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鴉の黙示録  作者: 雨宮妃里
第5章 横浜制圧計画
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毒をもって毒を制す

「失礼いたします。お料理をお持ちしました!」


 村雨と、本庄。2人の極道が醸し出していた冷たくも厳かな空気感は、部屋のふすまを開けた仲居の女性の声によって急に中断される。彼女は顔に張りついたような愛想笑いを浮かべつつ、ゆっくりと“おしながき”を読み上げた。


「馬橋の特選海鮮御膳です。ズワイガニの唐揚げ、タコときゅうりの酢の物、にしんの照り焼き、そして汁物にはホタテとウニの潮汁を用意してございます」


 事前に暗記した台詞を唱えるがごとく粛々と献立の紹介を行った仲居は、言い終わるや否やすぐさま品々を運び始める。たぶん、俺たちがヤクザの関係者であることは何となく感づいていたのだろう。部屋に長く居てはなるまいと言わんばかりに、てきぱきと配膳を進めてあっという間に完了し、軽く会釈をしてそそくさと出て行ってしまった。


「……油で揚げた蟹か。ずいぶんと変わった献立だな」


「せやろ? ここの料理長はええ意味で、ふざけるのが好きらしゅうてのぅ。基本は和洋折衷。時にはカレー、エビチリなんかがメニューに加わることもあんねんで。ほんまは日本料理店なんやけどな」


「懐かしい。子供の頃に、よく食べたものだ」


「ん? よく食べたって、蟹をか?」


 綺麗に盛り付けられた唐揚げをジッと見つめながら、村雨は言った。


「そうだ。しかし、我が故郷におけるシェン……いや、蟹と言えば専らモクズガニだったがな。紐で縛って姿蒸しにしたり、生姜と一緒に酒で漬けたり。時には、豆腐と絡めて食べることもあったな。とはいえ、油で揚げることは無かった。ズワイガニとやらも、まったく馴染みが無い。もしかすると、初めてやもしれぬ」


「ほなら、あんたはカニ言うたらモクズしか食べたことあらへんってわけか?」


「ああ。実に興味深い」


 普通、日本人が蟹という単語から想起するのは殆どがズワイ、もしくは毛ガニのうちのいずれかだろう。逆に、モクズガニをメインに食べていた人の方が少数派であるはずだ。話を聞いた本庄は、ひどく呆気にとられた顔をしていた。


「こら、たまげたわ。そういうのもおるんやなあ」


 俺とて、全く同じ感想である。だが、当の村雨はと言えば、目を丸くする本庄を尻目に箸を手に取ると膳の中央の皿から唐揚げを1つ掴み、素早く口の中へと運んだ。そして10秒以上の時間をかけてゆっくりと噛みしめた後、静かに呟く。


「うむ。悪くはない。だが……良くもない」


 忖度や配慮の類を一切排除した、実に村雨らしい感想だと思った。


「そうか。なら、本場福井の蟹もあんたの地元の味には勝たれへんかったっちゅうわけやな? まあ、この海鮮フルコースは日本の津々浦々の高級食材を選りすぐったものらしいが、やっぱガキの頃から馴染んだ“おふくろの味”には、どないに高い料理も敵わんのやなぁ」


「勝てるも何も、私はこの国の産物を美味いと思った事は1度も無い。それに私の母は、我が子のために自ら台所に立って包丁を握るような人間ではなかった。それゆえ、私は貴殿の云う“おふくろの味”が如何いかなるものであるかを知らぬ」


「と、とにかく、今日はわしの奢りやさかい。どんどん遠慮せず食うてってや!」


 冗談っぽく放った一言に真顔で返され、本庄は少したじろいでいた。一方、村雨はそれ以上に何か論を返したりも、味の細かな感想を述べたりもせず、ただ黙々と箸を進めてゆく。


