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鴉の黙示録  作者: 雨宮妃里
第13章 狂気のさえずり
227/261

三つ巴の読み合い

 2006年2月11日。


 俺は中川恒元に随行し、北陸地方の田舎町を訪れていた。新潟県村上市。人口5万人弱、広さ318平方キロメートルのこの町は江戸時代に北前船の寄港地として栄え、かつては「北国の小京都」とも呼ばれていた風光明媚な街並みが美しい。だが平成以降は過疎化が進み、人口減少が止まらない。町のメインストリートを歩いても数人しか見当たらぬほどである。


 ところが、この町を訪れる観光客は多い。彼らの目当ては特産品のさけ。村上の鮭は「塩引き鮭」として多くの人々に好まれており、全国でも屈指の美味さを誇る。旬の時期には、この名物を目当てに海外から渡ってくる美食家も居るという。


 そんな町の外れに『滝のぼり』という屋号の日本料理店がある。坂町駅から歩いて5分ほど進んだところにある洒落た外観の店で、大正時代から続く料亭にしては珍しく全席テーブル席の個室というスタイルなので密談を催すにはぴったりだ。


「この『滝のぼり』はな、涼平」


「はい」


「我輩の父、恒澄が軍人だった頃から懇意にしていた名店でな。ここの鮭料理の味に惚れ込むあまり、中川会を興してからは真っ先に新潟を手に入れようとしたくらいだ」


「それはまた……凄いですね。初代恒澄公がそこまでご贔屓にされていた店の味を味わえるとは光栄に思います」


 そう云うと恒元はくつくつと笑う。


「うむ。良いことだ。我輩も父と同じく鮭に目がない男なのだ」


 恒元は俺の肩をポンと叩いてから店内に入っていったので俺も続こうと歩き出す……と、その前に声をかけておく。


「お前ら、手筈通りに頼むぜ」


 恒元の護衛で俺と共に村上市へ赴いてきている酒井や原田たち執事局の面々だ。俺に目を合わせると、彼らは豪快な返事をする。


「ええ。分かってますよ」


「任しといてくださいよ! 兄貴!」


 俺の言葉に反応したのは本家の連中だけではない。


「村上は手前どもの庭でございますんで、敢えて今日この時にちょっかいをかけてくる間抜けは居ないでしょうよ。どうぞごゆるりとおくつろぎください」


 村上市を含めた新潟県の南半分を仕切る直参『京谷きょうや興業こうぎょう』だ。彼らは恒元の覚えもめでたく、特に組長の京谷きょうや俊樹としきは若手のホープと目されている。


「麻木次長、ご武運を」


 古風な挨拶で深々と頭を下げた京谷組長だが、その年齢はなんと17歳。渡世のしきたりや礼節に精通しているというのに鮎原よりも年下だ。彼のような少年が親分として組を引っ張っている光景は直参を完全世襲制とする中川会ならではのことだろう。


「ふっ、まだ世間的には高校生かそのくらいの年齢だってのに大したもんだよ」


「いえいえ、とんでもないことでございます」


「あんたみてぇな若造が親分をやってるってんだから中川会は面白いもんだ……おっと、いけねえ。つい口が滑ったな」


 俺がそう云うと京谷組長はくすりと笑う。


「いえ、お気になさらず。確かに私はまだ未熟です。しかし父や祖父のように立派な親分になれるよう日々精進しております……いずれは麻木次長、あなた様のように20代で幹部の椅子に座れるようにね」


 流石、親からの世襲とはいえ10代で組長の座に就くだけの器量はある。俺の揶揄いに揶揄いをもって返してくるとは。


「おいおい。俺は幹部じゃねぇぜ。立場的には会長の秘書みてぇなもんで、理事会での発言権はぇんだからよ」


「だが、あなたは今の組織の運営を事実上仕切っておられる。理事の職でなくとも、中川会にとってなくてはならない御仁であることは間違いないでしょう。それに」


「ん?」


「あなたは恒元公の腹心。影響力は理事以上と見ても過言ではない。その若さでそこまで上り詰めたあなた様を15歳で組を継いだ私が尊敬しない理由はありませんよ」


 俺は思わず苦笑した。京谷組長のこの言葉が単なる皮肉やお世辞でないことは、彼の目を見れば明らかだであった。この少年もまた、俺と同じく組織の中枢に食い込むべく牙を磨いているのだろう。


「へへっ。まあ、何はともあれ今日はよろしくな」


「はっ、お任せください。此度の会合は我らが三代目京谷興業一同、身命を賭してお守りいたします」


「頼むぞ。くれぐれも奴らとはいざこざを起こさねぇようにな。執事局の連中には俺から言ってあるが、念のため地元の連中にはあんたの口から……」


「昨晩から何度も言い聞かせてありますので、ご安心を」


「ああ、それなら良かったぜ」


 現状の直参組長のなかでは最も年若いながらも頼もしい京谷組長に笑みを返し、俺は店の玄関へ向かって歩き始めた。つい今しがた彼に伝えた『奴ら』とは今回の客人のこと。中川会の車が停まっている列の反対側で待機している黒塗りのセダンの群れを睨み、俺は呟いた。


