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鴉の黙示録  作者: 雨宮妃里
第5章 横浜制圧計画
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最後の晩餐

 帰宅からしばらく時間が経った頃、本庄が言った。


「ほな、飯にするかのぅ」


 ひとり、給湯室へと向かってゆく組長。彼は日頃より、朝・昼・夕と3食をすべて自炊で賄っている。店屋物を買ったり、外食で済ませたりすることは殆ど無い。これは、食事に毒を盛られて暗殺される危険を防ぐためである。


 ヤクザという立場柄、他者の恨みを買いやすいことを本庄は誰よりも理解している。ゆえに朝は自宅のキッチンで、昼と夕は事務所の給湯室にて、それぞれ自らの手で調理も行っているのだ。


 一方、この日は別な事情もあるようだった。


「ええ白身魚が手に入ってん。昨日、四国のお客人から送られてきてなあ。そいつを使うて、お前らに美味いもんを食わしたるわ」


 どうやら、本庄は俺たちに手料理を振る舞ってくれるらしい。組員たちが「ありがとうございます!」と歓喜の声を上げる中で、話を聞いた山崎は目を丸くして尋ねる。


「四国のお客人? もしや、松山ですか?」


「せや。5月の件で、コネができたさかいなあ。せっかくの縁や。そのままほかしとくよりは、積極的に交流した方がええやろ。何や、不満そうな顔やのう」


「いえいえ、決してそういうわけでは。ただ、私といたしましては……あまり、一条の人間を信用しすぎるのは如何なものかと存じます。いくら名門とはいえ、最近では妙な噂も耳にしますし……」


「大丈夫や。わしだって、贔屓にしてるわけとちゃうんやし。あくまでも、商売の付き合い。間違うても盃を交わしたりはせえへんから、そこは心配せんでええぞ」


 両者に会話から察するに、四国の愛媛・松山には「一条いちじょうかい」なる独立組織が勢力を張っているらしく、本庄はそこの有力幹部と個人的な親交があるようだった。


 俺が五反田に来る前、その年の5月に起こったとある出来事がきっかけで、一時的な協力関係が生まれたとのこと。前日に届いたという銀鱈は、その交流の証というわけだ。


「……わかりました。親分が、そう仰るのでしたら」


「おう。後で、お礼に何か贈っといてくれ」


「かしこまりました」


 彼の中では、どうも一条会が「信用ならない相手」という認識のようである。だが、組長の意向とあらば従わざるを得ない。懸念をあからさまに表情で示しながらも、山崎は渋々承諾の返事をしていた。


 そんな若頭を尻目に、本庄は作業に入る。


 冷凍庫から発泡スチロールの箱を取り出し、具材の下準備が始まった。給湯室から漏れてくるのは、鱈のウロコを丁寧に落とす音。少し聞いただけでも、本庄が料理に慣れている事がすぐに分かる。


(なかなか、手際が良いんだな……)


 感心していると、給湯室から声が飛んできた。


「涼平。ちょい、手伝ってくれん?」


 不意に促された俺は、慌てて給湯室へと駆けてゆく。まな板の上に視線をやると、ちょうど本庄は鱈の仕込みを終えようとしているところであった。包丁を動かす手を止めないまま、彼は横目で問うてくる。


「お前、料理はどれくらいできるんや?」


「うーん。米を研ぐくらいかな」


「そか。ほんなら、頼むわ」


 どうして自分に手伝わせるのかと疑問に思ったが、頼まれた以上はやるしかない。俺は戸棚から白米が入った袋を引っ張り出すと、キッチンの隅にあったボウルにザーッと注ぎ込んだ。


(なんか、すっげえ久しぶりだな……)


 懐かしい感触がした。思い返してみれば、まだ親父も存命であった7歳の頃に母の歓心を買うべく「お手伝い」をして以来、台所仕事からは離れていた。実に、7年ぶりの米研ぎである。


