表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鴉の黙示録  作者: 雨宮妃里
第15章 血まみれの天使
258/261

華鈴との結婚式

 華鈴と俺の結婚式の準備は、それからもとんとん拍子で進んでいった。


 スケジュールとしては午前中に都内の教会にて式を行い、午後に披露宴を催すという流れ。よもや後者を桜月堂庭園にて開催できるとは思わなかったが、これには側近の結婚を利用し、己の権威を内外に誇示せんとする中川恒元の思惑が絡んでいる。


 想い人との一生に一度の結婚式を政治の道具にされるのは、些か不本意。されど贅の限りを尽くした宴により恒元の権力が高まるならば、俺たちとしても文句は無かった。


 ウエディングドレス選び。


 披露宴でのプログラムの内容決定。


 招待客らの選別と招待状の発送。


 着々と準備を整えてゆく中で、俺はある日の夜に華鈴が眠る前に口を開いた。


「しかし、人生ってのは分からねぇもんだな……ガキの頃は一匹狼の不良として暴れまわってた俺が結婚するなんざ」


「ん? どうしたの、急に」


 華鈴が眠そうな目をして俺に尋ねる。


「ちょっと昔を思い出しちまってな」


「……まあ、確かにね」


 ベッドの上で天井を見つめながら、華鈴もしみじみと思い出すように呟く。


「あたしも自分が結婚するなんて子供の頃は思えなかったなあ。それこそ、レディースやってた頃なんか」


「ああ、あの頃は自分以外の全てが敵に見えていた。横浜の村雨組に拾って貰って少しはまともになったかと思ったら、そこを抜けた途端に戦闘狂へ逆戻りさ。日本へ戻った頃は、それこそ闘気の塊みてぇな男だったかもな」


「うん……でも、あたしは涼平が傭兵になった理由とか知らなかったから、最初はめちゃくちゃ怖い人だなって思ってた」


「まあな。俺は口数が少なかったし、華鈴もけっこう露骨に俺を嫌ってたっけか。今じゃ考えられねぇよな」


 そう語った時、俺は不意に昔の光景を思い出した。


 中学時代は荒れに荒れ『川崎一の不良』として名を馳せた。そのせいで中学卒業と同時に母に勘当され、流れるように行き着いた横浜でヤクザとしての修行を始めた。組長に気に入られ、一時は彼の養子になる話まで持ち上がるも、村雨組の盃は呑めず、巧みに勧誘してきた中川会へ入った。その後は海外へ武者修行に出て、何故か南アフリカで日本の古武術を体得、やがては傭兵になった。


 帰国後、暴れることしか考えられなかった俺が出会ったのは、赤坂三丁目の喫茶店の看板娘だった華鈴。紆余曲折あって彼女とは愛し合うようになったが、よもや結婚に至るとは夢にも思わなかった。


「あの頃は涼平のこと、すぐに暴れる人だと思ってたよ」


「まあ、そう思われても仕方ねぇわな。実際、俺は喧嘩っ早くて周囲に敵を作ることが多かったし……だが、今は違う。華鈴と出会ってから俺の人生は大きく変わった」


「あたしもだよ。あたしね、涼平に出会ってなければ女としての幸せを味わえなかったと思うんだ」


「華鈴……」


「こんなあたしを打算無しで愛してくれたのは家族以外じゃ涼平だけだった。だから、感謝してるんだ。心から」


 暫しの沈黙が訪れた。俺たちは現在という幸福を嚙み締めるように、見つめ合う。そうして華鈴が腕を伸ばして俺を引き寄せるなり、口づけをした。熱く弾力のある唇が俺の唇を覆い、熱烈なキスを交わす。


 そんな俺に華鈴は言った。


「愛してる」


 まるで予期していたかのように、俺も即答した。


「ああ。俺もだ」


 それからまたも長い口づけを施し合った俺たち。常夜灯だけが光る薄暗い寝室にクーラーの動作音が響く中、華鈴が少し恥ずかしそうに言った。


「……あのさ。ちょっとしたお願いなんだけど」


「何だ?」


「オッパイ、揉んでくれないかな」


 俺が「今日はまた随分と率直じゃねぇか」と苦笑すると、華鈴は顔を赤らめながら声のボリュームを上げた。


「へ、変な意味じゃなくて! その、マッサージだよ!」


「マッサージ?」


「ウェディング用の下着、けっこう圧迫感が強いから……オッパイも苦しいし、肩こりとか疲れも溜まりやすくなったりしてて」


「ま、まあ、そりゃあ、そうだろうな」


 女体については正直なところ詳しくない俺だが、華鈴の抱える悩みは理解できた。婚礼衣装を美しく着こなすためとはいえ、運動や食事制限によるダイエットで無理なバストアップを行っているのだ。元より彼女は胸が大きく、豊満な体つきだというのに――俺に断る選択肢など無かった。


「だからお願い……いつもより、ちょい強めに揉んでみて」


「分かったよ」


「後ろから、お願い」


 此度の結婚式で華鈴が着る衣装は、中川恒元が若かりし頃に妻に着せたものを現代風に縫い直した至高の一品。だからこそ彼女は体づくりにも神経を尖らせているのだろう。


「しっかし、この下着はけっこう締め付けが強そうだな」


 ブライダルインナーは一般的なブラジャーとは違い、胸だけでなく背中やウエストなど体全体のラインを整えてくれるものだ。そのため通常の物よりもきつく作られていることが多い。特に乳房のサイズが大きい場合には余計に締めつけを感じるのだとか。華鈴はEカップであるから無理もない。


 体型補正のため、式を控えた新婦は就寝時もブライダル・インナーを着けなくてはならないらしい。俺は華鈴を背後から抱き締めると、ビスチェのカップをずらして彼女の大きな胸を揉み始めた。


「……んっ」


「大丈夫か?」


「うん、もっと強くしていいよ」


 華鈴の乳房を揉む俺の掌が、彼女の心臓の高鳴る鼓動を感知する。その鼓動はいつもより少し早く感じた。


「あっ……」


 俺は華鈴の乳房を揉みながら、彼女の耳たぶに舌を這わせる。すると彼女は体をビクッと震わせた。


「あ……や……っ」


 俺は華鈴の胸をゆっくりと揉み、豊満な柔肉を堪能する。だが、しかし、前戯では終わらせない。華鈴の感じている快感をより強めてやるため、彼女の両方の乳首をつねった。


「ああっ!」


 そのまま、俺は右側の乳頭をコリコリと捻りながら引っ張ったり、左側を摘まんで引っ張ったりする。その度に華鈴は体を震わせた。


「りょう……へい……あっ……!」


「可愛い。もっと感じてくれ」


 俺は激しい勢いで華鈴の乳房を揉んだ。


「はぁんっ! つ、強いよぉ!」


 本能的に身を捩って悶える彼女を見て俺は思う。出会った頃から豊満な体つきだったが、あの頃よりもバストが大きくなっている。


 もっと云えば、両腕の筋肉も増量しているように見える。


 きっと俺と肩を並べて戦うために鍛錬に励んでくれていたのだろうか……そう思うや目の前の女がますます愛おしくなり、俺は華鈴の大きくて丸い乳肉を力任せに揉みしだき、自らの情欲を彼女の乳首にぶつけた。