「いざこざを起こさねぇでくれよ……」


 彼らは極星連合。ご存じ東北最大の組織で、我らが中川会とは昨年に事実上の抗争状態に陥った。今日はその手打ち交渉が催されるわけだが――会談場所を彼らの勢力圏に近い北関東の地域ではなく、わざわざこの新潟に定めた理由は他にもある。


 それは今回の会談には昨年の銀座継承戦争におけるもう一方の交戦勢力、村雨組も来ていること。つまりは中川会、極星連合、村雨組の三者が集う会合は皆々にとって本拠地から平等に離れた街の方が良かろうと恒元は考えたのである。


 されども、この話は恒元から所領の返還を持ちかけられた村雨組にとっては旨味があるものの、銀座の戦乱では何も手に入れていない極星連合には何のメリットも無いように思われるだろう。では、何故そんな状況で手打ちの提案に応じたのか? その答えは単純明快だ。


 銀座派兵の失敗により極星連合内部で非主流派のルサンチマンが爆発、今にもクーデターが起こりそうな情勢に陥っている。対外戦争にかまけている場合ではなくなってきているそうなのである。


「……ふっ、局長んとこの忍びたちが上手く煽ってくれたみてぇだな」


 俺はそう呟きながら店に入った。玄関で恒元と合流した後、女将らしき人物の案内で個室へ向かうと、既に客人らは到着していた。


「待たせてくれたじゃねぇか。中川さんよ」


 入室するなり睨みつけてきたのは見覚えのある男――極星連合理事長、神林かんばやし久義ひさよし。秋田での反乱鎮圧に失敗して殺された前任の人物に代わって台頭した男らしい。


 組織のナンバー2の彼が居るということは、会長である父から全権を委任されて交渉へ赴いたのだろうか。


「すまないね。神林さん。何せ、新潟まで車を出すのも一苦労だったものでね」


「ふん……それはそちらの都合だろうが。こっちはわざわざ新潟くんだりまで足を運んだんだ。せめて茶菓子くらいは用意しておくべきだったんじゃねぇのかい」


 微笑みを浮かべたまま席に着いた恒元に久義が舌打ちを鳴らす。すると円卓にて彼らの向かい側に座っていた男が声を上げた。


「刻限に遅れ、我らを待たせたのは由々しきこと。されど此度の主旨は新たな火種を作ることではなく、我らで和議を結ぶこと。神林殿のお気持ちは分かるが、そうカッカなさるな」


 腕組みをするこの偉丈夫の名は村雨むらさめ耀介ようすけ。昨年の銀座継承戦争に輝虎派征討の大義の下で参戦した男だ。彼は久義とは対照的に穏やかな口調で続ける。


「それに我らは手打ちに応じたのだ。中川殿に無礼をはたらく義理は無いはずだぞ」


「しかしだな!」


「落ち着けと申しておるのだ! 神林殿!」


「……っ」


 裏社会で「残虐魔王」の異名で恐れられる超武闘派組長。温室育ちの神林久義がたじろぐのも無理はない貫録だった。


 また、肝を冷やしたのは俺もまた同じ。ふと前を見れば、村雨の視線が俺に向いていたのだから。


「……涼平。お前も参っておったか」


 だが、ここで臆していては格好がつかない。俺は中川恒元の側近、懐刀である。余人相手に縮こまっていて、何とするか。


「久しぶりだな、村雨さん」


 すると奴の声色が低くなる。


「ほう。『久しぶりだな』とは。少し顔を合わせぬうちに、この私に左様な口の利き方をするようになったか」


「まあな。あんたは俺の主君でもなければ義理の親でもねぇんだから。頭を下げる理由がぇのは分かるだろうよ」


 俺にしては珍しく、村雨に物を言うにあたって声が震えなかった。もしかすると、今までには無かったかもしれない。しかしながら、堂々と啖呵を切ってのけた口とは対照的に心臓はわなわなと痙攣してしまっていた……やはり、この男は恐ろしい。アポイントをつけるべく先週に村雨組へコンタクトをとった時も、手が震えて仕方がなかったくらいだ。


 そもそも俺は2年前にこの男を裏切っているのだ。おまけに、それを仕組んだ恒元もこの場に同席している。


 下手をすれば激昂した村雨に恒元共々殺されるかもしれない――いや、負けてたまるか! 俺は中川会の麻木涼平なのだ! いざとなれば残虐魔王とだって殴り合ってやろうじゃねぇか!