「ほら、涼平も食えや! 勘定なんか気にせんと、好きなだけ腹にブチ込んでええで!」


「あ、ああ……」


 気まずい空気感の中、本庄に促された俺も食事を始める。いただきますと軽く手を合わせてから、まず最初にかじったのはズワイガニの唐揚げ。村雨が可もなく不可もなしと断じた料理が、自分の味覚では果たしてどのように感じるのかを確かめたかったのである。


 ――サクッ。


 軽快な咀嚼音の後、香ばしい衣の風味が漂う。そして間髪入れずに舌を伝ったのは、北国の海の幸のほのかな甘みだった。ふっくらとした蟹のを噛みしめる度、その芳醇な食感が口の中いっぱいに広がってゆく。


「うわあ。これ、すっげぇ美味いじゃん!!」


 何も考えず、俺は素直な感想を漏らしてしまった。隣にいた本庄が、すかさず同意を示してくる。


「せやろ? さすがは涼平や。こういうほんまもんの味は出来るだけ、早いうちから知っとくべきや。味覚っちゅうもんは10代の時期に、どれだけええ食い物を味わったかで鍛えられるさかいな」


 本庄の言葉に、俺は大きく頷いて見せる。ところが、直後にその行動を深く後悔した。


(あっ!)


 向かい側の村雨が、鬼のような形相でこちらを凝視していたのである。


(しまった。やらかした!!)


 たった今の本庄の言葉は、村雨にとっては単なる揶揄でしかなかった。どうやら、ひどく不愉快に感じてしまったらしい。同意した側も同罪だろう。しばらく俺を睨みつけてから視線を右隣に移すと、彼は低い声で言った。


「なるほど。大阪人は世辞に長けていると思っていたが……そうではないようだな」


 すると、本庄は何食わぬ顔で弁を述べる。


「すまんのぅ。よう間違えられんねんけど、わしの生まれは大坂じゃのうて神戸なんや。せやから、たこ焼きもお好み焼きもあんまり作られへんし、おべっかも苦手や。まあ、シャレなら得意やけどな。今の中川の直参の内じゃあ、いちばんオモロいこと言える自信あるわ」


「……ならば、今のは“冗談”として受け取るべきか?」


「ああ。そうしてくれや。さっきのは、あくまでも“例え話”や。どうか、カリカリせんといてぇな。それにあんたの地元の蟹も、考えてみたら美味そうやないけ。せや! 今度、うちの事務所に送ってや。お近づきのしるしに、な?」


「……」


 “冗談”にせよ“例え話”にせよ、相手を不快にさせてしまったらそれまでだろう。言い訳としては確かに筋が通るが、当人を目の前にしての言葉には些か相応しくないように思えてならない。


 しかし、数秒の沈黙の後、村雨は一言で答えた。


「……良かろう」


 機嫌を損ねてしまう可能性を予想していたので、思わず安堵の念がこみ上げてくる。どういう理由わけかは分からないが、村雨はここへ来る前までに抱いていた破滅的な考えを捨てて、本庄と同盟を組んで窮状を打開していく道を選んだのだ。


 その決断に、どうやら変わりはないらしい。俺は心の中で、大きく胸をなで下ろした。


「ほな、気ぃ取り直して。今夜は飲むとするかのぅ!」


 こちらの心配をよそに威勢の良い声を上げた本庄は、料理と一緒に運ばれてきた徳利で村雨の猪口に吟醸酒を注ぎ入れる。ただ、自分が飲むことは無い。「外食の際には酒を口にしない」という彼なりの護身術ルールは、やはりここでも健在のようだ。


 一方、村雨は注がれた酒をすぐさま飲み干す。まるでアルコールによって己を乱すことは恥だと言わんばかりに、飲んでいる間は一切の瞬きをしなかった。度数としては、15パーセントを超えているであろう吟醸を体内に流し込んだにもかかわらずだ。


「なるほど。悪くはないな」


 相当、酒には強い体質なのだろう。一杯を飲み終えた後で発せられた村雨の声は、まったく震えていなかった。常人であれば、即座にほろ酔い気分に浸ってしまうほどの量であるが、飲む前と何ら変わらない。