 ただ、そうしたブランクがあったせいか、俺は正しいやり方というものをすっかり忘れてしまっていた。指で掴む力加減は勿論、途中で水を流す際の角度さえも誤り、排水溝に何度も米を流してしまいそうになったほどだ。


「あれっ!? おかしいなあ……」


 ぎこちない手つきで懸命に挑みながらも、苦戦して思うように作業が進まない俺。すると、その様子を見かねたのか。本庄が苦笑まじりに、助け舟を出してきた。


「おいおい、それじゃあ米が台無しになってまうわ! 貸してみぃ!」


 俺からボウルを受け取った本庄は、ゆっくりと手を動かして見せる。


「ええか? 『米を研ぐ』っちゅうのは『米の表面を研磨する』、つまりは『磨く』ちゅうこっちゃ。1粒1粒、擦り合わせるつもりでやるんや。よう見とけ」


 そう言うと、彼はこちらから見て反時計回りに、ボウルの中身を静かに揉み込むような仕草で、大きくかき混ぜていった。


 ――シャッ! シャッ! シャッ!


 やがて、その動作を9回ほど繰り返した後、先ほど俺が注いだ水を捨てて、今度は手つきを早めて15回、かき混ぜる。先ほどと同様に、大きな反時計回りが特徴的だった。


「……よし、こんくらいでええやろ」


 次に、本庄は研ぎ終わった米をボウルから炊飯器の内釜に移し、ジャーの容器にセットして、ゆっくりと蓋を締める。ところが、その様子に俺は首を傾げてしまった。


「ん?」


 どういうわけか、彼は「開始」のスイッチを押さなかったのだ。


 いくら電化製品の進化が進んでいるとはいえ、全自動化には当時も今も至っていない。どんなに上手く研ごうが、スイッチを押さない限り、米は炊けないのである。


(何で、押さないんだ……?)


 ところが本庄曰く、それにはきちんとした理由があるとのことだった。


「炊く前に、米には水を吸わしておく。そうすることで柔らこう、ふっくらとした飯ができるんやで。まあ、せわしない時には気にしていられへんがな。よう覚えとけや」


「へぇ。初めて知ったぜ。あんた、なかなか料理に詳しいんだな」


「まあな。組の看板掲げさせてもろうてから、毎日のように台所に立っとるもんでな。かれこれ、20年近くか。それだけ包丁を握っとったら、自然と身に付くわな」


 彼は長年にわたって、自炊生活を続けている。その主たる理由は「敵対者による毒殺のリスクを極力減らすため」らしいが、別の意味もあるようだ。苦ではないのかと尋ねた俺に、本庄は平然と答える。


「米を研ぐ合間に空飛ぶ鳥を見たり、肉や野菜を切る傍ら街の景色を眺めたりしながら『自分って何やろ』みたいに、いろいろ考えるんや。そうやって立ち止まる非日常みたいなもんが、わしら極道には絶対に必要なんよ」


「非日常、か……」


「そうやで。飯を作るっちゅう行為は、人が生きてゆくために欠かせへん最も基本的な『創造』やさかいな。ほら、極道って『破壊』しかせえへんやん? 他人様の生活に土足で踏み入って、他人様が作り上げたさかいを根こそぎ奪うていく……そんなわしらに唯一できる『創造』が、料理や。台所に立ってる間だけは、なんかを生み出すこと出来る。せやさかい、その時間が大切なわけよ」


 忙しい日常の中で立ち止まり、己の生き様を見つめ直す――。


 考えてみれば、そのような時間は確かに大切だ。


 以前、俺は絢華に「人生とは問題解決の連続だ」と話したが、そもそも何のために生きるのか、自分が向かうべき最終目的地が何処であるかを明確にしなくては、意義の無い時間を延々と過ごすことになってしまう。


(たしかに。そうだよな……)


 本庄の話を聞いた俺は、大きなハンマーで頭を殴られたような気分になった。それまでの人生観がいかに未熟で、刹那的かつ思慮の浅いものであるか、思い知らされた心地である。