 なんてことを考えていた俺だが、意外にも村雨の反応は穏やかだった。


「ふっ、確かに」


「……えっ?」


「お前の申す通りだ。お前を我が子同然に扱っておったのは過去の話。今やお前は中川殿の腹心なのだ。無礼は畏れ多いな」


 俺は思わず拍子抜けしてしまった。村雨はそんな俺の様子を見て頬を緩めながら言葉を続ける。


「あの折は私も熱くなっておった。苦しい身の上であったお前にも辛い言葉をかけたな。この通り、許せ」


「……っ!」


「お前は中川殿の命に従っておったまで。その忠誠の心は大したものだ。流石は私が見込んだ男というだけのことはある」


「……止してくれや。あんたに世辞を言われると調子が狂うぜ」


 俺がそう返すと村雨はコクンと頷き、そして恒元の方に向き直って言った。


「中川殿。本題に入りましょうぞ。此度の会談は手打ちの約定を交わさんがためのものでしょう」


 すると恒元は目を細めたまま応じる。


「ああ。その通りだよ、村雨組長……昔話も尽きたことだし、さっそく宴に入ろうじゃないか」


 恒元がそう述べると俺にも着席を勧めた。だが、それに従って俺が隣に腰を下ろしたところで久義が口を開いた。


「……おいコラ、中川さんよ。今日は東北、関東、横浜の親分が集う格式ある会合なんだろ? その場に親分でもない若造が居合わせるのはおかしいんじゃねぇのかい?」


 かくいう自分も親分ではないくせに。恒元は半ば呆れつつも久義に穏やかに応じた。


「彼は我輩の護衛だ。ここに同席させて何の問題があるというのだね」


「大ありだろうが! そもそも、その若造は中川会の人間でもねぇんだろ? 部外者をこの場に入れるのが筋違いだってんだ!」


「筋違いとは。変なことを言うね」


「何が変だってんだ! このガキは2年前に極星連合のお膝元で大暴れしたんだぞ? あれはあんたの差し金だろう!」


「さて、何のことやら」


「とぼけてんじゃねぇ!」


 久義は止まらない。よもや感情的になるとは。


「大体よう、俺たちには『護衛は外で待たせて店には一人で入れ』と言ってきたくせに自分だけボディーガードを付けるのか? その時点で俺たちを舐めてるとしか云えねぇだろ!」


 だが、恒元は涼しい顔で切り返す。


「まあ、端的に云えばそうかもしれないね。少しきつい表現になるが、我輩は君たちを舐めている」


「んだとゴラァ! 俺たちが関東博徒に劣る田舎の土建屋だって言いてぇのか!」


「そうは言っていないよ。ただ、君たちが我輩と対等の立場だと思っていないのは確かだ」


「てめぇ……!」


 久義の顔が怒りで赤く染まる。一方、恒元の方は相変わらず余裕綽々といった様子だ。このやり取りを目の当たりにした村雨は呆れ果てたように首を振った後、静かに口を開いた。


「……神林殿。貴殿の気持ちは分からんでもないが、ここは抑えていただきたい」


「お前さんも黙ってねぇで何とか言ったらどうだ、村雨! このフランスかぶれ野郎は俺たちを見くびってんだぞ!」


 するとその場に「うるせぇぞ田舎者」と声が響いた。


「ああ!?」


 久義の顔がさらに怒りに満ちたものになる。何を隠そう、口を開いたのは俺なのだから。


「東北の親分さんよ、あんたは自分の立場が分かってんのか? おたくら極星連合は中川会うち討奸状かわらを出した眞行路輝虎と結託してた賊軍なんだよ! その賊軍の親玉が、わざわざ慈悲をかけてくださった恒元公に舐めた口利いてんじゃねぇ! こちとら今すぐにでも仙台を灰にしてやっても良いんだぜ? 負け組なら負け組らしく大人しくしてろや!」


 久義の目がさらに血走る。


「んだと若造……!」


 すると恒元がにっこりと笑って言った。


「神林さん、今の彼の言葉は是非とも肝に銘じて頂きたいね」


「この野郎っ!」


「座りたまえ。彼の言う通り、我々としてはいつでもいくさを再開できる。そうなったら困るのはあなた方だろう。秋田で反乱が起きていると聞いたぞ。ここは和議を結んで外敵の憂いを断った方が得策だ。そうは思わないかね」


「ぐっ……」


 久義は悔しそうに唇を嚙んだ後、どかっと腰を下ろした。一方、村雨の方は俺を興味深げに眺めていたのだが、やがて口を開いた。


「……涼平」


「何だ?」


「お前もなかなかに肝が据わったな。東北の大親分の倅を前にしても臆せず啖呵を切るとは。流石は中川殿が見込んだ男だ」


「へっ、よせやい。俺はただ思ったことを口にしたまでだ」


 そう返すと村雨はふっと笑った。そして彼は久義の方を見て言った。


「貴殿も分かったはずだ。我らは中川殿のお情けで和議の恩恵に預かれる立場。ましてや今の貴殿は東北の内紛で手一杯だろうに……ここは一つ、中川会の顔を立ててもらえんだろうか?」


