ロック冒険記 その7
治美は黒板に決まった担当者の名前を書いていった。
「さあさあ、あとは希望はないのかな?早い者勝ちだよ!」
「はい!」
「はい!」
みんなが一斉に手を上げた。
「はい!藤木氏!」
「僕は西部劇を描きたいから『サボテン君』をさせて下さい」
「はい!赤城氏!」
「だったら僕は時代劇を描きたいので『冒険狂時代』です!」
治美は黒板に二人の名前を描き加えた。
と、玲奈が手を上げた。
「手塚先生!私、『リボンの騎士』描きたい!」
「でも、玲奈ちゃんはもう『ジャングル大帝』の担当じゃないの」
「私、少女漫画、描きたいの!」
「わかったわ!玲奈ちゃんには『ジャングル大帝』と『リボンの騎士』も担当してもらうわ」
「ええっ!?小学生の女の子が二つも担当するんですか!?」
安村たちが思わず声を上げた。
「な、何言ってるの?玲奈ちゃんは18歳よ!」
玲奈は大人びて見えるから18歳ということにしたのだが、安村たちにはバレていたようだ。
「えーと、K文社の『鉄腕アトム』は横山さん、お願いします!」
焦りながら治美がそう言うと、金子が抗議の声を上げた。
「手塚先生!私がアトムを描きたいです!」
金子は物心ついた頃に鉄腕アトムのTV放送を見ていた世代だった。
自分で大好きだったアトムを描いてみたかったのだ。
「私は小さい頃、明治製菓のマーブルチョコについていたアトムシームを集めていた世代です。私はアトムから手塚フアンになりました!」
金子が必死にアピールしたが治美は首を横に振った。
「横山さんはK文社に顔を売ってもらいたいの。ほら、後々一緒にK文社の月刊誌『少年』で例のロボットマンガを描くからね」
「ああ、なるほど。『鉄人28号』ですね。それならしょうがないな」
「金子さんは『ぼくのそんごくう』はどうですか?全然話は違うけどTVアニメ『悟空の大冒険』の原作ですよ」
「ああ!『悟空の大冒険』も好きでよく見ていました!『鉄腕アトム』の後番組でしたね!アトムの最終回で地球を守るためにアトムが太陽に消えてしまって感動してたら、悟空が突然でてきて来週の予告をするから驚きましたよ」
「じゃあ金子さんは『悟空の大冒険』…、じゃなくて『ぼくのそんごくう』をお願いします。となると残った『ピピちゃん』と『ロック冒険記』はわたしと小森章子さんが担当になるわね」
「えっ!?うちがいきなり2作品も担当するんどす…ですか?」
「大丈夫!大丈夫!わたしと一緒だから大丈夫よ!」
治美は黒板に担当者の名前を書いていった。
「ジャングル大帝」「漫画少年」G社 玲奈
「リボンの騎士」「少女クラブ」K談社 玲奈
「ぼくのそんごくう」「漫画王」A書店 金子
「ロック冒険記」「少年クラブ」K談社 手塚&小森
「新世界ルルー」「漫画と読物」S 安村
「サボテン君」「少年画報」SG社 藤木
「冒険狂時代」「冒険王」A書店 赤城
「ピピちゃん」「おもしろブック」S社 手塚&小森
「鉄腕アトム」「少年」K文社 横山




