ガールズトーク(3)
「どうしてアコちゃんと三咲さんが」
「だよねえ。不思議だよねえ。ふふふ」
「ごめんね、ことちん。アコ、ことちんを利用してました」
「え……」
「アコ、ヨッシーのことが好きで、でも相手にしてもらえないから。ことちんと仲良くなれば話が聞けるし、ヨッシーの好みがわかるかなって。だからことちんと友だちになりました」
「…………話が見えないんだけど」
「だよねえ。すごいよねえアコちゃんの行動力。あのね、ことちゃん。アコちゃんは長谷川店長に危ないところを助けられたことがあって、それで知り合って恋しちゃったんだって。ひゃっひゃっひゃ。ヨッシーって長谷川由基ね。ぶぶっ」
「…………」
「三咲さん酔っぱらってる。もうお代わり禁止」
「あらあ。そんなことないない。いたってシラフ。そんでね、積極的なアコちゃんは店長にぐいぐい迫るも振られちゃって、そんでちょとヤケになっちゃったんだよね? あ、ことちゃんお腹空いてるよね。ピザもう一枚頼むね。今度はチーズ二倍にしちゃおう」
「…………」
「ことちん、ごめんなさい。でも、ことちんに憧れてるのは本当です。ことちんみたいに優しくてキレイできちんとしてて、だからきっとヨッシーはお嫁さんにしたいって思うんだろうなって」
「そんなの。わたしだって振られたのに」
「え」
「なになに、ことちゃん。どうしちゃったの」
「わたし、告白したんです。店長に」
「ええっ」
「でも、全然、まるで、相手にしてもらえなくて」
「あのバカ」
「笑って流そうとするの、許せなくて、馬鹿にしないでくださいって言っちゃいました」
「ま!」
「ことちん、カッコいい……」
「恥ずかしいよ、今思うと。でも、ものすごく腹が立って」
「そりゃそうだよ。そりゃあいつが悪い」
「ヨッシーはなんて?」
「さあ。わたし、言い捨てで逃げちゃったから。でも、あきれられたのは間違いないと思う」
「うーん。そっかなあ、そうかなあ?」
「ヨッシーはそれくらいでことちんを嫌いにならないと思う」
「……アコちゃんはわたしが店長に好かれてるみたいな前提で言ってるけど、そんなことないから」
「またまたー、よく言うわあ。憎からず思われてる自信があるから告ったんじゃないのお? ことちゃん」
「それは……」
「わお。ピザきたー。チーズがのびるうちに食べよう。ことちゃんもワイン飲む? 飲んじゃう?」
「いえ。わたしはドリンクバーで」
「ことちん声が暗い。ショックだったんだね」
「ショックだよ。店長の態度も。アコちゃんにそんな裏があったことも」
「ごめんね。はい、アコの顔ぶっていいよ」
「もうっ。いいよ、アコちゃんのことぶてるわけないでしょ」
「ことちん……」
「あー、かわいいねえ。男を間に挟んでの女子の友情。若いっていいよねえ、ドロドロしなくて。(ちょっとアコちゃん、他人事みたいな顔するんじゃねえって目で見るのやめて)」
「(このヒト自分は関係ないってフリしてるけどどうなんだろ)……ことちんはさ、いつからヨッシーが好きなの?」
「え、いつからって……いつだろう? ええと……」
「だいたいさ、こんな可愛いコふたりがあんな枯れたおっさんを好きだなんておかしいとおねえさんは疑問に思うわけよ」
「枯れてないもんっ」
「そんなことないです。店長はステキです! 特に腕まくりしたときに見える太い血管なんて……」
「は? 血管?」
「ことちん、血管フェチなんだー」
「や。けっ血管っていうか……こう、全体的に、大きな手とか、生クリームを絞るときに力を入れると手首のとこボコっとなるのがカッコいいなーと思うし、店長って照れると頭の後ろに手を回すじゃないですか、大きな手と首筋が相まって、い、色っぽいなあ、とか、か、かわいさとのギャップがまた」
「だからそれ血管フェチだって」
「しかも血管浮いてれば誰でもいいってことじゃ……」
「そんなことないです! 店長だからステキなんですっ」
「そんな涙目で主張されても」
「ことちん、マニアックだねー」
「ちが……」
「アコ少しわかるよ。ヨッシーと初めて会った夜、立ち上がるのに手を引っ張ってもらって、大きな手がカッコいいって思ったもん」
「でしょ、でしょー」
「さっぱりわからんわ」
「じゃあ三咲さんはヨッシーのどこがいいのぉ?」
「淡白そうに見えて意外と男っぽいとことか」
「え」
「え?」
「ずるいぃ。それで枯れてるとか言うんだ、ふうん」
「やだー、違うし。がつがつしてないところがいいなあとは思ったよ?」
「開き直った!」
「ええ?」
「ことちゃん違うよ? なんもないから、なんも」
「もう何も信じられません……」
「オトナってやだね、ことちん」
「あ、ペペロンチーノ食べようかな、ふたりもパスタ選びなよ」
「アコはねえ、ヨッシーの全部が好き」
「(でた、恋愛脳)」
「もう忘れたけど、アコの元カレを追い払ってくれたのもカッコ良かったし」
「屁理屈こねくり回すのは得意だからね」
「迷惑そうにしながらなんだかんだアコの相手してくれちゃうとことか」
「優柔不断なだけだよね」
「アコにもわかるように一生懸命話してくれるし」
「上から目線で言い切らないところは偉いけど自己評価が低いだけだからねー」
「わたしも店長に仕事を教えてもらって、わたしがコツを掴めずにいるとき、店長は休み時間にもどうすれば良くなるだろうって自分が試しにやり方を変えて作業してくれてたことがあって。その姿を見て感動したんです。この人のために頑張らないとって」
「へーえ」
「そうなの、ヨッシーってエラそうじゃないの。すごく優しいの。それにお仕事してるときすごく一生懸命だし。パティシエさんの格好カッコいいよねえ」
「そうなの! コックコートがお似合いで。でもでも、店長服のベストの上にエプロンしてるのもかわいいって思うし、洗い物するとき腕まくりされるともう……」
「まあ。別の角度から見れば短所は長所だろうし、長所は短所だろうしねー」
「もうっ。三咲さんのひねくれ者」
「ペペロンチーノ美味し~」
「あ。ことちん、アコ明太子クリーム少し食べたい」
「いいよ。交換しよ」
「でさ。ふたりともどうするの。ぶっちゃけてすっきりしたところで」
「ん?」
「あきらめる?」
「なわけないよ。アコはぜったいぜったいヨッシーを振り向かせるんだから!」
「わたしだって。これくらいであきらめるなら何年も片思いしてません」
「ライバルがいた方が恋は盛り上がるもんねー」
「三咲さんはどうなのぉ?」
「ないない。私はない。今は仕事と子育てで精一杯」
「とかなんとか言ってー」
「いいよ。誓約書書こうか?」
「オトナってすぐそういうこと言うー」
「あの、やっぱり。ワイン飲んじゃおうかな……」