 すると久義は俺をギロリと睨み、吐き捨てた。


「麻木涼平。今日のところは折れてやるが、極星連合はいずれ必ず巻き返す。テメェがこの世に居るってだけで関東を攻める理由になるんだ。いつかまた中川会との戦端が開かれたら、その時は真っ先に殺しに行ってやる。覚悟しておけ」


 そんな神林に「だから何だ、この野郎。そんなに死にてぇのか」と返した俺に村雨はまたも微笑を浮かべる。そして恒元に顔を向けて言った。


「さて、和議の条件についてだが……」


「ああ、そうだね。ではまず手始めに君たち極星連合にはこの話を呑んでもらいたい」


 恒元は鞄から一枚の紙を取り出すと神林の前に差し出した。その紙にはこう書かれている――太い文字で『秋田県全域を中川会へ割譲する』と。


「な、何だ!? このふざけた話は!?」


 机を叩いて立ち上がった久義に、恒元は笑みを湛えたまま応じる。


「ふざけてなどいないさ。秋田を差し出せば講和に応じてやると言っている。君たちにとっても良い話なんじゃないのか? 不穏分子が集結した秋田という病巣を丸ごと切除し、組織の立て直しに専念できるのだから」


「ふっ、ふざけるな! 韮建組を引き抜いたかと思ったら、今度は秋田を県ごと寄越せってのか……こんな条件呑めるか!」


「おや? ではこの話はご破算ということで良いのかね?」


「ぐっ……」


 久義は歯ぎしりしながら着席した。そして彼は村雨に向かって言った。


「……おい村雨! お前も何か言え! 天下の残虐魔王がこのまま良いように話を呑まされようってのか!? ああ!?」


 すると村雨は表情を変えずに応じる。


「先ほども申したはず。我らは中川殿にお情けをかけて頂いた立場、文句は云えぬと」


「腑抜けやがったか!」


「尤も、中川殿は私から何かを召し上げようとは考えておられぬようだがな。貴殿と違って私は賊軍ではないゆえ」


 彼の言う通り、村雨組は銀座継承戦争において輝虎方についていない。その逆で、輝虎を討つべく参戦したのだ。


「村雨さんよ、何か欲しいものはあるのか?」


 俺がそう話を振ると、村雨は「無い」と答えた。


「私が此度の戦に兵を遣わしたのは村雨組われらの若衆が傷付けられた復讐かえしとして輝虎を討つためであった。恒元公のお頼みに応えての出陣でなかった以上、恩賞をねだる筋は無かろう」


「へっ……そうかい」


 村雨らしい返答だ。ここは敢えて多くの見返りを欲しないことで恒元に借りを作ってしまう展開を防ぐねらいだろう。


 俺はその答えに満足し、そして恒元の方を見た。すると彼は言った。


「では、村雨組には輝虎が奪った湘南地域をこちら側の戦力の撤退が完了次第、返還しよう。これで構わないかな?」


 湘南地域といえば、元は村雨組の縄張りだったのだ。「こちら側の戦力の撤退が完了次第」という文言を入れたくれたことで発掘もし易くなるだろう。


 ただ、会話を聞いていた久義が吼えた。


「てめぇ! それでも男か!? 関東に尻尾を振って恥ずかしくねぇのかよ! ああ、村雨!?」


 だが、村雨は動じない。それどころか彼は久義をギロリと睨みつけて言った。


「私はあくまで眞行路輝虎に奪われた所領を取り戻すという目的にて参戦いたした。それ以上の見返りをねだっては、まるで関東の金脈を欲して攻め込んだようではないか……何処いずこかの誰かのようにな」


「ぐっ……この野郎……!」


 久義が悔しがる中、恒元は言った。


「では、これで話は纏まったということでよろしいかな? 神林さん?」


「……ああ」


 呑める話ではないが、一方で呑まないだけの体力も無い。神林は渋々といった様子で頷いた。そして恒元は手を叩いた。


「それでは和議の成立だ。難しい話はここまでにして、ここからは宴を楽しもうではないか」


 部屋に仲居が入ってくる。そして料理を運び始めた。


「まずは前菜から行こうか」


 仲居の一人が小鉢を置くと、恒元はそれに箸を伸ばして言う。


「美味いな。鮭の酢の物か」


「左様でございます」


 すると久義が舌打ちを鳴らしながら言った。


「鮭なら岩手の海でも獲れる。新潟の川で獲れた魚とは違って身が引き締まってる。鮭は北国の魚だ。東北の方が美味いに決まってるじゃねぇか」


「ほう、そうなのかね?」


 恒元が尋ねると久義は得意げに応じた。


「ああ。鮭ってのは元々北海道に棲んでた魚だからな。その身が引き締まってる理由だって寒さから身を守るために脂を蓄えてるからだ。天下の中川会の会長さんが随分と無学なことで」


