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「おい、騒ぐなよ! オレとユウは妖怪だから霊力の強い人間にしか見えない。お前が1人で大声出してると思われるぞ」
ニャン太が2本ある尻尾をクネクネと動かした。
「よ、妖怪!?」
「いちいち驚くなよ。話が進まないだろ?」
「あたしに出来る事ある?」
ユウがまたも上目遣いで左の瞳を潤ませた。
「え!? ああ…その…君たちはいったい?」
「ユウは雪女の娘なのさ。母親が死んで独りぼっちになった。オレとは最近、知り合ったんだ。今は父親を捜す旅の途中。父親は何者か分かってない。ユウの頭の横に何か浮いてるだろ?」
幸雄がユウの傍らでユラユラ揺れる赤い勾玉を見た。
「それが父親の手掛かりかもしれない。でも、そんな妖怪はオレも聞いたことないんだよなー」
「あたしに何か出来る事ある?」
「あ、ああ、ちょっ、ちょっと考えさせて」
「ユウは何でもするよ」
かわいい瞳。
「な、な、何でも!?」
幸雄が妄想する。
顔を赤らめた。
「お前、今エッチなこと考えてるだろ?」
ニャン太が疑いの眼差しを向ける。
「そ、そんなわけないだろ!!」
幸雄が怒った。
だが実は本当にエッチなことをいっぱい考えていた。
「まあ、いい。とにかくユウは父親を捜してる旅の途中で暑さにやられて、お前に助けられた。こいつは優しくされるとすぐに懐くんだ。恩返ししたがるんだよ」
「そうなのか…」
幸雄がユウを見る。
ユウがニコッと笑った。
「幸雄、言ってみて」
「いや…俺いいよ」
「?」
ユウが首を傾げる。
「そんな大したことしてないし。人を…今回は妖怪? とにかく困ってる誰かを助けるのは当たり前だから」
「幸雄…」
ユウが瞳を大きく見開く。
「優しいね」
「そ、そんなことない。普通だよ、普通!」
幸雄が立ち上がる。
身体を支えて、ユウが立つのを手伝った。
「俺、行くよ。お父さんが見つかるといいね」
「え…あたしに出来る事…」
「気持ちだけで充分だよ。さよなら、ユウ。ニャン太も」
「ああ」
ニャン太が頷く。
幸雄は家路へと戻った。
「………」
幸雄は困っていた。
もうじき家に着くのだが、後方にずっと気配を感じる。
さっと振り向く。
少し離れた電信柱の陰から、顔の左側を除かせた女の子。
「ユウ…」
「もう無理だな」
「ニャ、ニャン太!」
足元に現れたニャン太が幸雄を見上げる。
「ユウは恩を返さないと居なくならない」
「うーん」
幸雄は両腕を組んだ。
何となく嬉しさもあった。
ユウを初めて見た時のドキドキが、また始まる。
(この気持ちはひょっとして…いやいや、ユウは妖怪なんだ…俺とは住む世界が違う…)
「もういっそ、お前がさっき考えたエッチなことをユウにしてもらえばいい。そうすればユウは居なくなる」
「そうだな…あんなこと、そんなこと…それから、ああしてこうして…」
「そんなにあるのか!?」
「って、何を言わせるんだよ!」
鼻の下を伸ばしていた幸雄が我に返る。
「それが出来ないなら我慢するんだな。ユウは諦めないぞ」
「はぁ」
幸雄がため息をつく。
再び歩きだし、家の前に立った。
古びたコンクリート製の建物。
「オカルト研究所」と下手くそな字で書いた看板が入口に掲げてある。
「ただいまー」