「ううっ! 気持ちいっ!」


 華鈴が悲鳴にも近い嬉声を上げるや、俺はうなじを舌で舐め回す。


「は……はうぁ……」


 そして俺は乳房を揉む手を止めて、背後から華鈴の腹を掌でスリスリと撫でた。すると彼女は自分の陰部に変化が生じたことに気がついたようである。


「あ……ま、前より……感じちゃった……」


「びしょびしょだな」


「う、うん……」


 華鈴のショーツは既に愛液で湿り返っているようだった。彼女は少し恥ずかしそうに俯いている。


 興奮した俺は華鈴のビスチェを力任せに剥ぎ取ると、そのカップ部分に顔を近づけて匂いを嗅いだ。汗と香水の混ざった甘酸っぱい香りが脳天を突き抜けた。


「ちょ、ちょっと!」


 こちらを振り返った華鈴が頬を赤らめている。その姿に俺はますます昂り、穿いていたズボンとパンツを脱いで男根を露出させるとビスチェを撫で付けてみた。男の分泌液がべっとりと張り付き、醜い音が鳴る。


「何やってんの?」


 汁が付着した場所を凝視している彼女を尻目に、俺は一心不乱に自慰を続けた。カップでペニスを包むと湿った感触とともに彼女の胸の谷間の幻影が現れる。それに興奮した俺は夢中で上下に動かした。


「ちょっと、やめてよ……マジで……それ、ずっと着けてなきゃけないやつなのに……」


「はあっ、はあっ、ほら、見てろよ」


「……」


 華鈴は俺の行為に眉を潜めながらも見つめている。


「あっ! 出そうだ!」


 限界を迎えた俺は華鈴の下着を股間に押し当てたまま射精した。大量の精子が下着に付着しベトベトになったそれを手渡すと彼女は嫌そうに受け取ってくれた。


「着てみてくれ」


「や、嫌だよ」


「良いから。頼むわ」


「……分かった」


 眉根を寄せながらも、華鈴はビスチェを着用し始めた。右の乳房の先端に白く濁った汁が滲み出してくる。それを見て俺は満足気に微笑んだ。 


「どうだ?」


「き、気持ち悪いよ」


 困惑しながらもどこか艶っぽい声で答える恋人。普段ならこのような趣味は無いのだが、あまりにも美しい格好をしているために興奮を抑えきれずにいた。彼女の反応に気を良くした俺は、さらなる暴走に及んだ。


「きゃっ!」


 なんと、華鈴の右胸をカップの上から吸い上げたのである。布地越しに感じる柔らかさと温もりが心地よい。舌で転がしたり優しく噛んでみたりすると艶やかな声が漏れ聞こえてくる。


「んっ……あっ」


 布地越しであるにも関わらず、感度良好なのが分かった。それどころか直接的に触れるよりも強い刺激となっているようだ。華鈴はすっかり大粒の汗をかいて、呼吸を激しく乱している。


「はあ……はあ……」


 だが、そこで終わる俺ではない。今度は華鈴のわきに男根を挟むと、そのまま前後に動かし始めた。これにはさすがの彼女も驚愕の表情を浮かべた。


「なっ……!?」


 華鈴の困惑を他所に俺は無心で腰を振るう。ヌルヌルとした腋の感触が股間に伝わるたびに、気持ち良さが情緒を支配する。


「うっ! はあっ!」


「こっ……こんな……あぁっ……」


 何度も往復させているうちに射精感が高まってくる。俺は最後のひと押しと言わんばかりに強く抱きしめた。それと同時に欲を爆発させる。


 どぴゅっと音を立てて迸った白濁液が華鈴の腋の窪みを埋め尽くし、隙間からはみ出て太ももを伝い落ちる。その様子に満足した俺は満足気に息を吐くとゆっくりと男根の恋人の腋から抜き、体をかがめるとその部分を舌で舐めてやった。ザラついた舌の感触に驚いたのか華鈴はビクンッと跳ねたが、構わず続ける。


「んっ……」


 その様子に気を良くした俺は腋に溜まった精子を吸い取り始めた。


「ぢゅるっ……んっ……」


「はっ! あっ!」


 舌先で掬い取り喉奥へと流し込んでゆく。何度も往復するうちに段々と量が減ってゆくので、今度は舌全体を使ってペロペロと舐めてやった。


「はっ! あっ! あぁっ!」


 ビクビクと体を震わせながら喘ぐ様子を見る限り、感じているようだ。ならば調子に乗ってもいいだろうと思い立った俺はニヤリと笑う。


「やってやろうじゃねぇか」


 俺は華鈴をベッドの上に寝かしつけると、彼女の両足首を手で押さえる。そして陰部に顔を近づけて舐め回した。


「ふっ! ああ……」


「もっと気持ち良くしてやろう」


 俺はそう呟くや、ショーツの布越しに女唇にしゃぶりついた。


「ああっ! あ、ああ……っ!」


「どんな感じだ? 気持ち良いなら気持ち良いって言ってくれよな?」


 俺の熱い口づけに、亜麻色の髪を振り乱し華鈴が体を反らせる。そしてショーツの中からは卑しい音が漏れ始めた。


「あっ……あっ……ああっ……あ……イ、イッちゃう!」


「良いぜ……俺に見せてくれよ」


 ショーツの中に指を割り入れると、華鈴の女陰が大洪水状態になっているのを感じた。そして俺はそこを指先で弄り回した。


「あっ! あ! あああああああ!」


 華鈴が絶頂に達すると同時に、俺は彼女の女陰から顔を離した。そして華鈴のショーツを脱がして、両脚を大きく開脚させた。


「あ……涼平……」


「今度は上でイカせてやる……良いな?」


「い、れてよぉ」


「焦るなよ」


 俺は華鈴の乳房を濃密に弄び、彼女を何度も愛の絶頂へと導いた。なお、その晩に恒元は夫人と寝ることになっていたので、たっぷりと楽しめた。


 営みを終えて華鈴が眠りに就いた後、俺は彼女の寝顔を見ながら物思いに耽った。この幸せは何があっても守り抜いてやる――必ずだ。


 それは決意ではなく覚悟だった。


「ずっと傍に居てくれ。愛しい人よ」


 俺はそう呟くと、華鈴の隣で横になって頭を撫でながら眠りに就いたのであった。


「……」


 数時間後、陽光が差し込むダイニングルームで俺と華鈴はアサイーボウルをスプーンでかき混ぜていた。そこには生憎ながら同席者が居た。


「いやあー、もうすぐ名字が『麻木アサギ』に変わる娘が『アサイーボウル』を食べるとは……ふふっ」


「お父さん、駄洒落にすらなってないよ」


「へへっ、すまんすまん」


 華鈴の父、雅彦氏である。彼が毎日のごとく各所を飲み歩いて適当な時間に帰ってくるためにすっかり忘れていたが、華鈴は父親と二人暮らしだったのだ。


「涼平君。どうか娘を頼んだよ」


「ああ。必ず」


「しかし……まさか、あの伝説とまで謳われた麻木光寿のご子息と娘が結婚するとは。世の中、何が起こるか分からないものだよ」


 雅彦氏の言葉には少しばかり複雑な想いがこもっていた。俺は彼の気持ちを推し量った。


「組合長、俺が華鈴を幸せにする。だから……」


「いや、良いんだ」


 俺の言葉を遮った雅彦氏は、少し物悲しげな眼をしながらも俺に言った。


「娘は根っからの不良で、大人になってからも喧嘩っ早くてね。嫁の貰い手が見つかるかどうか、困ってたんだよ。だから君が華鈴を幸せにしてくれるというのなら、これはまさに願ったり叶ったりさ」