 まったく、先ほど競り負けたからと云って露骨に突っかかりやがって。しかし、恒元は機嫌を損ねなかった。


「そういうものなのかね……まあ、新潟の村上で獲れた鮭も美味いぞ」


 挑発には乗らず、嬉々として箸を運ぶ恒元。鮭の酢の物を口に入れた途端、彼の両頬が一気に緩んだ。

「ああ、やっぱり美味い!」


 彼の様子を見ていた俺は素直に思った。こうした部分が中川恒元という男を博徒の王たらしめているのかもしれないと。


「さあ、どんどん食べようじゃないか。涼平も遠慮するな」


「はっ。承知いたしました」


 それから数分もしないうちに料理が運ばれてきた。膳の上には右から順に焼き鮭の切り身、洗い、刺身が盛られている。


「ご相伴にあずかります」


 俺は鮭を口に運んだ。これは美味い! 舌の上で脂がじゅわっと広がり、鮭本来の塩気が味覚を躍らせる。脂の乗った身と白米との相性は抜群で、一緒に咀嚼するなり口の中で美味が広がった。


「美味いな」


 俺が思わずそう洩らすと、久義はふんと鼻を鳴らした。


「鮭なんて海で獲れる魚だ! 川で獲るなんざ偽物なんだよ!」


 そんな久義に村雨が言った。


「……陸奥国で反乱が起きたのも無理からぬことであったか」


「ああ?」


「斯様に美味い料理を食しておきながら『美味い』と云えぬ。貴殿の器量ではそれが限界であろう」


「んだとゴラァ!」


 久義は村雨に摑みかかる。しかし村雨は動じない。


「私と戦がしたいならいつでも相手になろう。尤も、秋田を奪われ、シノギも陰りを見せている貴殿らに勝ち目があるとは思えぬが」


「ぐっ……」


 久義が言葉に詰まる中、俺は村雨に言った。


「ところで村雨さんよ、あんたの組は大丈夫なのか? 煌王会とは手打ちを結んでねぇんだろ?」


 村雨は俺の方を向いて言う。


「左様であるとして、それは余人には関わりなきこと。我らで始末を付けるべき話ゆえ、ここでは答えられぬ」


 余人――その表現に胸を少しばかり締め付けられる想いが催されたが、一方で恒元が村雨に言った。


「しかし、今のままでは遅かれ早かれ危うくなるのではないか? 向こうは徐々に関西の基盤を固めていると聞くぞ?」


「それは承知の上。我らも我らで切り札を用意しておりますゆえ、御心配は無用にございます」


「ふむ……二万の敵を相手にできるだけの切り札とは。よほど自信があるようだな」


「自信が無くば極道などやってはおられませぬ」


 恒元としては村雨に手を貸す見返りに中川会への参画させたいのだろうが、それを見抜いているのか村雨は固辞の一択。残虐魔王は今後も一本独鈷を続けるつもりだと思われる。


「中川殿のお手を煩わせることもございませぬゆえ、どうか私どもだけで片を付けさせて頂きたく」


「そうか? 必要になったらいつでも言ってくれよ?」


「ありがたきお話ながら、我らだけで十分にございます」


 頑ななまでに中川会による支援を拒む態度。村雨の中では2年前の恒元への恨みが消えていないのかもしれない。


 出来ることなら村雨は恒元を今すぐにでも殺してやりたかったりして――少しオーバーな憶測を浮かべてしまったが、突如として梯子を外されて恨みが募らぬはずは無いだろう。利益のために遺恨を忘れ、憎き相手とも協力できるとは強かだ。