 しかし、不思議と悪い気持ちにはならない。


 やや小賢しい喩えをするならば、それまで心の中において芽を出しつつあった自分なりの哲学の軸に、如雨露じょうろで水を注がれた感覚。良いアドバイスをもらったとさえ、思えた。


 俺はそっと、本庄に返礼を投げる。


「……なるほどな。ためになったぜ」


 それからは暫くの間、2人で調理に没頭した。


 土鍋に組の定番のミネラルウォーターを注ぎ、昆布と炒り子で軽く出汁をとった後、メインの具材である銀鱈の切り身と玉ねぎを沢山放り込んで、グツグツと煮込む。


 隠し味に柚子胡椒を加えるのがポイントで、そうすることによって白身魚本来の“旨味”が引き立つのだとか。長きにわたり台所に立ってきた本庄らしい、真に玄人さが光る工夫だと思う。


 そんな彼は調理の合間、適当なタイミングを見計らって炊飯器のスイッチを押すことを忘れなかった。鍋が出来上がる時間から逆算した、実に絶妙な手際の良さである。


「よし。後は、飯が炊けたら完成やな」


「ああ」


「ところで、涼平。お前、これからどないするんや?」


 調理の工程がひと段落した時、不意に本庄が問うてきた。


「お前、ゆくゆくは帰りたいんか? 横浜へ」


 どうして今、そのようなことを聞くのだろう。あまりにも唐突な質問に、戸惑いと動揺が一緒に湧き起こった。


「えっ」


 思考の中で、勘繰りが始まる。


 ここ数日の間、本庄が俺の将来的な中川会入りを期待している様子は、何となく伝わってきていた。


 もしかすると、先ほどの山崎と同様に誘いをかけてきているのか。まわりくどい言い方なれど、これは「うちの組へ入れ」という本庄なりのメッセージなのかもしれない。


(なら、断るわけには……)


 しかし、心は既に決まっている。自分には、愛する女がいるのだ。己の野望のために大量殺人を起こす恐ろしいヤクザの申し出であろうと、絢華を裏切るような選択は出来ない。いや、できるはずが無い。


 若干の寝覚めの悪さを覚えつつも、俺は正直に答えた。


「帰りたいと思ってる」


 その瞬間、沈黙が生じた。


「……」


 気まずい空気感が、一気に俺を包み込んだ。そういえば9日前にも、山崎と似たような会話があったような気がする。たしか、その時は村雨組の現状を記した資料を見せつけられ、遠まわしに「横浜へは帰るな」と“説得”されたんだっけ。


 今回も、同じパターンか――。


 ところが、本庄の口から返ってきたのは思いがけない台詞だった。


「そうよな。わしも、そのつもりやで」


「えっ!?」


 直前に脳内で作り上げた予想のうち、どれにも当てはまらぬ肯定的な反応。意表を突かれる形となった俺は、思わず素っ頓狂な声を上げ、目と口を大きく開いて唖然としてしまう。


 そんなこちらの様子が、さぞ可笑しかったのだろう。本庄は苦笑を交え、どっと吹き出した。


「おいおい! 何、アホな顔しとんねん。お前、もともと言うとったやんけ。『いつかは横浜へ戻る』って。その気が今になって変わってへんか、確かめただけやぞ?」


「いや、でも。さっき……」


「ああ。分かるで。止められたんやろ? 山崎に」


 大きく頷いた後、本庄は言った。


「気にせんでええぞ。あれはカシラやさかい、何事も組の都合を一番に考えなあかん立場や。お前を引き留めたのも、うちの喧嘩の強さを底上げしようと考えてのことや思う。せやけどな、そら本庄組うちの問題や。大事なのは、涼平。お前がどないしたいか。こっちの事情で、それに口を出す真似はでけへんよ」