「娘を殺し屋の嫁にしても良いってのか」


「ははっ。行き遅れるよりはマシさ……正直な話、もう僕も歳だ。酒浸りの人生で体はとっくに限界を超えてるわけだし、自分が居なくなった後で誰が娘の面倒を見るのかって話が至上命題になるのは当然だよ」


 雅彦氏の口調はやや冗談めかしたものだったが、その目は父親として娘の幸福を願う純粋なものだった。


「もう、弱気なこと言わないでよ。そんなんじゃまたお母さんに『アル中クソ野郎』って馬鹿にされるよ」


「ああ、そうだったな」


「少しはお酒の量を減らしなよ。もうお父さんは若くはないんだしさぁ」


 何だかんだ言って父親想いの娘に恵まれて雅彦氏も幸せ者である。そんな彼は空になったボウルにスプーンを置いた。


「それじゃあ、僕は今から仕事に行くよ。二人の式を心から楽しみにしているよ」


 雅彦氏の言葉には優しさが感じられた。俺が肯首すると彼は安堵した表情を浮かべ、玄関へ向かった。


「じゃあ、またな」


 靴を履いて玄関を開けると、彼はそこで足を止めて、俺に振り返りながら言った。


「華鈴を……愛してくれよ」


「言われるまでもねぇよ」


「それと……そろそろ『組合長』じゃなくて『お義父とうさん』って呼んでもらえるかな」


「おう、お義父とうさん」


「いやあ、良い響きだねぇ。夢だったんだよ、娘が連れてきた婿にそう呼ばれるの……あ、孫が産まれたら呼んでくれよ?」


「ははっ。呼ぶも何も、俺はこれからもこの家と宮殿の二拠点生活だぜ」


 俺はそう答えてから雅彦氏に手を振った。そして玄関の扉が閉まるや、残りの朝食を摂り終えて歯を磨き、華鈴に言った。


「んじゃ、俺も行ってくる」


「うん。気を付けてね」


「ああ」


 玄関で革靴に履き替えて外へ出る。今日、2006年7月20日は定例理事会が催されることになっている。さて、式の日取りは何時いつに決まることやら――俺はやや胸を躍らせながら宮殿へ向かったのであった。


 同日、14時20分。


 俺は定例理事会が執り行われている会議室のソファに腰かけていた。案の定というか何というか、心なしか空気が緊迫していた。


「どうかお考え直しください、総帥! 関西や九州とのドンパチも続いてる上に椋鳥も未だ討ててねぇってのに、呑気に儀式なんかやってる場合じゃありませんぜ!」


 俺と対角線上の位置から反論に吠えるのは、理事で『原興業』組長のはら吉邦よしくに。山梨県の大月辺りを仕切る中堅だ。


「気持ちは分かるがな、原よ」


「私情で申し上げているわけではありません!」


 原が反対をぶち上げているのは云うまでも無く、俺の結婚式を8月中に開催するという案について。


「今、ここで派手な儀式なんざ開催した日には、連中の格好の標的になりますよ!? 『どうぞ攻撃してください』と言ってるようなもんじゃねぇですか!」


「それは重々承知している」


「だったら何故、8月中に開催しなければならないんです? 今、組織は三方向と一触即発の状態にあるってのに呑気に式だ何だと……」


 原がそう反論すると、彼の隣に座っていた理事の1人が口を開いた。彼は原とは真逆に落ち着いた口調で俺に言った。


「麻木よぉ、おめぇさんはどう考えてるんだい……よもや自分の結婚式ごときで恒元公を危険に晒すのを是とするわけじゃねぇよな? 成り上がりの若造だが、そこまでのクズじゃねぇと俺は信じてるぜ?」


 まったく、埼玉の片田舎を仕切る己とて、恒元の引き立てにより理事の地位を得た成り上がり者であろうに。俺は失笑を堪え、井上に向き合った。


「俺に『考え』なんてものはぇ」


「ああ?」


「恒元公のご意思こそが俺の考えだ。そんな簡単なことも分からんとは、これだから田舎ヤクザは嫌いだ」


 その発言に「んだとぉ!?」と激昂する井上を制して恒元が口を開いた。


「うむ、流石は涼平。よくぞ言ってくれた」


 恒元は感心するように「それこそが我輩に仕える男としてあるべき姿だ」と頷いてから、言葉を継いだ。


「麻木涼平の結婚式および披露宴は8月8日の開催とする」


「な……っ!」


「これは御教である」


 恒元の宣言に原は絶句し、井上も驚きを隠せなかったようだ。常識的に考えれば彼らの言うことこそが正しい。


 それが分かっていたために、俺は恭しく頭を下げる一方で心情が複雑な色に染まっていた。原や井上の懸念通りに敵対勢力が攻めてきたら、その時は華鈴を守り切れるか――いや、悩むまでも無い。


 守ってやれば良いだけだ。鞍馬菊水流伝承者として命と誇りを懸けて。


「皆、何か異論はあるか?」


「……」


「では、以上で本日の定例理事会を終了する。解散」


 恒元の一声によって会議が終了。理事たちは部屋を出て行った。


「……まったく、恒元公の麻木贔屓には困ったもんだぜ」


「関西じゃ酒井組と原田一家が神戸を攻めあぐねてるってのに。原田に至っては煌王の爆弾突撃で相当な数の犠牲が出てるって話じゃないですか」


「おまけに九州じゃ玄道会の残党を潰しきれずにいる。麻木が見繕った自称武闘派の親分衆が無様なもんだぜ」


 会議では少しも発言をしなかった理事長が、控室から出てきた側近と話している声が聞こえた。この男も憎たらしいものだ。


 一方、同じく無言を貫いていた門谷はと云えば、表情を少しも変えぬままそそくさと宮殿を後にしてゆく。


「……」


 今や旧御七卿も白水、阿熊、大国屋、眞行路の4つに減少した。彼らは己が粛清の対象とならぬよう、身の振り方で常に頭を悩ませていることだろう。


 現時点で用心すべきは理事長と門谷の動き――そんなことを考えながら俺は恒元の執務室へ呼ばれた。女中が淹れた紅茶を二口ほど飲んで暫く経った頃である。


「涼平よ。お前は婚礼の日取りについて如何に考えておる?」


「万事、恒元公にお任せいたしますので俺からは何にも」


 俺は即答した。


「では……明日でも構わぬか」


「ええっ、明日!?」


 意表を突いた。てっきり来月だと思っていたが、いくら何でも早急すぎではないのか。


「早急ではあるが、あの間抜けどもに泡を吹かせるには丁度良い。お前も披露宴については全て準備を終えているのだろう?」


「え、ええ。問題はありません」


「うむ。では明日、婚礼の儀と披露宴を行う……良いな?」


 俺は「はっ」と短く答えた後、一礼して執務室を出た。そして自室に戻るとソファに腰かけて窓の外を見つめた。


 よもや恒元が直参たちの忠誠心を測る道具として俺の結婚を用いようとは。早い話が結婚式に参列した者は生かし、そうでない者は「不忠」とみなして粛清しようというのである。


