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Aさんの受難

今回は少し長くなってしまいました。2000字ほどです。

 おひさしぶりです、ふっしーです。

 大雨でたいへんなところもございますが皆さんは大丈夫でしょうか?


 今回も仕事で出会った面白い人のお話です。

 今の仕事に就く前、僕はド〇タをしていました。土木作業員です。雨が降ったら休み、休みたいときは無断欠勤でオッケー、という甘露な言葉につられて働いてみることにしました。

 従業員が10人にも満たないような小さな会社でしたが、実際に年に二、三回、一ヵ月超の長期無断欠勤をする人が2名ほどおられました。

 

 夜寝るとき襲撃に備えて枕元に鉈を常備しておく、という侍みたいな人もいました。建設、土木業なのに地上1メートルの足場の上でブルブルと脚を震わせている人もいました。

 

 とにかく奇人変人が多い職種でございます。そんな中で今回お話しするAさんはわりと常識人で60歳手前くらいの方でした。一番年下の僕を「あんにゃん、あんにゃん」と呼んで目をかけてくれました。(あんにゃんとはあんちゃん、にいちゃんの方言です)

 Aさんは身長が低く僕の肩くらいまでしかありません。角刈りにサングラスといういで立ちで、渡哲也さんを上からプレス機にかけたような見た目です。


 ある雨の日にAさんだけが出社したのですが、天候と1人だけということでその日はお休みということになりました。


「帰ってもやることないし〇〇山でも行ってみるわ」


 と言ってその日は会社をあとにしたそうです。


 その翌朝、会社から電話がかかってきました。雨の上がった日曜日です。


「きのうからAさんが家に帰ってないんじゃ。山に入るって言よったきん、ちょっと捜索に出てくれんか?」


 僕は少し嫌な予感がしました。秋の山中、おまけに雨まで降っていました。夜はそうとう冷え込んだはずです。

 Aさんは携帯を持っていないうえに、かなりのドジっ子です。4トンダンプを20メートル下の谷底に落としだり、軽トラを壁にぶつけた原因が「車の前を幽霊が横切った」だったり……そういえば屁をここうと気張ったところ実が出てしまい、パンツを換えに家に帰ったこともありました。

(時間をかけて思い出したらもっといろいろなことが出てくることでしょう)


 電話をもらって僕はすぐにリュックにお茶とおやつを詰め込み家を出ました。〇〇山は標高1200メートルをこえるので、僕も多少登山気分です。

 会社に着くと近くの人はすでに集まっていました。みんな手ぶらです。リーダー格の人が、


「おー〇〇(僕の名前)、お前なかなか目端が利くのう。Aさんも腹すかしとるわの」

「え、ええ……」


 自分用だとは言えません。

 捜索隊に選抜された5名が集まると車で行けるところまで登っていきました。すると終点でAさんの車を発見しました。これはいよいよヤバいかも。

 僕たちはAさんの名前を呼びながら山頂を目指しました。3時間ほどかけて山頂に到着しましたが、発見はおろかAさんの形跡も見あたりません。


「これは本格的な捜索隊がいるかもしれんの。いったん帰るか」


 登山気分だったリーダーの顔が険しくなります。

 僕らが帰っているとリーダーの電話が鳴りました。社長からでした。僕の喉がゴクリと音をたてます。


「Aさん無事に帰ってきたらしいぞ。もうもんてこいや(もう帰ってこい)」


 電話からもれてきた言葉に、僕の肩からどっと力が抜けました。


 後日、Aさんの談によると道に迷ってしまったそうです。大木の下で雨をしのいで朝を迎え、翌朝運よく山の反対側にたどり着いて、観光列車に乗せてもらって帰ることができたそうです。財布を車に置いてきたのでタダで乗せてもらえたとよろこんでおりました。


 お話を締めようと思いましたが、もうひとつAさんの災難話を思い出したので記しておきます。


 真冬の山間部の現場でした。陰には雪が残っています。

 寒風吹きすさぶ谷川の上、狭い足場の上で資材を運ぶことになりました。横一列に並んで手渡しの方が早いということで僕の隣にAさんが並びました。

 ワイワイ言いながら順調に資材が運ばれて行きます。

 金具が7割ほど入ったオレンジのコンテナが流れてきました。僕は怪力無双だったので片手で受け取り、そのままAさんに手渡します。

 Aさんはなにげに受け取ったのですが、予想だにしなかった重力に負け「おわっ!」と声を残してコンテナとともに谷川に落下していきました。真冬の冷水にドボンです。真下からバシャバシャと水音をたてながら声にならない悲鳴をあげています。


 幸い落ちたのが2メートルほどの高さと、水深も浅くも深くもなかったのでケガはありませんでした。それにうちの会社では、現場到着後真っ先にするのが焚火だったので火の気もあります。軽油をぶっかけると炎は簡単に燃えあがりました。


「あんにゃんが軽げえに持つきんつられたわ」


 震えながら焚火の前でこぼしていました。常から心臓が悪いと言っていましたが、止まらなくてよかったです。


 

ブクマ、ご評価、ご感想ありがとうございます。

次回も未定ですがよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ビミョ~にツッコミにくいですね。(笑) [一言] というか、何回か死んでいてもおかしくないコレを「ドジっ子」で片付けて良いのだろうか。(笑)
感想一覧
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