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step3.アプローチ(1)

 パートの女性スタッフが交代で昼休憩に入る時間になったこともあり、由基よしきはデスクワークに一区切りつけて身づくろいを整え事務室を出た。


「代わるよ。昼休憩行ってきて」

 製造室に入り製造スタッフの琴美に声をかけると、彼女は絞り袋を持ったまま由基の方を見て頷いた。

「プリンアラモードはこれで六個です」

「了解」

 ワークトップの下にぶら下げてある製造チェックシートを手に取って記入しながら由基はさっと今日の状況を把握する。


「ジュレ系をもっと出した方がいいかな」

「でももう、在庫がないんです」

「失敗したな」

「仕方ないですよ。急に暑くなっちゃいましたから」

「途中のものは?」

「タルト台はチルドで解凍済みで、フルーツもカットしてあります。CTWコーティングゼリーは今暖めてるとこなので」

 琴美は右手横の作業台の卓上IHコンロの上の計量カップを示す。

「了解。じゃああとは俺がやるよ」

「お願いします」


 仕上がったプリンアラモードをトレーに載せて売り場に向かった琴美は、すぐに戻ってきてディスポ手袋をはずしながら由基に話しかけた。

「わたしコンビニに行きますけど、店長の分もお昼買ってきましょうか?」

「あ、頼める? 適当でいいから」

 琴美はときおりこうして気を利かせてくれる。適当に、と頼んでも由基の好みでないチョイスだったことはないからとてもありがたい。尻ポケットから小銭入れを出して由基は彼女に折りたたんだ千円札を渡した。

「ことちゃんも、ここからコーヒーでも買って」

「ありがとうございます」


 琴美はぺこりと頭を下げる。そうは言っても、彼女はいつも控えめな値段の飲み物を選んでレシートとおつりをきっちり由基に返してくれるのだ。本当に良い子だ。ユニフォームの帽子とマスクの間の目元も、最近知り合った女子高生の盛り盛りメイクとは違う、すっきりと眉毛を整えてあるだけで清潔感がある。


 琴美は駅の向こう側にキャンパスがある私立大学の二年生だ。去年、大学入学と同時にアルバイト募集の面接に来て、以来フルタイムというわけではないが良い働きをしてくれている。出身高校も市内では評判のいい名門女子高で、彼女がバイトの面接に来たとき、履歴書を見ただけで由基は採用を決めた。ここだけの話だが。


「どうして製菓の仕事がやりたいの? ケーキが好き?」

「そういうわけでもないんです。ただ、おもしろそうだなあって。調理学校の生徒とかじゃないとダメですか?」

 そんなことはなかったから由基は胸の中で両腕で丸を作っていた。由基の質問はひっかけのようなもので、むしろ製菓にこだわりのない人材が欲しかったのである。

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