「良いのかよ。たしか今、人手が足りないって聞いたけど」


「構わんわ。兵隊なんか、集めよう思たらいつでも集められる。涼平は、自分のことだけ考えとったらええ。それになぁ……男ってのは、惚れた女のために体張ってこそ、値打ちが生まれる生き物なんや。たしかお前、村雨のお嬢ちゃんとデキとんのやろ? せやったら難しいことは考えんと、しっかり傍におって守ったらんかい!」


 再び、呆気にとられてしまった。


 まさか「五反田の蠍」の口から、熱い叱咤激励の言葉が飛び出すとは。大井町の件以来、俺は本庄が、打算と謀略だけで生きている冷酷な男だと思えてならなかったのだ。


(何か、思惑があって言ってるのか……!?)


 ジェームズたちが辿った悲惨な末路を知っているので、どうにも疑いを捨て去る事は出来ない。だが、敢えて口に出すようなこともない。ひとまず、建前の返事をしておいた。


「あ、ああ。わかった。そうするよ。ありがとな」


 とはいえ、本庄の真意に対する訝しさが消えたわけではない。彼は他者を利用できるだけ利用し、自分にとっての価値が価値が無くなった時点で無慈悲に切り捨てるという、きわめて悪辣な行動習性の持ち主だ。


 それは己の身内とて、決して例外ではないだろう。実際のところ、本庄組は現在までに21人が「親分の存在に恐怖を感じ」、組を辞めているのである。忠実な山崎と前波も今後、どうなるかは分かったものではない。


 俺は、不安を拭うことができなかった。


(とにかく、慎重に動かねぇとな。この人の前では)


 一方、こちらの返事を受けた本庄は頬を緩め、穏やかな声で語り始める。


「……お前のオトンも、そういう男やったな。守ると誓うた女のために身を粉にして働いて、危ない橋をなんべんも渡った。ほんで、どない大きい敵が目の前に立ちはだかっても、1人で立ち向かっていったんや」


「父さんが?」


「せや。みっちゃんは、ほんまに任侠道を地でゆく男やった。愛するモンを守るためなら、どんな修羅場も厭わへん。で、持ち前の剛腕だけを武器に立ち回って、数えきれへんくらいの伝説を作った。そんな姿に周りの人間が惹かれて、いつしかみっちゃんは『川崎の獅子』なんて、呼ばれるようになってん。おまけに、あいつは……」


 その時、室内に軽快なメロディーが電子音で流れた。


「おっ!」


 どうやら炊飯器が、作業を終えたようである。俺の実父・麻木光寿の思い出話を中止した本庄は、近くにあったしゃもじを手に取ると、ジャーの蓋を開けて中を嬉しそうに見つめた。


「炊けたみたいやな。よし! こいつは美味そうや!」


 鍋の方も、ちょうど良い具合に出来上がっている。


 俺は本庄に促されるまま、組員たちと一緒に食事の準備に取り掛かった。応接用のテーブルにカセットコンロを設け、その上に鍋を置く。飲み物は、ドイツ語表記のラベルが巻かれた瓶ビール。


 これもまた、四国の一条会から届いた差し入れであるという。戸棚から栓抜きを探しながら、山崎がため息混じりに呟いていた。


「はあ……大丈夫かな。これ、けっこう高いビールだぞ……」


 しかし、そんな若頭も空腹には耐えられなかったのか。テーブルの上に茶碗やらグラスやらといった食器類が並び、本庄がおたまで皆の皿に均等に配膳を行うと待ち侘びたかのように箸をつけ始めた。


「いただきます」


 銀鱈とたまねぎの煮込み。皆に続いて俺も食べてみると、口に入れた瞬間に白身魚のやさしい風味が広がった。昆布出しに柚子胡椒だけというシンプルな味付けながらも、野菜の香りも相まって、なかなかの一品である。


 自然と白飯が進み、ビールとの相性も最高だった。時期的に鍋料理のシーズンでないことは百も承知だが、室内はクーラーが効いて涼しいので、さほど気にはならない。食べ終わる頃になると、腹もすっかり膨れてくる。


