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REMAKE~わたしはマンガの神様~  作者: 八城正幸
第16章
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ぼくのそんごくう その9

「ああ、面白かった!やっぱり黒澤明()天才だわ!」


 博多の映画館で映画を観終わった治美は一緒に付き合ってくれた雅人にそう言った。


()ってどういう意味だよ?」


「それはもちろん黒澤明()手塚先生と同じく天才だっていう意味です」


「お前が手塚治虫なんだから、あまり人前でそんなことを言うんじゃないぞ。自分で自分のことを天才ってうぬぼれていると批判されるぞ」


「いやー、わかっているんですが、ついつい手塚治虫は漫画の神様だなんて自分で言っちゃうんですよね。おかげでわたし、かなり業界でアンチを作っているようです」


「俺もお前の悪い評判をよく聞くぞ。漫画を描きまくっている銭の亡者だと。もう少し仕事量を減らした方がいいんじゃないのか?」


「お金は幾らあっても足りないんです!わたしはこれから虫プロダクションを設立してアニメーションを創らないといけないんですから。個人でアニメ作るのってもうすごーくお金がかかるんですよ」


「ふーん…。その虫プロダクションができるのはいつのことなんだ?」


「1961年、昭和36年に虫プロダクション動画部を設立します。でもその前に来年の12月に東映動画から『ぼくのそんごくう』を原作にしたマンガ映画を作りたいという依頼がきます」


「あっ、それでか。それで『ぼくのそんごくう』が治美にとってとても重要な作品なのか。しかし、もう時間がないじゃないか!」


「そうなんですよ!だから雅人さん、お願いします!わたしを手伝って下さいよ。わたしのマネージャーになって下さい!」


「また、その話か!俺だってお前を助けてやりたいのは山々だが、未来世界のお前の祖父、手塚雅人は手塚治虫のマネージャーなんかしていないだろう。俺がお前のマネージャーになったら歴史がガラッと変わっちまわないか?」


「大丈夫ですよ!雅人さんみたいな凡人の仕事が変わったって歴史に影響するわけないじゃないですか!」


「………………」


「お願い!雅人さんしか頼れる人がいないんです!アニメができるまでの間だけでいいから!」


 治美は雅人の腕をがっしりと捕まえると駄々っ子のように揺さぶりながら懇願した。


「ふう………。このままだとお前、早死にしちまうな。わかった!俺でよければマネージャーになってやるよ」


 ため息交じりに雅人が承諾した。


「やったー!!」


 治美は雅人の腕にぶら下がってはしゃぎまわった。


 雅人は治美を振り払って言った。


「それじゃあ、我々も東京に戻るとするか。トキワ荘のみんなに何か博多土産を買って帰らないといけないなあ」


「ねえ、雅人さん…」


 再び治美がもじもじと上目遣いで話しかけていた。


 雅人は嫌な予感がして警戒した。


「な、何だ!?」


「せっかくここまで来たんだ。阿蘇山へ観光に行きましょうよ」


(そら、来た!)


「駄目だ!駄目だ!駄目だ!」


「お願い!お願い!お願い!わたし、前から一度阿蘇山を見てみたかったの」


「そんな遊ぶ時間はないだろうが!」


 雅人を治美を置いてズンズンと歩き出した。


「遊びじゃないわ。仕事のための取材よ」


 仕事と言われて雅人の足が止まった。


「取材だと?本当なのか?」


「ホント、ホント!これからわたしは阿蘇山を舞台にした作品を沢山描くのよ。えーと、『ケン1探偵長 怪盗マウス・ボーイの巻』でしょ、『火の鳥 黎明編』でしょ、『鉄腕アトム』の最高傑作『地上最大のロボットの巻』でしょ……」


「―――鉄腕アトムの最高傑作だと!?」


 アトムと聞いて雅人の目の色が変わった。


 実は雅人は「鉄腕アトム」が大のお気に入りだったのだ。


「ちなみに、どんな話なんだ?」


「――国を追われた王様が世界最強のロボット、プルートウを作らせます。王様はプルートウが世界最強だと証明するために世界中の名だたるロボットたちを破壊していきます。やがて、プルートウはアトムにも闘いを挑み、阿蘇の火口で最後の闘いを行うのでした」


 結局治美と雅人はたっぷりと阿蘇山を観光して回り、二日後にようやく東京に戻るのだった。

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