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東狩獲城  〜『斐界群史』詳伝  作者: 適当館 剛
第七章  剣髯狩坦
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第八話

 謫徒は愕然としている。


「そんな。なんだこれは。」

 長袍は破り裂かれ、髪も乱れに乱れて、謫徒を知る人が見たら、彼とは分からないだろう。世捨人の如く変わり果てた身を引きずるようにして、ようやく城主府に辿り着いた。

 そしてその凄まじい略奪の風景を目の当たりにした。

「我々が準備していた宴はどうなったのだ!ま、まさか踏み躙ったのか!」

 謫徒は中講堂まで立ち入っている。心血注いで準備した山海の珍味がぶちまけられ、料理人から兵士から屍が転がり、まさに地獄絵図と化し、堂内の床面のそこかしこに血の海が広がっていた。

「奴らは歓迎を準備していた家人達を惨殺したのか!壘家の聖地をこれほどに荒らしたのか!引き込んだ我々を裏切ったのか!」

「うるせえ!」

 地獄の番人よろしく抜き身をぶら下げて堂内を闊歩(かっぽ)していた賊兵達が、謫徒に寄ってきた。

「壘家の奴がまだいたのか。」

「殺せ殺せ!」

「黙れいっ」

 取り囲む野盗達に対し、謫徒は一喝する。さすが名族壘家を切り盛りした閣僚、みすぼらしい身なりになっても、彼の威厳は低俗な賊兵に対して良く効いた。皆、目を見開いて動きを止めた。

「姓は謫、名は徒、壘家の参謀だ!塊協半に取り次げ。謫徒が来たと取り次げい!」

 歯が折れ血塗られた口を開き、真っ赤な飛沫を吐き散らして、謫徒は叫んだ。


――――――――――――――――――――


 5時。夜が明け始めた。


 揆朋楓の眼に、色々なものが見え始める。


 庭園に面した大回廊には、宴席に運ばれることなく飛び散った料理と、壘渋邸の者達の夥しい血肉が入り混じって、ぶちまけられている。


 庭園には薄灰の奇岩たちが、少しづつ暁光に照らされ始める。


 懸厘が弾むように歩み寄って報告する。

「東棟の将兵も全部縛り上げたよ。これで全部じゃないかな?」

 壘渋邸を完全に制圧したということである。これで、巨城坦陸は野盗達の手に落ちた。


「出ておいでー」


 …


 壘魍は逃したようだが。


 揆朋楓は、堙撞殃の声にか、こたびの壮挙にか、とにかく面白そうにその大きな口で笑いながら、庭園の上に顔を見せ始めた太陽を仰ぎ見る。腰に下げた橙の鞭が、朝日を浴びてひときわ鮮やかである。殺戮の現場なのに、長躯黒髪の女戦士は、ひどく美しかった。

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