「どうや? 気に入ってくれたか?」


「ああ。美味かったぜ」


「そら、良かったわ」


 俺の感想を聞いた本庄は、とても満足そうな笑みを浮かべていた。


「作った甲斐があったってもんやなあ……」


 以降の記憶は、少し曖昧である。満腹感にアルコールが加わったせいか、眠気が一気に押し寄せてきたのだ。酒を片手に美味い食事をたらふく腹に詰め込んだ時は、いつもそうなる。気づかぬうちに、ストンと眠りに落ちてしまう。


「ん……」


 腰かけていたソファーに深くもたれかかり、天井を仰ぐ体勢で寝入った俺。その間、本庄は山崎や前波、他の組員たちと何やら他愛もない雑談を繰り広げていたと思うが、ほとんど頭に残っていない。


「……」


 どのくらい、時間が経った頃だろうか。突如、つんざくような爆音が耳を襲った。


 ――バーン!!


 すぐさま、俺はハッとして飛び起きる。


「な、何だ!?」


 目を慌てて擦りながら室内の様子を確認すると、皆が顔を見合わせていた。ある者はキョロキョロと周囲を窺い、またある者は硬直したまま全身を静かに震わせている。どれも決して尋常ではない様子で、大いに動揺しているではないか。


 しかし、室内が浮足立つ中でも本庄だけは、いつもと同じ様子を保っていた。向かい側のソファーに深く腰を下ろし、腕組みの姿勢でジッと何かを考えている。突然の出来事にも冷静さを失わず対応できるのは、さすが組長といったところか。


 そんな本庄は俺に、静かに言った。


「……カチコミや」


「は?」


「見てみぃ。いまさっき、弾を撃ち込まれたんや」


 恐る恐る、俺は組長が差した方向に視線を向ける。


「あっ……」


 その時、俺は全てを理解した。


 オフィスの入り口から向かって左手側にある窓に、大きな穴が開いていたのだ。何かの塊が、勢いよく突き破ったような跡。床には、割れた際に飛び散ったとみられる無数の細かなガラス片。


 本庄によると、何者かが事務所の窓に銃弾を撃ち込んだ可能性が高いとのことだった。室内の空気が、さらなる重さに支配されてゆく。


「じゃあ、さっきのは銃声……?」


「せや。どこの組がやったかは、分からんけどな」


 すると、電話が鳴った。


 ――プルルルルルッ! プルルルルルッ!


 近くにいた前波が、慌てて受話器を取る。


「はい、本庄総業です」


 ふと時計に目をやると、時刻は午後9時12分。


(こんな時間に誰だよ……)


 おそらく当時、オフィス内にいた誰もが俺と同じことを考えたと思う。窓に銃弾を撃ち込まれるという衝撃的な出来事の直後だけあって、嫌な予感が脳裏をよぎる。


(もしかして、さっき撃ち込んだ奴か?)


 次の瞬間、電話を受けていた前波が驚愕の声を上げる。


「何? 村雨組だと!? 間違いはないのか? ……ああ、わかった。ちょっと、待ってくれ。いま社長に替わる!」


 村雨組――。


 漢字で記せばたった3文字の単語が聞こえると同時に、全身に戦慄が走った。ギュッと掴まれたような痛みを心臓におぼえるや否や、胸の鼓動が少しずつ早鳴ってゆく。明らかに、精神が動揺していた。


(ま、まさか!?)


 そんな俺を尻目に、本庄が前波に問いかける。


「どないした?」


 受話器のマイクの部分を手で押さえながら、前波は言いにくそうに答えた。


「村雨組の里中賢介って奴から電話です。『そちらに匿っている麻木涼平を引き渡せ。さもなくば、今から一気に追い込みをかける』と」


「……ついに、来よったか」


 俺の予感は、最悪の形で当たってしまった。

次回、怒涛の展開に。

お見逃しなく!!

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