 酒を飲んでも酔わない確固たる己を持っているか、そもそも酔うこと自体を警戒して飲まないか――。


 これが浅草・馬橋の会食において俺が目の当たりにした、村雨と本庄の最大の違いである。一見すると他愛もない要素に思えなくもないが、両者の性格と傾向が端的にかつ対極的に表れた出来事だったと思う。


 く手を阻む者は全て己の強かな力でなぎ倒す武闘派と、狡猾な策を弄して着実に時間をかけて敵を追い詰める知略派。まさに、正反対。たとえるならば、磁石のNとSのような2人とでもえようか。


 ちなみに俺はと言うと、彼らが談を交える光景をただ黙って見ているだけ。勿論、料理は口にするが酒は飲まない。自分用の猪口も運ばれてきてはいたが、あの空気感で「俺にも注いでくれ」とは到底、頼めなかった。


 村雨と本庄のやり取りに水を差すのが、非常に恐ろしく感じたのだ。つくづく単純で稚拙な理由かもしれないが、いま振り返ってみると実に正しい判断だったと思う。時を巻き戻してあの空間にもう1度身を置くにしても、きっと再び「沈黙」を選んでしまうだろう。


 そんな俺を尻目に、会話はローペースで展開されてゆく。


 内容は主に普段テレビでどのような番組を観るだとか、近頃の政治についてどう思うだとか、世間話が中心だった。口角を上げて饒舌に質問をぶつける本庄に対し、村雨は真顔で淡々と答えていく。


「あんた、こないだの『電脳少年』は観たか? なんや、またヒッチハイクやるらしいのぅ。今度はたしか、ヨーロッパを横断するんやって? つくづく、最近のテレビ局は無茶な企画ばっかりやるわなあ……」


「テレビとはそういうものだ」


「こないだなんか、元総理の阿野はんが出とったやんけ。『髭を切らしてください』なんて頼んどったけど、あれは観とって可哀想になってもうたわ。わし、選挙で労働党に票を入れたことなんか1度もあらへんのやけどな」


「私とて、選挙に行ったことは無い」


 傍から見れば実にぎこちない談義であったが、同盟を組む流れになったとはいえ所詮は一時的な共闘関係に過ぎないのだ。互いに100%気を許しているわけでもないので、話が弾まないのも当然だと思う。


 やがて、本庄はこんなテーマを切り出した。


「しっかし、意外やったわ。さっきまで『娘のために死ぬ!』の一点張りやったあんたが、まさかわしの提案にあっさり応じるとはのぅ。この手のひら返しはほんまに驚いた。もし差し支えがあらへんのやったら、理由を聞いてもええか?」


 すると、村雨から返ってきたのは思いのほか詳細な答えだった。


「毒をもって毒を制する……先ほど、貴殿は私に『渡世の天下を獲れ』と申したな。実に荒唐無稽で馬鹿馬鹿しい話だ」


「フフッ。そんで?」


「だからこそ、乗ってやる価値が生まれたというものだ。そもそも私は長生きをするつもりはない。無謀な夢に挑むとなれば、死地に身を置く機会も自ずと増えるだろうからな。しかし、万が一。貴殿が申した通り、私が天下を取って渡世を支配することが出来た暁には……」


 どうにも、含みのある言い方で中断した村雨。所々で相槌を適度に打ちながら黙って聞いていた本庄は二ヤリと口元を緩ませるや否や、細めた目をサングラス越しに光らせて尋ねる。


「暁には? 何したいん?」


 手元の2杯目の酒をゆっくりと飲み干した後、村雨は言った。


「絢華に、全てを与えてやりたい」


 シンプルな返答である。


 しかし、彼の声色からは迫力しか感じられなかった。横浜の地で「残虐魔王」として恐れられる男が心の底から紡ぎ出した、短くも力強い言葉のインパクト。真正面で受け止める形となった俺が圧倒されてしまったのは、もはや言うまでもないだろう。


