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上には上がいるが、下にも下がいる

 

 いやぁ、六月に入ってホント熱くなってきましたね。暑いのも寒いのも苦手なふっしーです。

 今回は仕事で出会ったオモロイ人のお話です。この話のために前回は高校時代のエピソードを思い出して書いたのです。


 前回のおさらいをすこし。

 僕が卒業した高校は県内屈指の底辺校です。

 偏差値も30くらいだったでしょうか、入試も5教科で100点もあれば入学でき、120点で確実といわれていました。面接に改造制服で臨む連中もいましたし、僕もそのうちの一人でした。


 そんな学校ですが定員がありますので当然不合格になる子もいます。その子たちはどうするかというと、県を越えた私立高校に拾われます。

 今回の主人公は、名前さえ書ければ入れてもらえる、といわれる、その私立高校を卒業した方です。

 都会の方は私立といえば名門のイメージが強いかもしれませんが、僕の住んでいた地方では、箸にも棒にも――の連中を高い金で引き受ける、そんなイメージを持つ人が多いです。

(もちろん地方にも名門と呼ばれる素晴らしい私立があることは存じておりますし、都会にも底辺クラスの私立もあることでしょう)


 

 仕事とはいっても、僕はバイトでした。バイトとはいっても学生時代の話ではありません。業種は食品製造業で、大企業ではありませんが全国的に名の知れた会社です。

 彼は数か月前に雇用され、あと少しで試用期間が終わり正社員になれる、と言っていました。同い年でしたが、なにか教わることもあるだろうと僕は彼を先輩として立てていました。

 するとです。おバカ特有とでもいいますか、すぐに増長を始めたのです。先輩風を吹かせるようになり、何事も上から目線です。僕をサゲることで自分をアゲようとするのです。


 ある日、彼が慌てて僕のほうに駆けてきました。


「ちょっとこれ計算してくれや、なんぼやってもできんのじゃ」


 紙と鉛筆を渡してきました。受け取った紙を見ると、A4の日報の裏にびっしりと数字が書き込まれています。

 彼も僕もラインの始点を任されていたのですが、始点は材料を配合して種を作るため、割合や水の調整に計算が必要になります。しかし、異物混入を防ぐため、現場には電卓などは置いてありません。


「はよしてくれや、止まってしまう」


 種がなくなってラインが止まってしまう、と慌てているのです。しかし、紙全体が数字で埋まっているため、どれが元の計算式かわかりません。


「一番最初の式はどこですか?」


 彼は人差し指を日報の上でふらふらと泳がせたのち、一点を差しました。


「あった。これこれ、6÷10」

「……ふぇ?」


 一瞬思考が停止しましたが、ひょっとしたら僕の聞き間違いかもしれません。だけど彼の指先にはちゃんと6÷10がありました。


「ほなきん(だから)これじゃわ、6÷10」


 ツンツンと指で日報を突きます。

 6÷10を筆算で、しかもA4いっぱいに広げられるなんて、逆に才能を感じます。


「……0.6」

「……ああ、やっぱりな。最初のでよかったんじゃ」

 

 いかにも悔しいと言いたげな顔を作っています。

(いやいや、あんた最初の計算の答え60になっとるがな)

 僕から日報をひったくるようにして取り上げると、走って自分のラインへ帰っていきました。もちろん礼の一つもありません。

 さすがは〇〇〇高校、とその背中を見送りました。


 最後に〇〇〇高校の名誉のために書きますが、決して全体のレベルが低いわけではありません。勉強やスポーツを頑張っている子もたくさんいます。一部の生徒が酷かっただけです。それにこれは少し昔の話なので、この私立高校も母校も現状はわかりません。

 

 ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 6÷10から60に至るまでの道のり。 おそらく異世界に迷い込んでいたのだろう。 それともタイムリープしていたのか。 ものすごい冒険譚を語ってくれるに違いない。 [一言] アナログ時計…
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