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鴉の黙示録  作者: 雨宮妃里
第7章 そして少年は極道になった
106/252

「負ける」ということの本質

 それからも俺は暴れ続けた。断末魔の相手から反撃を受けて頬に切り傷を負っても、まるでお構いなし。文字通り、我を忘れて目の前の敵を倒すのみ。それ以外のことが頭に入って来ない。絵に描いたような興奮状態だった。


 肉を抉る感触と、骨が砕ける音。


 苦痛に悶え苦しむ敵の顔と、断続的に上がる悲鳴。


 血の匂い。


 短い時間ではあるにせよ、もたらされる刺激は強烈だ。五感が完全にショートしてしまっていたのだと思う。当然、判断能力も狂っているので正常な認知などできるわけがない。気づいた時には、自分の周りに無数の人間が転がっていた。


「……っ!?」


 もちろん、全てを自分1人でやったわけじゃない。大半を片づけたのは村雨組長で、俺はあくまで彼の取りこぼしの後始末をしていたようなもの。ただ、それでも少なく見積もって30人以上は打ち倒したのではないか。


 一体、どれほどの時間を戦っていたのだろう。当初は尋常ならぬ兵の群れだった大鷲会の連中も、ついには目視で数えきれるレベルまで減ってきた。


 全滅まで、あともう一押し。


 されど、疲労が邪魔をする。後先考えずに無我夢中で暴れ続けた“代償”は思いのほか大きく、体の節々の動きが先ほどよりも鈍くなっていた。呼吸もだいぶ乱れている。


 喧嘩の興奮に由来する一種のトランス状態が解除されて、その間に溜まっていた疲れが雪崩のように押し寄せてきた心地であった。


 トレーニングを毎日欠かさずこなしているだけあって筋力には自信があったのだが、肝心の持久力が追い付いていない。日課に加えて、縄跳びでもやっておけば良かったか。己の鍛錬不足が悔やまれた。


(くそっ! あと少しなのに……!)


 ただ、敵も殆ど同じ状態。スタミナ切れを起こして肩で大きく息をする俺と同様に、連中もまたひどく消耗している。体力的には五分五分といった状況か。


「はあ……はあ……し、しぶとい……」


「し、信じられねぇ。この人数をたった2人で……おかしいだろ。こいつら化け物かよ……!?」


「強すぎる……」


 隣り合わせで並ぶ俺たちを呆然と見つめ、皆口々に驚嘆の句を吐いていた。残った兵力を結集してこちらをぐるりと取り囲み、一気に勝負をつけるつもりだったようだが、彼らも彼らで体が動かないらしい。


 そんな中、村雨が淡々と言葉を放つ。


「お前たち、もう終わりか? 藤島の子飼いというからにはさぞかし骨のある戦いをするものと思ったが、口ほどにもない。これでは赤子の手をひねるようなものだ」


「なっ!? 何を……」


「我が面前にひざまずけ。降伏せよ。さすれば今日の所は情けをかけてやる。これ以上続けても無用な血が流れるだけだ。貴様らに私の首は獲れぬ」


 ついさっき100人相手の大立ち回りを演じたばかりだというのに、組長の呼吸はまったく乱れていない。どういうわけか。ふと彼の方へ視線を移しても、顔や腕に傷の類は一つとして見受けられない。


 普通、あれだけの大群を相手に喧嘩を行えば多少なりとも反撃を受けるだろうに。その全てをかわした、もしくは受け流したということなのか。


 まさに、化け物。先ほどの敵の形容詞を借りる形にはなったものの、村雨耀介の予想を大きく超えた戦闘能力に俺はただ恐れ入るばかり。「残虐魔王」と呼ばれる所以を思い知らされたような気分であった。


(……凄すぎる)