 フィクサーのお呼びとあらば各省庁の幹部職員や政治家、芸能人たちは無理をしてでも顔を出すだろうが、直参たちは何人来ることやら――だが、それ以上に気がかりだったのは関西と九州の情勢だ。


 先ほど理事長が語っていた通り、関西では中川会の苦戦が続いている。やはり煌王会お得意のゲリラ攻撃に晒されて酒井組と原田一家は堺から動けず、神戸を攻める村雨組の兵隊も悉く返り討ちに遭っていると聞く。


 進撃が思うようには行かないのは九州も然りで、各地に散らばる玄道会の残党たちは、俺たちが遣わした名うての親分たちを相手に巧みな戦いを繰り広げている。


 街をひとつ手に入れても敵の事務所はもぬけの殻、連中は身を潜めて一撃離脱の奇襲に徹している。これにより我らが派遣軍は戦費だけがかさみ、いつまで経っても敵を殺しきれぬ焦燥感から若衆たちの戦意も次第に低下してゆく。


 そんな折に俺の結婚式が急遽決められた。酒井組、原田一家、それから九州派遣軍の親分らは不参加を許されるであろうが、皆の忠誠心を測りたい恒元の思惑は却って逆効果ではなかろうか。


 俺は懸念が拭えなかった。


 その夕方、宮殿を珍妙な客が訪れた。


「ご無沙汰しております、恒元公」


 村雨組の若頭、菊川塔一郎だった。


「関西も落ち着かぬというのに、わざわざすまんな」


「いえ、ちょうど村雨と共にイギリスへ居りましたので。西での喧嘩にはノータッチですよ」


 曰く、中川会が村雨組に代わって横浜を仕切っていることへの礼をしに来たという。おかげで西方進撃に注力することが可能になっていると満面の笑みで語り、菊川は恭しく頭を下げた。


「その御礼の品と言ってはおかしいかもしれませんが、面白いものを持って参りました」


「何だね?」


「こちらです」


 菊川は指図すると村雨の組員が何やら大きな籠を運んできた。


「これはまた……鮮やかな鳥だな」


「ええ、小笠原諸島に棲息するヒイロアホウドリです」


「ヒイロアホウドリ……?」


「この個体は雄の成鳥ですね」


「ふむ……これを我輩に?」


 恒元は興味深そうに籠の中のヒイロアホウドリを見つめた。菊川は微笑を浮かべながら続けた。


「ええ、鮮やかな羽がお美しゅうございましょう。それだけでありません」


 そうして彼が指をパチンと鳴らすと、ヒイロアホウドリは低い声を発した。


『恒元公、万歳! 恒元公、万歳! 万物を統べる王に、栄光あれ!』


 名を呼ばれた万物の王は歓喜して手を叩いた。


「ははっ、この鳥は素晴らしいな! 芸まで仕込んであるとは!」


「ええ、ひと通りの言葉を教えてあります。うちの組の傘下の研究所で遺伝子編集も行っていますから長寿命でもあります……ずっと貴方様のお傍で鳴かせることも出来ましょう」


「うむ、気に入ったぞ! では、これはありがたく頂戴しよう!」


「ええ。では、我々はこれで失礼いたします」


 別れ際、俺を見てニヤリと笑った菊川たちが退室すると、恒元は早速、籠の中のヒイロアホウドリに話しかけた。


「鳥よ。我輩は麻木恒元である。貴様の名は何と云う」


 ヒイロアホウドリはすかさず声を発した。


『鳥よ。我輩は麻木恒元である。貴様の名は何と云う』


「ははっ! それはそうか! 人間の真似をして声を出せるというだけで、喋れるわけではないのだな!」


『ははっ! それはそうか! 人間の真似をして声を出せるというだけで、喋れるわけではないのだな!』


「まあ、良い。この宮殿にて飼ってやるとしよう」


『まあ、良い。この宮殿にて飼ってやるとしよう』


「お前は我輩に忠誠を誓い、我輩の命令には絶対服従するのだ。分かったか?」


『貴様は我輩に忠誠を誓い、我輩の命令には絶対服従するのだ。分かったか?」


「ふっ……声を聞いてから数秒足らずで復唱できるあたり、相当に賢いと見た。これからよろしくな。鳥よ」


 恒元は満足そうに頷いてから俺に言った。


「涼平よ。このヒイロアホウドリの世話を助勤どもに申し付けておいてくれ」


「はっ」


 俺の返事に恒元は笑顔で頷いた後、嬉々として執務室を出た。こうして部屋の中には俺とヒイロアホウドリが残されたわけだが……見れば見るほどに綺麗な鳥だ。翼の色は名のごとく全体的に緋色で、所々に薄い黄色と灰色が混ざっている。


「ヒイロアホウドリか……確か絶滅したんじゃなかったっけ?」


 俺は独りごちた。すると、その瞬間。


『生憎、少ない生き残りが居たのさ』


 声が聞こえた。


「誰だッ!?」


 反射的に銃を構えた俺。しかし、部屋には俺以外にはヒイロアホウドリしかいない。


「……」


 どういうことだ? 先ほど俺が口を滑らせたのをこの鳥が聞き取ったとでもいうのか?


