ損損!

 踊る阿呆ゥ…(repeat.)


※ ※ ※ ※ ※


 サナダ) 一直線に駆け出す。


 マエダ) 静かにガニ股で低い左構え。


 サナダ) ターゲットを捉え1m手前で跳躍。


 マエダ) 低い位置から同時にジャンプ。


 ー両者・空中接触 ー


 (目視/不可)

 




 ーそして先に墜落したのはサナダだった。


 サナダ) 「ぐはあ!(吐血)」


 マエダ) 片足で着地後、よろよろと斜めにリング端までふらつき…最後はしっかりと両足で踏ん張った。


 (木戸・佐藤・兵士達)

 「ウオーーーーー!!!」


 (兵士達)

 「サナダがはじかれた!」

 「地面にな!」

 「マエダ!マエダ!」

 「踊りの神!!」

 

 「(汗)……で、

  何があったんだ?木戸??」


 (木戸) 「 えー(汗)。…サナダはさっきと同じ完璧なダブル・アクセルを出した。しかし今回は、マエダも同時に飛んで、…そして決まったんじゃ。」



 (兵士達) …ゴクリ。




 「『トリプル・アクセル・パウルゼン』がな。」

 

 (兵士達) 「な、何ぃー!?」

 「ト、トリプル(3回転半)!?」


 木戸)「…つまりマエダはサナダと同時に、キックの当たらん方向にアクセル・ジャンプをして、サナダよりも1回多く回って…まぁ蹴ったっちゅうだけの話じゃ。」


 (兵士達) …ゾクッ。

 「だけの話じゃって…マエダ…助走すらしてなかったんだぜ…そこからのトリプルアクセルって…。」

  

木戸) 「おまはんら(笑)。 ゴロはんがええ奴て良かったのォ!」

  

兵士達はシンと静まり返った。



 ーマエダはサナダに近付いていった。


 サナダはダブルアクセル後のノーガード状態 (回転後は足首を捻らずに着地する事で精一杯なのだ) で、回し蹴り3回転半分…つまり通常の3.5倍の破壊力を持つ蹴りを受けたのだ。…無事である筈もない。


 マエダ) 「ねぇ、サ・ナ・ダさん。」


 サナダ) 「…なんだ(早く殺れよ)。」


 マエダ) 「…もうやめましょう。もういいです。私はあなたとは闘いたくありません。」


 サナダ) 「!?バカ…言わないでくれ。これは決闘ですよ?どちらかが戦闘不能になるまで続けるんです…。」


 マエダ) 「じゃぁワタシの負けでいいです。闘う意志が無いので戦闘不能です。これでいいでしょ?」


 サナダ) 「…(怒)何を言ってるんですか!!…貴方明日から軍を除隊になるんですよ!?」


 マエダ) 「ええ(笑)。それでいいです。かあちゃんもわかってくれます。たぶん(苦笑)。でなくても毎日怒られながらなんとか生きていきます(笑)。そんな事より、」


 サナダ) 「…?」


 マエダ) 「…私ね。サナダさん。私、昨日貴方の記事を読んだんですよ。

 …あなたは何十年もずっとたった1人で父親の事件の犯人を探しているって。

 …私なんて父が大嫌いで19歳で家を飛び出してから帰省はおろか、殆ど連絡も取ってないっていうのに…。

 貴方は私なんかよりもずっと義理とか情愛を大切にしていて、ただ器用じゃなくて…ええと、


 つまりあなたは、『良い人』なんです。


 …で、あなたの親への想いを見習って試合前に勇気を出して父に連絡してみたんです。

 …ああ父の声は何十年振りだったか…。貴方のお陰です。…今父は米軍と繋がりがあるそうで、除隊後は彼らのネットワークを使って貴方の仇を調べる様、父にお願いしてみます。サナダさん。貴方さえ良ければですが。


 …今日はついカッとなって『可哀想』だなんて言ってしまってごめんなさい。 

 生きている身内を許せなかった私の方が余程、…自分で言うのも何ですが、『可哀想』でした。

 それを今日は言いたかった。



 ーありがとう。 サナダさん。」





 サナダ) 「ジャッジ(判定員)ー!! 決闘が終わったぞ!」



 近付く判定員。





 サナダ) 「…私が負けました。」



(通信終了)

 



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