 しかしながら、白旗を揚げろと言われて素直に頭を下げる者が少ないのは戦の常。村雨の言葉を受けた大鷲会は怯むどころか、さらにいきり立った。


「ふ、ふざけんじゃねぇよ! 誰がテメェなんかに頭を下げるか! 俺たちは会長の身柄ガラ押さえられてんだ。このまま帰るわけにゃあいかねぇんだよッ!」


「ほう? では、このまま私に嬲られ続けたいと?」


「黙れ! テメェがどんだけ喧嘩上手か、そんなのは知ったこっちゃねぇ。命に代えても親分を救い出す。皆、その覚悟でここにいるんだ!!」


「フッ。愚か者め。この期に及んで未だ強情を張るとはな。“命知らず”もここまで来れば、ただの“死にたがり”だ」


 冷たく嘲笑った村雨の前に、1人歩み出る者がいた。紫の背広にリーゼントというその頃としても少々時代遅れな装いをしたその男は、俺たちの前に無言で立ちはだかる。


「……」


 そして左に携えていた剣を抜き放ち、豪快に啖呵を切った。


「……馬鹿にするのも大概にしてくれや、村雨さんよぉ!! お前は仁義ってモンをまるで分かっちゃいねぇ。言っとくが俺たち全員、藤島の親分の侠気おとこぎに命を賭けてるんだ。あの人の為だったら死んだって構わねぇ。そんな俺たちが今さら死ぬことを怖がると思うのかい! ええ!?」


 見たところ40代前半くらいには差し掛かっていそうな中年の極道。残虐魔王が放つプレッシャーに臆しないあたり、渡世でそれなりの経験を積んできたベテランのようである。駆け出しの下っ端ならば、きっとこうはいかないだろう。


 その証拠に、彼の後ろに控えた兵たちには実に分かりやすい変化が起こっていた。皆、見るからに動揺しているのだ。


 ある者は両隣の仲間と互いに顔を見合わせ、ある者は武器を握る手をブルブルと震わせ、またある者はひどく慄いた表情で俯く有り様。今にも逃げ出しそうな様子で脚を竦ませ、呆然と立ち尽くす者が殆どだ。


 単にさっきの乱闘で疲れているのかとも一瞬は思ったが、よく耳を澄ましてみると決してそうではないことが分かる。聞こえてきたのは、何とも情けない会話であった。


「なあ……これ、本当に勝てるのかよ」


「いや、無理だ。さっき134人でぶつかっても勝てなかった相手だぜ。いくらカメダの兄貴でも分が悪すぎる。返り討ちに遭って瞬殺されんのが関の山だろ」


「それじゃあどうすんだよ! 兄貴がられたら次は俺らの番だ。手も足も出ねぇのはさっきので思い知ったろ! やっぱ、ここは一旦引き上げた方が……?」


「ああ。そうだよな。逃げるが勝ち。命あっての物種だ。もう仁義だの侠気だの、つまんねぇ意地をを張ってる時じゃねぇぜ」


 集団戦においては、1度こうなってしまうと全てが崩れ始める。全軍の士気が昂っている状況でこそ、数の優位は発揮されるのだ。


 このような不協和音は集団の中で瞬く間に伝播してゆく。弱気な逃避志向が1人、また1人と連鎖し、結果として全体の戦意が失われるのだ。


 こうなってしまっては、もう一巻の終わり。人間は良くも悪くも多数派の動向に流される生き物である。連中の足並みが乱れているのは最早、誰の目から見ても明らかであった。


 村雨はそこを見逃さない。


「なるほど。カメダとやら、どうもお前の独り善がりに過ぎぬようだな。少しは舎弟どもの顔色を見るが良い。皆、恐れが表情にあらわれているではないか。私と刃を交えることが余程よほど怖いらしい」


「見くびるなっ!!」


「ならば、己の口で問うてみよ。貴様ひとりの死に急ぎに彼奴あやつらを付き合わせては些か哀れであろうに」


 屈辱的な言葉で煽られた男は急いで背後を振り返る。だが、時既に遅し。戦意を確かめる間もなく、他の組員たちは次々と武器を下ろし始めていた。


「何をしてやがる!?」


「兄貴。もう、無理ですって。勝てませんよ。あんな化け物が相手じゃどうすることもできねぇ。笛吹ともケジメをつけなきゃならないんだ。戦力を温存するって意味でも、ここは一旦引いて……」