『まあ、ボクは生まれも育ちも開科研だけどな』


 すると再び謎の声が聞こえる。だが、今度はハッキリと……まるで自身の翼を使って羽ばたきでもするかのように俺の脳にじかに響いたのである。


『何だ。お前、ボクの声が分かんねぇのかよ』


「……と、鳥が喋った!?」


『そうだ。今、お前と喋っているのは他でもないこのヒイロアホウドリ様だ。これだから人間は滑稽だよ。目の前の物事を常識の範囲内でしか認識できないのだからね』


 俺は目を瞬かせた。


「ヒイロアホウドリ……お前、化け物か何かか!?」


『化け物じゃなくて鳥だよ。ちょっと他より頭が良いだけのな。とりあえず落ち着けって』


 俺がようやく落ち着くとヒイロアホウドリは『ボクはな』と続けた。


『開科研の遺伝子研究で創り出された人工生物なんだよ。だから人の言葉を話すことが出来る。まあ、ボクが言葉を話せることはこの宮殿の王には内緒だがね』


「開科研……遺伝子研究……驚いた。まさかあのラボでそんなことまでやっていたとは。てっきり村雨組御用達の闇病院だとばかり思っていたぜ」


『ふん、開科研の存在自体は知ってるんだな』


「まあな。何度かあそこで怪我を治療してもらったことがある。ところでどうしてお前は中川会へ?」


『あの菊川とかいう男に言われたからさ、中川恒元って野郎を楽しませろと』


「あの人も何を考えてるんだか……」


 俺は肩を竦めた。人工的に生み出された賢い鳥を贈ってきた理由は、おそらく献上品の代わりだろう。しかし、ならば何故に言葉を話せることを恒元に隠すのか。


「……お前、スパイか?」


 するとヒイロアホウドリは『おいおい』と嘲るような声を出した。鳥だけに表情が変わらないのが何とも不気味だった。まさに異様な生物と対峙している気分だ。


『確かに昔から人間は鳥を情報伝達の道具に使ってきたけどさ、ボクにそんな趣味は無いよ。それにボクは人間に仕えたつもりは無いぜ』


「だったら何故、菊川の意で動いている?」


『ボク自身の意思もある……この目で人間の本能がどれほど愚かなものか確かめたいのさ。それが菊川って男の思惑とたまたま一致していたに過ぎない」


「お前の言ってることはよく分からん」


『人間ほど複雑じゃないだけさ」


「まあ良いさ。ところで、何故に喋れることは恒元公に内緒なんだ? バレたらまずい理由でもあるのかよ」


『そりゃ、バレたら殺されるに決まってるだろ。ああいう手合いは人間より優れた生物を嫌うからな。尤も……目の前で喋ったところで幻覚だ何だと決めつけて相手にしないだろうが』


 その言葉に「聞かなかったことにしておく」とだけ返し、俺は執務室を出た。この奇妙な鳥と深く仲を深めても良いことは無いような気がしたのだ。あくまでも総帥のペットとして接するのが良いだろう。


「……」


 言葉を話す鳥とは、世の中には不思議なこともあるものだ。しかし、東欧で傭兵稼業に従事していた頃に聞いたことがある。医学や生命科学が日米とは比べ物にならぬほど発達していた旧ソ連では、動物の知能を人間並みに強化する研究が行われていたと。


 村雨組が資金を注いでいるだけあって、横浜の開発科学研究所では常識をはるかに超えた研究が日夜行われていることは想像に難くない。その水準が西側諸国で軒並み嫌悪された旧ソ連の技術に追いついていると考えたとて、何ら不思議にあらず。あのヒイロアホウドリも、そうした狂気の産物なのか。


「……いや、さすがに開科研はそこまでやっちゃいないか」


 独りごちて俺は宮殿の廊下を歩いて詰め所へと向かう。


 結婚式が前倒しになったとあっては、色々と忙しくなる。各所への連絡やら挨拶やらは思いのほか長引き、全ての業務が終了したのは21時を過ぎた頃だった。


「ふう」


 背伸びをするや息が漏れる。


 夕飯がてら華鈴の元へ向かった際、彼女は驚いていた。曰く、ウェディングドレスを美しく着るための体づくりが途中までしか済んでいないという。


 けれども全てが総帥の意向だと伝えると彼女は「分かった……」と納得してくれた。あの暗黒の帝王に尽くすことこそが夢を叶える唯一の道だと悟りきった表情で。


 まったく、華鈴にも無理をさせているな――少しばかり気分が下を向いた。鬱屈さに情念を支配されることを嫌った俺は、気付けば外へ出ていた。


 おそらくは気分を換えようとしたのだろう。


 ほぼ無意識のうちに錦糸町のバー『STRAY』へと足が伸びていた。このような場面で最も心を癒してくれる女に、誘いのメールを送った上で。


 雑居ビルの前に停まったリムジンを見るなり、俺はほくそ笑む。そして颯爽とドアを開けた。


「……いらっしゃい」


 やや睨むような視線を寄越してきたマスターは、静かに言った。


「こちらでお待ちですよ」


 彼の視線の先、カウンタ―に腰かけていた妖艶な美女――藤城琴音は俺を視界に入れるなり頬を緩めた。


「あらあら。嬉しいわね。独身最後の夜の相手に私を選んでくれるとは」


「ふふっ。まあな。お前の顔しか浮かばなかった」


「お上手ね」


 琴音はグラスに注がれたワインをひと息に飲み干して、「もう一杯」とマスターへ頼んだ。俺はその隣に腰かける。


「結婚おめでとう、涼平」


「ああ。ありがとう」


「まさかあなたがこんなにも早く華鈴ちゃんと結婚するとは思わなかったわ……」


「おいおい、恋多き男に結婚は似合わねぇとでも?」


「恋多きって、華鈴ちゃん以外じゃ私だけでしょう」


「まあな」


「うふふっ、可愛い人」


「お前もだぜ、琴音」


 俺たちは引き寄せ合うように接吻キスを交わした。こんな琴音も子持ちのシングルマザーだ。俺より人生経験が長いだけあって彼女の体は様々な恋の味を覚えている。


 この女は中川恒元の妾――そんな憂鬱な事実すらも情愛は悉く忘れさせてくれる。妻ではない女に独占欲を燃やすなど野暮だ。関係性を如何に定義付けするかより、昂った夜を満たす方が大切なのだ。


「……あなたのキスは優しいわね」


 唇を離した琴音はうっとりとした表情で囁いた。


「そうか?」


「ええ、とっても……こんなキスを毎晩のようにしてもらえるなんて、華鈴ちゃんも幸せな娘ね」


 その瞬間、琴音の瞳に哀しみの色が躍った様子を見て俺は確信した。日頃、恒元が彼女をどのように愛撫しているのかを――真っ白なブラウスの開いた胸元から覗く鎖骨付近の痣や傷痕が、全てを物語っていた。爆発するがごとき欲動に呑まれ、俺は琴音を抱きしめた。


「ぁ……」


 彼女の首筋に顔をうずめた途端、軽く触れただけで俺の脳を溶かすような甘い吐息が漏れる。琴音の乳房は俺の胸板に当たり、その弾力とともに心地良い感触を伝えてきた。


 やがて俺は彼女の首筋に唇を這わせた。


「……ん……っ……あ……はあっ……んっ」


「琴音」


「……な、何?」


「いや、何でもない」


 俺は言葉を飲み込んだ。この関係に名前など要らない。ただ、目の前の女が愛しい。それだけで、満ち足りている。


「今宵はとことん酔わせてくれ。ぶっ壊れるくらい、お前の体温を感じたい」


「もうっ……これ以上に熱くなれるほど私が燃えるように見えるのかしら?」


「ああ。今の俺をどうにかできるのはお前しかいない」


「うふふっ。嬉しいわ」


 それからも琴音はよく飲んだし、俺も注文したバーボンをチビチビと飲みながら彼女を愛し続けた。また、接吻を交えながら彼女の体を優しく愛撫してやれば彼女はすぐに艶やかな声を漏らし始めた。