 また、それは本庄も同じだったのか。彼は少し間を置いた後で、静かに尋ねる。


「ほう。それが、天下を獲った後であんたがやりたい事なんか?」


「ああ。幼き日の私が憧れた穏やかな温もりと、人として生きる幸せ。私が手に入れることができなかった全てを……あの子には与えてやりたいのだ。他に望むものなど、何も無い」


「その意気やで。お嬢ちゃんを幸せにしたるって意味でも、あんたが天下を獲って長生きせんとなぁ。兎にも角にも、ずは大鷲会と斯波を倒さなあかん。それを成さんことには、何も始まらへんのやさかいな」


 村雨は終始、硬い表情を崩すことは無かった。


 料理を口に運びながらも黙って聞いていた俺は、彼の絢華に対する愛情の深さを改めて痛感させられた気分になる。娘のために自ら死のうとする意志を未だ持ち続けていたのもさることながら、天下を獲ったら何をしたいかと聞かれて真っ先に娘の話が出てくるとは。


(この人は、思った以上に“親バカ”なのかもな……)


 また、さっきの故郷の話から察するに、彼の生い立ちは想像よりも遥かに複雑なのかもしれない。詳細こそ分からなかったが、母親が自分のために料理をしなかったというくらいだから、よほど辛い幼少期を過ごしたのだろう。


 だからこそ、娘には同じ思いをさせまいと努めているのだと解釈すれば、村雨のありとあらゆる言動に説明が付く。全ては、愛する娘のため。それこそが彼の生きる意味なのだと、俺は少しずつ理解してきた。


(……なるほどな)


 それからは殆ど取るに足らない雑談がしばらく繰り広げられ、ようやく談義は終了した。実際には90分くらいだったと思うが、尋常ではない緊張感にずっと包まれていたせいか、店にいた時間がとても長く感じる。


 正座で痺れた両足を労わっていた帰り際、本庄が言った。


「涼平。お前は今日から、村雨はんのとこに帰ってくれ」


「えっ!」


「後のことは気にせんでええ。山崎たちには、わしの指示で横浜へ潜入させたことにしとくさかいのぅ。来た時にお前が持ってきた荷物も、近いうちに宅配で送ったる。それでなんも問題はあらへんやろ?」


 いやいや、そういう問題ではない。会食の議題の1つが「麻木涼平を横浜に戻すか否か」だったことは認識していたが、その日のうちに戻ろうとは流石に考えてもいなかった。というより、話が急すぎる。


 だが、その旨を伝えても本庄は変わらなかった。


「これから、わしと村雨はんの共同作戦が始まる。一緒に横浜を制圧して、憎き斯波のボンクラどもを倒すっちゅうな。せやさかい、お前には本庄組わしらと村雨組を繋ぐ橋渡し役になってもらいたいんや」


「は、橋渡し役……?」


 煌王会と中川会。それぞれ、巨大組織の傘下にある村雨組と本庄組が水面下で手を取り合い、共闘していくことは決して容易な話ではない。同盟は極秘であり、関係が外部に漏れることは言語道断。


 両者ともに相手を信頼し合った上で、かたく秘密を守る必要がある。そのためには、双方の組員同士が迂闊に接触することも避けなくてはならない。密かに会っている場面を見られたら、忽ち露見してしまうのだ。


 そこで、俺の出番なのだという。


「今、涼平は正式に村雨組の代紋を背負うてるわけちゃう。言うても、わしが盃を下ろしたわけでもあらへん。つまりは、両方にとっての部外者や。幸いなことに、他の組にはツラが割れてへん。横浜と五反田を頻繁に行き来しとっても、何の問題もあらへんってこっちゃ」