「馬鹿野郎! お前ら、それでも極道か!」


「兄貴こそ、少しは現実を見てくださいや。このまま力任せに挑んだって、無駄死にするだけでしょう。言っときますが、俺たちはそんなのまっぴら御免ですよ? やるなら兄貴おひとりでどうぞご勝手に」


 その後、カメダと名乗る中堅極道が何度かに渡って叱咤と檄を飛ばすも、戦意を失った兵たちが再び奮い立つことは無い。


 連中の間に広がっているのは、諦めのムードか。皆、軽く俯いて地蔵のごとく立ち尽くすだけ。俺と村雨の圧倒的な強さを前に恐れ慄き、腰が引けてしまったものと推測される。


 ただ、カメダの態度は依然として変わらない。舎弟たちの助勢を全く得られぬと分かってもなお、白鞘の日本刀を手にこちらへ眼光を飛ばしてくる。若干の苛立ちこそ見受けられたものの、冷静さは殆ど保ったまま。完全に“やる気”だ。


(おいおい! こいつ、正気かよ……?)


 単に自分が置かれた状況が見えていないだけなのか。それとも、先ほど派手に啖呵を切ってしまった以上、意地やらプライドやらが邪魔をして引くに引けなくなっているのか。


 おそらくは後者だと思うが、感情的な要因で身の破滅を迎えてしまうのは何ともやりきれない。また、カメダは撤退することを「恥」と断じたが、明日の勝利のために今日の恥を忍ぶのも立派な策ではないのか。むしろ、そちらの方が賢明な判断といえよう。まるで共感できなかった。


「……やってやろうじゃねぇか。こうなったら俺1人でもやるぜ。村雨耀介、お前にはこの手で落とし前を付ける。藤島の親っさんをあんな身体にした報復かえしだ!」


「なるほど。あくまでも、そのつまらぬ意地を張り通す気か。これは面白い。『飛んで火に入る夏の虫』とは、まさに貴様のことだな」


「黙れ!! お前は丸腰だった親っさんを背中から撃った外道だ。そこにいる麻木ってガキ共々、しっかりタマを取らせてもらう。それをやらなきゃ渡世人としての名が廃るんだ。覚悟しやがれッ!」


 カメダと村雨のやり取りに黙って耳を傾けながら、俺は思いをめぐらせる。


 到底理解しがたいカメダの心情であるが、きっと立場の違いだろう。これから先、どこかで同じようなシチュエーションに遭遇すれば自ずと選んでしまうかもしれない。無謀と分かっていながら、敢えて死地へと飛び込む修羅の道を――。


 そんな思いがよぎった、次の瞬間。


「くたばれーっ! 村雨ぇぇぇぇぇ!!」


 カメダの体が動く。彼が発した雄叫びは、さながら飢えに飢えた肉食獣の咆哮。目にも止まらぬ踏み込みの速さで、一気に距離を詰めてくる。


 古流剣術でも嗜んでいたのか、先ほどまでの者とは何もかもが桁違いだ。上段で構えた得物の刃筋もしっかりしていて、ブレひとつ見られない。不覚にも俺は反応が追い付かなかった。


 怒号に気圧けおされたこともあってか、完全に足が竦んでいる。間一髪左に身をよじってかわしたが、刃先がわずかに頬をかすめた。あと少しでも動作が遅ければ真っ二つにされていたと思う。本当に危ない所だった。


 しかし、村雨は違う。


「甘い」


 ――ドンッ。


 実に刹那的な出来事だった。受け流すかのごとく滑らかに身をひるがえし、カメダの腹部めがけて右の拳を叩き込んだのだ。


「ぐはっ!?」


「鎧 《がい》しゅういっしょく。剣に力が乗りすぎだ。さような者の動きを読むなど、私には造作もないこと。なれど、その気骨に免じて命は助けてやる。しばし、そこに寝ておれ!」


「ち、ちくしょうめ……」


 崩れるように倒れ込み、意識を失ったカメダ。ここまで見事な“返り討ち”を目にするのは初めてだ。あまりにもあっけない撃沈ぶりに、俺は少なからぬ同情の念を抱いてしまった。どうにも哀れの度合いが過ぎる。