 村雨耀介もただやだ武勇一辺倒な男ではないと俺は改めて思い知らされた。そして同時に己もかくありたいと思わされた。


「まあ、無理はするなよ……君は死なせるには惜しい男だからね……」


 それからも和やかな雰囲気で食事は進んだが、やがてその空気は一変した。


「さてと、そろそろお開きとしようじゃないか。極星連合との手打ちは後日、改めて儀式の日を設けることとしよう」


 恒元がナプキンで口を拭いながら言った直後、部屋の扉が開いた。


「ちょいと邪魔するよ」


 入ってきたのは白髪の老人。その姿を見るなり、久義が目を剥く。


「お、親父っ!」


 極星連合会長、神林かんばやし秀二郎ひでじろう。理事長を担う久義の父親にあたる組織のトップだ。


「今日は歯の治療で来られねぇんじゃなかったのか!?」


「出来の悪いお前のことだ。中川さんに言いくるめられてるんじゃないかと思ってな。様子を見に来たってわけだ」


「親父、そんなに俺がアテにならねぇってのか!」


「端からアテになんかしちゃいねぇよ。現に、そのクソみてぇな紙切れにサインしようとしてるわけだし」


「こ、これは……」


 久義は怒りと焦りが入り混じった表情を浮かべるが、神林はそれを無視して言った。


「中川さんよ、今日はこのバカ息子のために時間を割いてもらって悪かったな……だが、もうこれでお開きにしてくれねぇか?」


「ああ、言われなくてもお開きにするつもりだ」


「そうではなく、この宴で決まったこと全てを白紙に戻してくれって言いたいのさ」


「何だと」


 恒元が怪訝な顔をする中、神林は久義の方を睨みながら続けた。


「おい久義。お前、中川さんに何を口約束しやがった?」


「な……何もしてねぇよ!」


「じゃあ何で和議の条件にシマの割譲が書かれてるんだ? しかもご丁寧に『今後3年間の相互不可侵』って文言まで添えられてやがる」


「そ、それは……」


 久義は口籠った。神林は続ける。


「大方、お前はこの条件を呑めば極星連合うちと中川会をの因縁を水に流してやるって持ちかけられたんだろう。どうやら極星の代紋を担ぐ男としての誇りがお前には微塵もぇようだな」


 ため息をついた後、神林は恒元に言った。


「ってなわけで中川さん、このバカ息子が手打ちを約束したみたいですが全て白紙撤回させてもらいますよ。お生憎様、ふざけた条件で手打ちを結ばなきゃならねぇほど極星連合うちは困ってねぇもんでしてね」


 この期に及んで何を言い出すのだ?


 確かに今のところは手打ちの内容について合意しただけで、正式な協約への調印は後日に改めて行われる予定だが……。


「親父、何勝手に決めてんだよ! こいつは俺の仕切りだったはずだ!」


「だからその仕切りを降りろって話だ」


「どうしてだ!」


「いいから黙って俺の言うことを聞け。それともお前は一時の平穏欲しさにシマを敵方に明け渡しちまう間抜けなのか?」


 神林の言葉に久義は押し黙った。息子を静かに制した後、神林は恒元に向かって言う。


「中川会長。あんたが極星連合うちにクソみてぇな条件を突きつけるのは、俺らが外に内にカツカツの状況で困ってると踏んでのことでしょう?」


 恒元は鼻で笑った。


「現にそうではないのか。田舎ヤクザよ」


 煽るような言葉だったが、神林は眉一つ動かさずに応じた。


「残念ながら違いますな。ご心配頂かなくても秋田の反乱は直に鎮めてみせます。中川会と手打ちする必要なんざねぇ」


「……では、我らとのいくさを続けたいということか?」


「そうですとも。中川会ごときに頭を下げるくらいならドンパチの方がマシってことですよ。まあ、今はあんたらに頭を下げてるがな」


 神林の言葉を聞いた途端、恒元は不敵に笑った。


「随分と自信があるようだな。風の噂では……」


 だが、その時。神林の表情が変わった。


「はい。そこまで」


 恒元の言葉を遮り、頬を緩めたのだ。まるで放たれたパンチにカウンタ―をあてがうかのように。


「おっと、それ以上は言わんでくださいよ。中川さん」


「ほう?」


 恒元は目を細めた。だが、神林の笑みはますます深くなるばかりだった。


「もしあんたがそれ以上のことを口にしちまったら……その時点で極星連合は中川会に討奸状を書かなきゃいけなくなる」


「どういう意味かね?」


 神林はニタリと笑ったまま続けた。


「あんた、うちのシマでだいぶ好き勝手やってくれたみてぇじゃねぇか」


 そして彼は着物の袖から1枚の写真を取り出して言い放つ。


「旧華族の中川一族は徳川時代にゃ大名だったって聞いたが、まさか時代が平成になった今も忍者を使ってるとは驚いたぜ」


 写真に写っていた1人の男――それは才原党に属する忍びだった。


 年明けに総本部で武術の鍛錬を行っている様子を見たことがある。動揺を顔に出しそうになり、俺は慌てて堪えた。


 一方で恒元は眉間に皺を寄せていた。


「この男が何だというのだね?」


「とぼけんでくださいよ。この忍びもどきを使って極星連合うちのシマで探りを入れてたんでしょう。色々と」


 神林の指摘は概ね当たっている。中川恒元は本家執事局の局長である才原嘉門が率いる才原党を個人的に使っているのだが、彼らには度々、自らの護衛以外の仕事を与えている。


 敵対勢力への潜入工作を基本とする諜報活動だ。


 才原党の忍びたちは恒元の依頼に応え、各地へ派遣されて情報収集から要人の暗殺まで幅広いミッションをこなしている。執事局の兵力の他に現代を生きる忍者という戦力があったからこそ、恒元は御七卿が幅を利かせられていた時期も名目上は博徒の王でいられたわけだ。無論、才原党の結束力は鉄壁。任務遂行力もすこぶる高かったはずだが――どういうことだ。


 この写真に写る男は微笑んでいるように見える。もしや、途中で仕事を放棄して敵方へ寝返ったのか……?