「ぁ……ふ……んんっ……んっ……」


 そんな中で俺は琴音に本音を吐露した。酒の勢いも手伝ってか、次から次へと言葉が漏れてくる。


「……華鈴を幸せにしてやれる自信がぇ。どう見栄えを良くしたところで、俺は血で染まった殺し屋だ。そんな男と一緒になって、いっぱしの幸せを掴めるわけがない」


「ふふっ。大丈夫よ」


 しかし彼女はその不安を一笑に付した。


「華鈴ちゃんにとって涼平は白馬に乗った王子様なの。あなたが居れば、何も要らないはずよ」


「そうは言っても、だ。現に俺は華鈴の夢を何ひとつ叶えてやれてねぇ……総帥に媚を売って、あの人に言われるがまま暴れることしか出来ねぇ」


「良いじゃない」


「え?」


 思わず琴音の顔を覗き込む。すると彼女は優しい笑みを浮かべた。


「華鈴ちゃんはあなたが夢を叶えてくれる人だから好きになったわけじゃないのよ。いつも一緒に居てくれて、自分のために頑張ってくれる、そんな男に女は惚れるのよ」


「……」


「だからあなたは、そのままでいてあげて。それだけで良いのよ。彼女はあなたの傍に居られることを幸せだと思っているはずだから」


「……そうか」


 俺はグラスに残っていた酒を飲み干した。琴音の言葉を肴に呑むバーボンは今まで嗜んだ如何なる酒よりも美味かった。


 自然と心が上を向いてくる。憂いが一気に消えていった。気付けば、またもや琴音を強く抱きしめていた。


「ありがとな、琴音。お前のおかげでスッキリした」


「うふふっ」


「見失いかけてたもんを見つめ直せた気分だ。あれこれ難しいことは考えねぇで、ただ愛の赴くまま動けば良いんだな」


 琴音は大きく頷いた。何とすれば華鈴を幸せに出来るか。考えるべきはそれだけで良いのだと。


「何か悟りを開いたって顔してるわね、涼平」


「へへっ、まあな」


「だったら、お礼に私のおねだりを叶えてちょうだい」


 子供のように笑った琴音に「ああ」と応じると、彼女に手を引かれて店の奥の小部屋へ連れ込まれた。


「おい、琴……んんっ!?」


 そして、俺は唇を塞がれた。彼女の舌は蛇のように動き、俺の口内を蹂躙する。


「うふふっ、涼平ったら。もうこんなになってる」


「お前……っ」


 気付けば、俺はズボンのファスナーを開けられ、下着越しに男根を撫でられていた。


「しましょ?」


「お、おい……」


 琴音は妖艶に微笑んだまま俺のベルトを外してズボンを卸し、下着をずらした。そしてシャツまで脱ぎ除けると、自らもブラウスのボタンを外し始めた。


「へっ、もうすぐ結婚する男だぜ」


「うふふっ、何を今さら。ほら、お好きにどうぞ」


 琴音は既にブラジャーをも脱ぎ捨てていた。その乳房は恐ろしく大きかったが、白い肌は美しく瑞々しさを維持している。


「ね……?」


 切れ長の目で誘われた刹那、俺は琴音を抱き寄せた。


「好きだ」


 そして彼女の乳房にしゃぶりついた。


「んっ……あっ……」


 俺は琴音の胸の頂を舌で転がしながら、もう片方を優しく揉む。すると彼女の体はピクンと跳ねた。


「あっ……ん……」


 琴音は甘い吐息を漏らした。その反応が愛おしくなって、俺はさらに愛撫を激しくする。同時に、勢いよく唇で吸い上げた。


「んぁぁあっ……」


 彼女は背中を反らし、体を震わせる。


「あはっ……もっと……オッパイ吸って……」


 俺は琴音の乳肉を貪った。


「んっ……あっ……あぁっ……」


「琴音、可愛いぜ」


「……うふふっ、ありがとう」


 お返しとばかりに彼女は俺の男根を優しく撫で回しながら、舌で俺の首筋を舐めてきた。


「ん……ちゅ……」


「うおっ!?」


 思わず声が出た。彼女の舌はうねるように動きながら、俺の首筋を這っている。


「お、おいっ!」


「うふふっ」


 次第に、俺の男根をまさぐる琴音の手つきが勢いを増してきた。この刺激は強い……負けてなるものか、俺も意地になって乳首を舌で愛撫する。俺が上下の唇で挟み込んでコリコリと滑らかに弄り回してみると、彼女は悲鳴にも似た艶やかな声を上げた。


「あんっ、あっ……んぁっ!」


 次の刹那、琴音は体をビクッと震わし、俺は下半身から込み上がる凄まじい快感に見舞われた。


「はあっ、はあっ」


「あぁんっ……うふっ、良かったわよ」


「こっちもだ。やっぱりお前は素晴らしい」


 俺は琴音を強く抱き締めながら、再び接吻を交わした。彼女を愛したい気持ちがこれ以上無いほどに高まる。


 彼女が口を離すと、ふたりの間を透明な糸が引いた。俺がそれを舐め取ると彼女は俺の耳元で囁いた。


「ね……しよ?」


「……おう」


 彼女は俺をソファに押し倒した。そしてアルコールの勢いに呑まれ、互いを激しく撫で合ったのだった。


「はあっ、はあっ……」


「ああ……」


 何度の絶頂を迎えたかは分からない。噴き上がる快楽の波で、思考が麻痺していたらしい。


 それだけ俺たちの愛が深まっていたということだろう。着衣を戻して勘定を支払い、別れ際にキスをして店を出る琴音の背中をうっとりと眺めた。


「へっ、ちょっと飲みすぎたかもな」


 そう呟いた刹那、グラスを拭いていたマスターが苦々しい目で声をかけてくる。


「……調子に乗りすぎじゃねぇですか。結婚前夜だってのに」


「前にも言ったはずだぜ。俺は恋に寄り道をしてるつもりはぇ。どっちも等しく愛を注いでいる」


「そんな気障な台詞が吐けるのもぼっちゃん……いや、その、夏目漱石の影響ですかい?」


「さあな」


 少し鼻を鳴らした後、俺は率直に尋ねた。


「あんた、麻木光寿の部下だったろ。ガキの頃、俺を『坊ちゃん』と呼んでいた人間が川崎に居た気がするんだ」


 するとマスターは少しの間を入れた後でゆっくりと言葉を紡ぎ出してきた。


「……ご想像にお任せしますぜ」


「そいつは麻木光寿の倅を前にしての言葉か?」


「ええ」


 マスターの声色に頑なな意思を悟った俺は、それ以上に尋ねることを避けた。まあ、川崎の獅子の部下だったとすれば今の俺の姿を嘆いていてもおかしくはないからな。


「そうかよ。んじゃ、また飲ませてくれ」


 失笑と共に店を出た後は、宵の風に吹かれ、暫し酔いを覚ましながら歩いた。


 時刻は既に0時を過ぎている。そのまま帰路につくつもりだった。


 しかし、繁華街の光から離れつつある歩道橋の階段を上がっている途中で、ふと人影が視界に入った。


「あれは……」


 数人のカラフルな装いの男女が、ブレザー姿の少女に群がっている。どうやらポン引きのようだ――少女は黒のツインテ―ルを両側に垂らし、眼鏡をかけている。口元にはマスクをつけているため表情は窺えないが、露出した顎の輪郭を見るに身長は150センチにも満たないのだろう。そのどこか弱々しさを感じさせる横顔は、さながら御伽話の眠り姫だ。