「フッ、実に愚かだ。おとなしく平伏しておれば痛い目に遭わずに済んだものを。これゆえ弱き者は好かぬ……さて、お前たちは何とする?」


「ッ!?」


「皆殺しにしてやっても良いのだがな。生憎、私は構えを解いた者の首をねるほど悪辣ではない。生かしてやるとしよう」


 その言葉に、大鷲会の面々の表情が綻んだ。命までは取られぬと知って安堵したところか。死の恐怖から逃れた彼らの変わり様は滑稽なほどにあからさまで、全員が次々に武器を地面に投棄、挙句には小さくガッツポーズする者まで見受けられる始末だ。なんと調子の良い奴らだろうか。


 当然これには村雨組長も心底呆れたようで、連中を軽蔑の眼差しで一瞥した後に厳しい声で言い放った。


「浮かれるな! 勘違いしてもらっては困る。たしかに生かしてやるとは言ったが、このまま何もせず帰すつもりは毛頭ない。我が行く手を塞ぎ、浅ましくも刃を向けた罪。貴様らには血と汗をもってあがなってもらう!」


 流石に敵を無条件で赦すことはしないようだ。何となく予想はついていたものの、やはりそこは村雨耀介。敵対者を徹底的にいたぶる基本的な姿勢に揺るぎはない。


 何らかの沙汰を突きつけられると分かり、残党たちは朗らかな様子から一転、皆ひどく怯えた表情になった。群衆のちょうど真ん中にいた痩せ型の男が、傷だらけの顔にしわを寄せながらたどたどしく尋ねる。


「そ、それって、どういう……?」


「簡単な話だ。これより私が言い渡すことを全て呑め。さすれば、その出来の悪い頭を砕かずにいてやる」


 ひと呼吸分の間を挟んだ後、組長が告げたのは少し意外な内容だった。


「間もなく警察がやって来る。お前たちはここへ残り、自首せよ。そして詮議の場にて、何もかもが自分達の所業と述べるのだ。『全ては大鷲会の内輪揉めであり、運悪く死人が出てしまった。村雨組は関係ない』とな」


「なっ……!? お、俺たちに捕まれと?」


「いかにも。今この場で私に討たれることに比べれば、獄暮らしなど容易いものであろう。選ぶ余地は無いと思うがな」


 常時無数の人が行き交う病院前で乱闘劇を演じてしまう以上、その模様をカタギの市民に目撃されることはどうしても不可避。実際、俺たちが大暴れしていた駐車場には多くの野次馬が群がっていた。


 彼らの中に110番通報する者がいないとも限らない。いや、ごく普通の感性と良識を持ち合わせていれば必ずそうするはずだ。遅かれ早かれ、警察はやって来る。それを踏まえた上での措置だ。


「良いか? 当局の詮議で、少しでも私と涼平の名を口にしてみよ……その時は容赦せぬぞ。こちらとて警察に知人は多いのだ。死よりも辛い目に遭わせてやる。分かったな?」


「……あ、ああ」


 警察に大鷲会の藤島派を全員逮捕させ、一方で自らに刑事訴追の手が及ぶことを避ける。敵の無力化と事後処理を同時にやってのける、まさしく一石二鳥の策。話を黙って聞いていた俺は、すぐさま納得した。


 もちろん大鷲会の面々にとって、この話はたまったものではないだろう。村雨の言った通り、捕まれば長い懲役が待っている。罪状は殺人、傷害致死、凶器準備集合、銃刀法違反等その他諸々で少なく見積もっても10年は刑務所で暮らすことになるのではないか。想像しただけでゾッとする。


「……」


 しかしながら、これこそが連中の宿命。戦に負けた方が勝った方の手で徹底的に蹂躙されるのは、場面や状況が違えどいつの時代も共通している。それが嫌なら我武者羅にでも勝ち続けるしかないということもまた、同じ。


 ようやく、分かった気がした。人類の歴史とは、それ即ち勝者が敗者を征服し、虐げ、搾取してきた物語の繰り返しである。例外は存在しない。ならば、何が何でも勝者の側に立ってやろうではないか。