 よからぬ想像が浮かんだ俺だが、恒元の口調は落ち着いていた。


「ふふっ。確かに我輩の一族は曽祖父の代まで大名で配下には忍びの者もったが……それは昔の話だ」


 だが、神林の笑みはますます深くなる一方だ。


「まあ、無理もねぇか。スパイってのは表向きに存在を公言しねぇからスパイと呼べるんだ」


「与太話を考えるのが上手いな、あなたは。田舎者は無駄に思考を回す時間に恵まれるほど暇なのか」

 恒元の表情が厳しくなったが、神林は動じなかった。


「あんたが否定しようがこちとら把握しきってんだよ。おたくの配下の忍者もどきが極星連合うちのクーデタ―を煽るために秋田のアホどもの尻を叩いたってことは」


「だとしたら何だというのだね? 中川会が先制攻撃を仕掛けたとでも言いたいのか?」


「そういうことだ。秋田では何名か死人も出てる。忍者もどきが情報を得るついでに殺しを働いたせいでな」


 神林の指摘に恒元は鼻で笑った。


「ふんっ。もしそれがまことだったとして、その程度のことで中川会と喧嘩をしようというのかね」


 しかし、神林は動じない。それどころか余裕すら感じさせる口調で続ける。


「中川さん、選択の時だぜ。さっきのクソみてぇな案を撤回して俺たちと対等な条件で友好協定を結ぼうってんなら俺たちも刀を鞘に戻してやるが……どうする?」


 そんな神林を恒元は凄まじい眼光で睨みつける。場の空気が一気に凍った。


「おっ、親父!」


 久義が慌てたが、神林はそれを制した。


「黙ってろ」


「で、でもよ……」


「いいからお前は黙ってろってんだ。これは極星連合うちだけの問題じゃねぇんだよ」


 そして彼は恒元に向き直る。その目は真剣そのものだった。


「俺たちは地元の食い扶持を全て背負ってんだからよ。そこへ攻め込もうって奴には絶対に腰を引いちゃいけねぇんだ……たとえどんなデカい外敵が相手になろうとな」


「親父……」


 そのやり取りを聞いていた恒元は、やがてニヤリと笑った。


「どうやら巨大な敵を相手にしているという自覚はあるようだな。田舎者にもその程度の頭脳アタマはあるようで安心したぞ」


 無論、彼の言葉には神林が噛みついた。


「さっきから田舎、田舎ってうるせぇな。東北一万五千騎の極星連合を舐めてると痛い目ぇ見るぜ」


「ふんっ。我らは関東甲信越で総勢二万騎なのだがね」


「それがどうした、この野郎。雪国で育った男たちの結束は鉄より硬い……都会の温室育ちのチンピラなんざひと捻りだ」


「いくら結束したとて弱ければ話になるまい。一万五千匹のミジンコが二万頭の象に勝てるわけが無い」


「なら試してみるか? どっちが象でどっちがミジンコなのかをよぉ!」


 神林が凄む。だが、恒元は鼻で笑ってのける。


「ならば見せてもらおうではないか……貴殿ら田舎者の結束とやらをな」


 そんな2人のやり取りを見て、俺は内心ヒヤヒヤしていた。まさかこの勢いで武力衝突を起こすつもりなのか……? いや、それにしては時期が早い気がするし、そもそも土建屋を本業とする極星連合にとって戦争は本意ではないはずで、敢えて中川会に喧嘩を売るような真似はしないだろう。