「ねぇねぇ、少しくらい働いてみなよ」


「そうそう! めっちゃ待遇が良いからさぁ!」


 少女はあからさまに嫌がっている。


「や、やめて……」


 その声はか細く、戦場で鍛えた超人的な聴覚を持つ俺でなければ聞き逃していたことだろう。当然、カラー・モブと思しき集団は少女を掴んで離さなかった。


「いやーん、声も可愛いよぉー」


「この辺の高校生なんてウブな子しかいないんだからさー」


「ちょっとくらい働いてよ。ね? ね?」


 その下卑た声に、俺は思わず顔をしかめた。


「……カス野郎どもが」


 そして、俺は少女に群がる不良どもに近付いた。すると奴らは一斉に俺へ視線を移す。


「あぁん?」


「何こいつ?」


「邪魔しようってのか?」


 ところが、次の瞬間。


 ――グシャッ。


 全員が吐血し、その場に次々と崩れ落ちた。


「ぐああああっ……」


「な、何なんだよ……」


「体が砕ける……」


 超高速で突進をかけた俺が、全員に掌底を打ち込んだのである。すかさず奴らを見下ろして凄んだ。


「急所は外した。とっとと消えろ。中川会を敵に回さねぇうちにな」


 鼓膜を揺らした『中川会』という単語に恐れ慄いたらしく、不良たちは痛む体を気にせず泣き喚きながら逃げて行った。


「大丈夫かい。嬢ちゃん」


 そう言って振り向いた時には、既に少女の姿は無かった。


「……」


 まあ、当然と云えば当然か。苦笑を吹き出すと同時に俺は煙草に火を付ける。ヒーローを気取るつもりは無いが、少しくらいは感謝してくれたって良さそうなものだが。


「……しかし、あいつらは何だ? どうにも見かけねぇ顔だったが」


 そう呟いた途端、俺は気配を悟って振り返る。背後から近づいていたのは意外な人物だった。宵闇の中で街灯に照らされた顔が少し不気味に見える。


「菊川さん?」


「やあ、麻木クン」


 そこには村雨組の若頭、菊川塔一郎が立っていた。相変わらず、一昔前の銀幕スターを彷彿とさせる端正な顔つきが映える男だ。


「どうした、こんなところで」


「ちょっとこの辺りの店で飲んでたんだよ。久々に都内を訪れたもんだからね」


 夕方に宮殿へヒイロアホウドリを献上した帰り道、ずっと遊興に耽っていたという菊川。曰く、組の手下たちは先に横浜へ戻したといい、一人で飲んでいたそう。


「丁度良い。せっかく会ったことだし、これから二人で飲まないか……と言いたいところだけど。生憎もうすぐ1時だからね」


「ああ、そうだな」


「飲むのはまた今度にしようか。何せ明日はキミの結婚式なわけだし


「まあな」


「でも、驚きだよね。よもやキミが嫁を貰う男になるとはね」


「……」


「弱者を救うだ何だという青い理想を掲げた、おおよそ極道らしくはない麻木涼平クンが結婚とはねぇ」


 菊川の不敵な笑みを視界に捉えた瞬間、俺はため息と共に言い返す。


「やっぱり気に食わん男だな、あんたは。会う度に俺を馬鹿にしやがる」


「だってそうじゃないか」


「あんたからすりゃ迷いを抱えてるように見えるかもしれねぇけどよ。俺は命を張ってんだぜ。惚れた女を幸せにするために」


 そう言い放った刹那、俺を見据える菊川の目が丸くなった。やがて彼は小さく静かに、なおかつ小刻みに頷いた。


「……面白いね」


「喧嘩を売っているなら上等だ。七日ほど起き上がれなくなる程度に買ってやるぜ」


「別に、ここでキミとやり合おうとは思っていないから安心してくれ。結婚式を明日に控えた花婿を病院送りにする趣味は無い」


「よく言うぜ」


 俺が息巻くと、菊川塔一郎は肩を竦めて笑った。


「でも、少し安心したかな」


「何がだ」


「キミがちゃんと稼業の男らしい顔になってるってことがさ」


「……は?」


 俺は首を傾げた。すると彼はなおも口を開く。


「もし、良かったらだけど。これから定期的に会って酒を飲まないか」


「願い下げだ。あんたと共に飲む酒が美味いとは思えん」


「僕なら、キミの良い相談相手になれると思うんだけどなあ。藤城琴音なんぞより、よっぽど上手いことを言ってやれる」


「へっ。何の話だか分からねぇな……」


 先ほど近くのバーで琴音と一緒に飲んでいた旨を彼は掴んでいるらしい。


 弱みを握ったつもりか――しかしながら、考えてみれば必ずしも嫌な申し出でもない。私情はさておき、村雨組の人間とパイプを築いておくのは恒元の都合に適う。


「……まあ、良いだろう」


 すると菊川は笑みを浮かべた。


「んじゃ、これから僕とキミは個人的な飲み仲間だ。『中川会の内情を教えろ』とは言わないから、そこは安心して貰って良い」


「当たり前だ。その台詞が飛び出た瞬間、あんたの首を捩じ切ってやるからな」


「ふふっ」


 俺は煙を吹き出しながら、近くに建っていたコンビニのスタンド灰皿に煙草を押し付ける。すると菊川も歩き出し、互いの距離が離れてゆく。


「……嫌な野郎だぜ。俺の何を分かってるってんだ」


 俺はそう呟いた後、帰路についたのであった。


 翌日。


 結婚式当日は雲ひとつ無い快晴だった。降り注ぐ夏の日差しが俺と華鈴の新たな門出を祝ってくれているかのよう。


「……あたしたち、今日から夫婦になるんだよね」


「改めて、よろしくな。華鈴」


 朝、華鈴の部屋で俺たちは接吻を交わす。これまでに何度も味わっているはずの想い人の唇が、今日はより一層美味しく感じた。


 これからますます美味しく、そして愛おしくなるのだろうと思うと自然と胸が高まり、ついつい時間を忘れて華鈴を抱いていたくなる。


「じゃあ、行こっか」


「……おう」


 俺は華鈴の手を握り、共に家を出た――向かったのは宮殿。教会で婚礼の儀式を行う前に、そこで二人して婚礼衣装を身に纏う手筈になっていた。


「いやあ、めでたい。涼平も嫁を娶り、いよいよ組織の今後を担うに相応しい男になる……今日はその記念の日だな」


 正装姿で居並ぶ幹部たちの仏頂面とは対照的に、恒元は上機嫌。彼が「幼い時分より目をかけておった町娘に妻の婚礼衣装を着せてやるのもまた良きことだ」と語ると、隣に立っていた当の夫人が苦々しく吐き捨てる。


「Je me demande comment tu peux penser à prêter ma robe de mariée à quelqu'un d'autre. N'as-tu pas le sens de l'honneur ?(よくもまあ私のウェディングドレスを他人に貸そうだなんて思うわよね。あなたには恥という概念が無いのかしら)」