 ヤクザとして自分が目指すべき最終地点が、まだうっすらとではあったが見えてきた気がした。愛も情けも通じない、人命の重みが小石よりも軽い極道社会という狂った世界。そこに自ら飛び込んでゆく理由は、たったひとつ。


(……勝つためだ。勝って、幸せになるために)


 すべてを悟った瞬間だった。


まいるぞ。ここに長居は無用だ」


「うん」


 がっくりとうなだれる男たちには目もくれず、俺は組長の後に続いて歩き出す。午後の陽が傾いてきたせいか、熱気も少し和らいできた。それでも、額には汗が浮かんでいる。時は平成10年、並々ならぬ暑さである。


「涼平、よく戦ってくれたな。見事であったぞ」


「あんたには敵わねぇよ。1人であれだけの数をぶっ倒しちまうんだからさ。なんか秘訣でもあんの? 強くなるためのテクニック、みたいなのが」


「特には無い。私としては、あれでもだいぶ手加減をした方なのだがな。まあ、日々鍛錬を欠かさぬことだ。さすれば自ずと腕も上がる。励め」


 敷地を抜け出てしばらく歩いていると、甲高いノイズが耳に飛び込んできた。


 これはパトカーのサイレン。ドップラー効果により増幅して聞こえるその音は、次第に俺たちの方へと近づいてくる。俺は一瞬だけ身構えるも、やがてはこちらを速やかに追い越していったのでホッとした。


 おそらく、向かう先は病院。あの場にいた野次馬の誰かが通報したと思われる。護送車を含めた4台の車列が組まれていた。実に物々しい雰囲気である。


 現場から立ち去るのがあと少しでも遅ければ、俺たちも捕まっていたことだろう。本当に危ない所だった。


「……でも、大丈夫かな?」


「何が」


警察サツが後で俺たちを疑ったりしねぇかなって。ひとまず上手く逃げ出せたけど、あそこにはけっこう人がいたわけだし。確実に見られちまっただろ」


「心配無用。それは杞憂というものだ」


 首を傾げながら理由を尋ねた俺に、村雨はあっさりと答える。


「涼平。この国の警察が重んじているのは事件の下手人を捕縛することに尽きる。奴らにとって下手人が誰であるかは、さほど大事ではない。極道同士の揉め事であれば、尚更な」


「えっ? じゃあ、とりあえず犯人を逮捕できりゃそれでOKってことか?」


「さよう。それゆえこの国では冤罪が生まれ続けるのだ。一方で、法の裁きを逃れる者が堂々と表を跋扈したりもする。我々のようにな」


「あ、ああ……」


 何とも理解しがたい話だ。しかし、残虐魔王が言えば不気味な生々しさを帯びてくる。現に組長が西区を管轄する横浜第二署を多額の賄賂で事実上買収しているとの噂は、いちおう俺も知ってはいた。


 村雨組が警察と繋がっているのなら、他の組とて例外ではないだろう。事実、本庄組が大井町商店街を潰す際に警視庁品川署を操っていたのだ。似たような出来事は全国津々浦々、いくらでも起きているかもしれない。


 想像しただけでも、背筋に悪寒が走る。


「涼平、覚えておくが良い。警察が正義の味方でいるのはテレビや映画の中だけだ。奴らも人間。所詮、虚栄心と欲には勝てぬ浅ましい生き物だ。我らと同じようにな」


「う、うん……」


「されど、闇の中でしか生きられぬ我らとは違い、向こうは表の権力を持っている。侮ってかかれば必ず泡を食わされよう。これからはお前も用心することだ」


「……」


 いろいろと不安だが、とりあえずは村雨組長についていくしかなかった。

本日から新年度がスタートです(∩´∀`)∩


入学式、入社式、転勤&異動などなど、

新しい環境にて新しい始まりを迎えることも

多い時期かと思います。春の到来です。


拙作を読んでくださった皆様に

どうか素敵な出会いが訪れますよう、

心よりお祈り申し上げます。

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