 止めに入るか。いや、ここで中川会から折れた体をつくってはまずい。どうするか――頭を悩ませていると声が上がった。


「お二方。私を忘れて貰っては困るぞ」


 その声の主は村雨組長だった。彼は続けて言った。


「神林会長。そもそも此度は貴殿ら極星連合が許しを乞う場ではなかったのか。その道理を捨てるというのならばこちらにも考えがある」


 神林は村雨の方を見た。


「ほう? どんな考えだ?」


 一同が注目する中、村雨は続けた。


「我ら村雨組が極星連合と一戦交えるということだ」

 その瞬間、場の空気がさらに凍りついた。

「村雨組が極星連合と一戦交えるだ……?」

 久義は信じられないといった様子で呟いた。

「ああ、そうだとも。銀座では貴殿らとの因縁も生まれておるゆえ、戦う理由は大いにあるだろう」


 そう言った村雨だが、神林は鼻で笑った。


「おいおい。たかがチンピラ集団の組長如きが極星連合の大兵力に敵うと思っているのか?」


「では、試しに仙台へ討ち入ってみるか。一人で千騎を相手にすることくらい私には造作もないことだ」


 堂々と言ってのけた村雨。笑ってあしらうかに思えた神林会長だが、その瞳の奥では明らかなる動揺の色が揺れていた。


 残虐魔王、村雨耀介。90年代から数々の伝説を打ち立ててきた武闘派組長の名は東北にも轟いているのだろう。


 地元愛ゆえの強い意地を持つ神林会長でさえ、目の前の男は恐ろしいらしい。


「ふっ、まあ良いさ」


 やがて彼は落ち着きを取り戻した。そして村雨に言う。


「確かに見失ってたかもな。この宴の目的ってやつを。村雨組も含めて三組織で手打ちを結ぶことにあるんだったよな」


 父の反応を耳にした久義は一瞬嬉しそうな表情を浮かべたが、すぐに神林の方を見た。どうやら何か言いたげだ。


 そんな息子を一瞥すると神林は恒元に向き直った。


「中川さんよ、俺はあんたが押し付ける不平等条約を呑む気はさらさらぇが、中川会あんたらと真っ向からドンパチをかますのも本意じゃねぇ……戦争でいちばん傷つくのはカタギの皆さん方だ。俺たちだけの問題じゃねぇんだよ。ってなわけで、どうだ? ここはひとつ、お互いに譲歩し合わねぇか? それぞの地元のためによぉ」


「譲歩だと……」


「さっきあんたも言ってたが、俺たち極星連合うちは秋田の反乱を鎮静化させるために金と兵力を費やしてる最中なんだ。ぶっちゃけ、この上あんたらに喧嘩をふっかけて戦費を浪費するわけにもいかねぇんだよ」


 神林の口調は穏やかだった。だが彼の目は笑っていない。恒元もそれを感じ取っているようだ。


「……うむ。では、秋田の割譲は撤回しよう。ただし、中川会われらが仕切る関東のシマは極星連合との争いで多くの人材を失っている。そこでだ……貴殿らは我らの勢力圏へ入ることは罷り成らん」


「つまり不可侵協定を結ぶってことか?」


「そういうことだな」


 恒元はニタリと笑った。だが内心では別のことを考えているに違いない。この提案には何か裏があるのではないか? そしてそれは神林も同じだろう。彼は言った。


「じゃあ、こっちも条件を付けよう。おたくら中川会も東北へ入らんでくれ。言っちまえば相互不可侵協定。どうだい?」


「ふっ、いいだろう」


 恒元が了承した瞬間だった。神林はニヤリと笑って続けた。


「じゃあ交渉成立だな。中川さんよ、あんたとの付き合いはこれっきりだ。二度と俺らの地元に足を踏み入れんじゃねぇぞ」


「……良かろう。逆に今後もし我らが勢力圏内で極星連合の構成員を見かけたら、その時点で始末する」


「上等じゃねぇか。その時は中川会と極星連合の全面戦争だな」


 2人は握手を交わし合った。銀座継承戦争をめぐる中川会と極星連合、そして村雨組の和平交渉はこうして幕を閉じたのだった。


「んじゃ、俺たちはお暇させてもらうよ。帰るぞ、久義」


 想定外はあったものの、中川会との和平が成ってご満悦の神林。それは恒元も同じらしく、穏やかな笑みを浮かべていた。俺が思うに秋田の割譲は極星連合を焦らせるための脅し文句で本気ではなかっただろう――俺のくだらぬ推考はさておき、何はともあれ手打ちを結ぶことができて良かった。


 相互不可侵協定は極星連合という北からの脅威を阻む防波堤となろう。これが発効しているうちに、中川会は西への勢力拡大を進めれば良いのだ。


 九州の玄道会、四国の一条会、そしてゆくゆくは関西の煌王会を下すために。


「ふっ、此度の和約が破られぬことを願うばかりだ」


 そう微笑んだ村雨だが、何とも上手く立ち回ったと思う。先ほど恒元の肩を持つことで彼に貸しを作ったのだから。


「では、また会おう」


 村雨はそう言い残し、神林と共に店を後にする……かと思いきや。


 次の瞬間、俺の携帯が鳴った。


「ん?」


 原田からだ。出てみると、慌てた声が聞こえてきた。


『兄貴! 大変です!』


「どうした? 何があった?」


『カチコミです! 煌王会が攻めて来やがりました!』


「なっ、何だと!?」


 直後、電話の向こうから聞こえてきた銃声と怒号、そして悲鳴に俺は思わず立ち上がった。その拍子に椅子が倒れる。


 何故に煌王会が? 俺はこの和平交渉の宴に先立って村雨組と極星連合に声をかけたが、煌王会にはコンタクトをとっていないぞ……!?


 昂る鼓動と動揺に、俺の眉間の皺は寄るばかりであった。

鳴り響く銃声! 突如として現れた煌王会の目的は……? 次回、状況がさらに混迷化する!

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