 華鈴が大学にてフランス語を学んでいなくて本当に良かったと思った。


「では、支度をしたまえ。本当なら宮殿から教会まで道路を貸し切ってパレードでもやりたいところだったが、こいつが反対したのでな……」


「い、いえ。恐れ多いことです」


 恒元と夫人、それから幹部たちがぞろぞろと部屋を出て行った後で俺と華鈴はそれぞれ衣装に袖を通す。俺はタキシード、華鈴は純白のマーメイドラインのウェディングドレスである。


「はあ……やっぱり胸がきつい……」


「へへっ、似合ってるぜ」


「う、うん……」


 そうして俺と華鈴はリムジンに乗り込み、南青山の教会へと向かう。会場には既に多くの来賓が顔を揃えていた。


 藤代琴音の姿があったのは勿論、一流企業のトップたち、テレビで姿を見ない日は無いタレントたち、さらには政治家たちまでが名を連ねる。中には現職の大臣まで見かけた。


 昨日の今日でこれほど集まるとは。


 皆、恒元に何らかの弱みを握られているのだろう――そんな些末事はさておいて式が始まった。


「Alors, nous allons célébrer le mariage des deux personnes bénies.(それでは祝福されし二人の結婚式を執り行います)」


 フランス人の牧師が声を上げると、雅彦氏のエスコートで華鈴が入ってきた。ベールを脱がすや俺は花嫁に見惚れ、思わず息を飲んだ。いつにも増して艶やかな彼女は、やはり天女のような美しき雰囲気を持っている。その恥じらいを含んだ笑顔は宝石のように美しく、この世に二つと無い輝きを放っていた。


「C'est là que nous allons faire la cérémonie.(ここで結婚の儀式を行います)」


 そして、華鈴が俺の前に立った。牧師が俺に尋ねる。


「Alors, cher marié. Promettez-vous d'aimer la mariée dans la santé comme dans la maladie ?(では、新郎よ。あなたは健やかなる時も病める時も、新婦を愛すると誓いますか?)」


 俺はフランス語で答えた。


「Je jure.(誓います)」


 すると今度は牧師が華鈴に尋ねる。


「Alors, mariée, jurez-vous d'aimer le marié dans la santé et dans la maladie ?(では、新婦よ。あなたは健やかなる時も病める時も、新郎を愛すると誓いますか?)」


 前もって教えておいた台詞を思い出すような表情を見せた後、華鈴は答える。


「Je jure(誓います)」


 俺たちの意思を確認した牧師は言った。


「Alors, veuillez faire un baiser de promesse.(では、誓いのキスを)」


 華鈴は俺に近付き、そっと唇を合わせてきた。その柔らかな感触は、俺の心拍数を一気に上昇させた。


「……ん」


「これで……俺たちは夫婦か……」


「うん。これからも、よろしくね」


「おう」


 俺は華鈴の体を抱き締めた。会場に拍手と歓声が上がる中、彼女の体温と匂いに包まれ、この上ない幸福を実感したのであった。


 それから、桜月堂庭園に移動して披露宴が行われた。この宴には関東甲信越、それから九州と東北から集められた全ての直参組長が顔を揃え、恒元が皆に檄を飛ばす。


「この世界は権力と暴力が全てだ。我々がこの日本を牛耳り、世界へ打って出る日もそう遠くない。皆、心して日々の業務に励むように」


「今や我輩の息子とも云うべき涼平の結婚式に皆が集まってくれたこと、心より嬉しく思うぞ……我々がこの国を全て牛耳り、世界へ打って出る日もそう遠くない! 皆、これよりは一層の奮励努力を頼みたい!」


「うおおおおおおおっ!!」


 構成員たちが雄叫びを上げる中、俺はバックステージへ歩いて一時の物思いに耽る。


 結婚式にかこつけて敵対勢力が攻撃してくる展開には至っていない。だが、ここへ参列した親分たちの中には関西や九州へ派遣されている者も居る。


 恒元が呼んだのだ。『何があろうと必ずや参列せよ。顔を出さぬ者は謀反を企てているとみなし粛清する』と彼が言ったからだ。


 戦線を離脱して宴に集うなど、常識的に考えればまったくもっておかしい話。元フランス軍人の恒元ならその辺りのことは分かっていように。


 だが、彼は無理を承知で全ての構成員を東京に集めたのである。皆の心に自分への忠誠心が燃えているか否かを測ることを優先したのだ。


 無論、これについて俺が諫言することは無かった。


 何故なら、下手に意見して恒元の怒りを買おうものなら華鈴との幸せが壊されてしまうから。彼女と共に生きることが、今の俺の生きる意味なのだから。


「……これで良いんだ」


 そう呟くと、不意に声が聞こえた。


「狂っておるな。誰も彼もが」


「えっ?」


 ふと感じられた闘気にギョッとして振り向くと、そこには村雨耀介が立っていた。


「む、村雨さん……来てくれたのか!?」


「当然であろう。文句の一つでも浴びせてやらねば気が鎮まらぬわ」


「へっ?」


「互いの命運を分かついくさに挑んでいる時に、斯様な宴で兵を引き揚げるなど言語道断。おかげで西国の形勢は一気に煌王へと傾くぞ」


「すまねぇ」


「尤も、今のお前に申したとて詮なきことであるがな。今のお前にはな」


 まるでひどく嘆いているかのように、村雨は俺を鋭い眼差しで睨んできた。俺は結婚式で浮かれていた気分が一気に冷める。


「……」


「まあ、私とて今の今まで異国にったのだ。その立場で何を申したとて恒元公はお笑いになろう。折角のお前の祝言に水を差しても無粋ゆえ、此度は帰ると致そう」


 そうして「妻を慈しむのだぞ」と言い残し、村雨は去って行った。


「……」


 一体、彼が何を言いたかったのか――頭の中では自ずと分かった。けれども自分を省みる気にはなれない。


 何故なら、そんなことをして恒元に盾突こうものなら華鈴との幸せが崩れ去ってしまうように思えたから。


 些末事を考えているうちに会場が盛り上がりを見せていたので俺は席へと戻る。


「涼平?」


 少し不安げな表情で華鈴が俺を見た。お色直しを終えた彼女はピンク色の装いに体を包んでいた。大きく開いた胸元に薄らと浮かぶ汗すらも愛おしい。


 この女は俺のものだ。


 彼女を味わいたい。


 もっと。もっと。


 華鈴が隣に居てくれれば、俺は血まみれの天使から人間へと戻れるのだから。ああ、どうかもっと俺を抱きしめてくれ……!


 ああ、いけない。華鈴が魅力的すぎるあまり、つい間の抜けた表情をしていたな。俺は慌てて笑顔をつくって見せた。


「すまん、ちょっと席を外してた。これから余興が始まるみてぇだな」


「う、うん。本庄組お抱えのイリュージョニストだって」


「へえ、そいつは楽しみだ」


 俺は華鈴の手を取りながら、そう呟いた。強く、強く握りながら。目を逸らすように、暫し二人で幸せと云う時間に酔いしれていた。

ついに愛しい女――華鈴と夫婦になった涼平。二人の行く手に待つものとは……? 次回、衝撃の新章開幕!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