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一方の告白されたユウは。
人間どころか、妖怪からも今まで一度も愛を告げられたことがなかったユウは。
顔を真っ赤にして口を開け、両手を胸の前で握り合わせ身体を小刻みに震わせていた。
「幸雄…幸雄は…ユウが好き…好き…」
「ええい! いい加減にしろ! まとめて凍りつけーーー!!」
雪女が冷たい息を吐き出した。
「「ギャーッ!!」」
幸雄とニャン太が絶叫する。
しかし。
しばらくして。
「あれ?」
幸雄が首を傾げた。
「全然、寒くない…」
「あれだ!」
ニャン太が指す方を幸雄が見る。
「あ!」
空中に大きな炎が浮いている。
「この形は…」
幸雄は見覚えがあった。
「そうだ、ユウの頭の横に浮いてたやつ!」
ユウを見ると、まだ幸雄の愛の告白のせいで顔を真っ赤してユラユラ揺れている。
その頭の横にあったはずの勾玉形の炎が無い。
どうやらあれが大きくなって燃え盛っているようだ。
その炎から発生する温かさで雪女の冷気が効果を打ち消されていた。
「な、何じゃ、この炎は!?」
雪女が驚愕する。
「あれ?」
幸雄が気付いた。
「炎の中に何か映ってる!」
確かに勾玉炎の中央に、テレビ画面の如く映像が浮かんでいる。
「吾助どん!」
それを見た雪女が叫んだ。
「ご、ご、吾助どん!?」と幸雄。
炎の中では百姓の若者、吾助が村人たちに民家の柱に縛りつけられた姿が映っていた。
「頼む! 行かせてくれ! 俺は雪といっしょになりてぇんだ!」
「駄目だ! お前はあの化け物の妖力に騙されとる! 丁度、近くの村に源揉揉様がご家来衆と泊まっておられる。雪女退治を頼むんじゃ!」
「村長、やめてくれ!」
吾助が必死に頼んでも、集まった村人たちは殺気立ち、一向に怒りが収まらない。
「吾助、どこで雪女と逢うか教えろ!」
「いやだ! 絶対に言わねえ! 頼むから俺を放してくれ!」
「おら、兄ちゃんが雪女と約束したのを聞いてただ」
村人の中から一人の娘が、おずおずと前に出た。
「何!? どうしてそれを早く言わん!」
「やめろ! お花、言うんじゃねぇ! 」
しかし吾助の願いも虚しく、妹のお花は雪女との約束の場所を村長たちに話してしまった。
場所を知った村人たちはそれを源揉揉に伝え、武士たちは出発した。
「これって…雪女が人間を恨む原因になった事件?」
幸雄がやっと気付く。
「なるほど。雪女が殺された真相か」
ニャン太が首を傾げる。
「それにしてもユウの炎…ユウの母親の雪女から受け継いだ妖力じゃないな…だとすればユウの父親の能力? こんなの聞いたことないぞ」
「吾助どん…」
愛した相手に裏切られてはいないと知った雪女の瞳が潤み、大粒の涙を溢している。
炎の中には村人たちにようやく解放された吾助が約束の場所に走り、揉揉の肩叩き剣で倒された雪女の名残であるひと房の髪の毛を胸に抱き、泣き崩れる姿が映っていた。
「雪ー! 雪ー! ううう…」
苦しむ吾助の手から、武士たちが形見の髪の毛を奪う。
「返してくれ! 雪を返してくれ!」
食い下がる吾助を武士たちが組み伏せる。
「この髪の毛は我らに祟らぬよう、僧侶に封印させる」
揉揉が残酷な宣告をする。
そして武士の一団は去っていった。
その場に号泣する吾助だけが残された。
「ううう…雪…雪…雪ーーー!!」
そこで炎の映像が消えた。