「……要は、俺に連絡係をやれってことか?」


「せや」


 双方の組長に信頼があって、なおかつ事情を深く理解しているカタギの人間――。


 自分なりにあれこれ考えてもみたが、たしかに俺以外には当てはまる者が見当たらなかった。また本庄曰く、わざわざ俺をこのタイミングで横浜へ戻すのには別の理由もあるという。


「側におって、支えたってほしいんや。村雨はんを。根っからの命知らずやさかいなぁ。誰かが常に見張っとかな、いつ、どんな無茶をやらかすか分かったもんやない。わしとしても、村雨はんに死なれては困る。これから渡世で頭角を表していくのを見込んで、先行投資の意味で手を差し伸べたわけやし。それに今、村雨はんには頼れる味方がわしとお前以外におらへんのや。分かるか?」


「でも、俺じゃ無理だよ」


「大丈夫や。いけるで。のぅ、村雨はん?」


 同意を求められた当の本人からは、怪訝な声が飛んでくる。


「余計なお世話だ。年端も行かぬ小童の助けを借りるほど、軟弱ではない」


 しかし、程なくして村雨の口から出たのは、予想だにしない言葉だった。


「ただ……絢華を託せる男は、涼平。お前しかいないのもまた事実だ」


「えっ? それって、どういう?」


「言葉通りの意味だ。さて、帰るとするか」


 慌てて意味を尋ねてみたものの、明確な説明が返ってくることはなかった。それ以上の質問を遮るかのごとく、村雨は俺に背を向けたままそそくさと座敷を出て行こうとする。


「ほら、何をしている! さっさと付いてこい!」


 茫然と立ち尽くす俺に、少し大きな声で喝を入れた村雨。どうやら、このまま横浜へと帰るようだ。ハッと我に返るや否や、俺は後を追って足早に歩き始めた。途中、ふと本庄の方に視線をやる。


「ほな、涼平。また後でな」


 相変わらず、五反田の蠍は食えない笑みを浮かべていた。


「ああ。また。山崎さんたちに、よろしく」


「おう、任しときぃ」


 どこか、その表情からは「頑張れよ」という意味の餞別的な思いも伝わってくる。俺は軽く別れの挨拶を済ませると、先に部屋を出た村雨の後を猛ダッシュで追いかけてゆく。少しの間に、かなり距離が開いてしまっていたのだ。


「遅いぞ。どこで油を売っていた?」


「いや、ちょっと本庄さんに挨拶してて……」


「そんなものは5秒で済ませろ! 良いか? 私のそばで働くのならば、これまでのようにはいかぬぞ。常に数歩先を読んで動き、あらゆることに気を配れ。それが出来なければ、私より先に死ぬことになる。もはや、前とは状況が違うのだからな。覚悟を決めろ!!」


「わ、わかったよ」


 廊下を歩きながら次々と飛んでくる、キツいお叱りの言葉の数々。だが、あまり嫌な気分にはならなかった。むしろ、どこか懐かしい。どういうわけか、心がホッとするような感覚に包まれていた。


 敢えて大袈裟な表現を用いるならば、それまでの人生においてはまるで経験の無い、とても不思議な心地といったところか。しかし、1つだけ確かに分かっていたことがある。


 許された――。


 ただ、それだけだ。直接言われたわけではないのに、何故かそのように心が解釈してしまう。流石に思い込みが過ぎると一瞬は自分を疑ったが、やはり何度脳内を整理しても答えは同じ。


 すると、前から少し小さめの声が聞こえてきた。


「よくぞ戻ってきてくれたな……私の元へ」


 玄関に向かって足早に歩いていく村雨は相変わらず背中を向けたままで、俺の方を振り向くことは無い。だが、その表情は前に会った時よりも、ずっと明るいような気がしてならなかった。


「……ああ。ただいま」


 1998年7月22日。


 こうして俺は村雨耀介とともに、あの日への道を歩み始めたのだった。

これにて第5章は完結です。


皆様の応援に心より、

御礼申し上げます。


次章は新キャラが

続々と登場します!


これからも『鴉の黙示録』を

お楽しみに( *´艸`)

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