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REMAKE~わたしはマンガの神様~  作者: 八城正幸
第14章
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ロック冒険記 その5

 昭和30年2月6日、日曜日。


 治美は安村、赤城、藤木の3名のチーフアシスタントに召集をかけた。


 横山、金子、玲奈の未来人たち、そして新しいアシスタントの小森章子も虫プロ内に集合していた。


 安村たちは小森の方を見てヒソヒソと小声で話している。


「まーた、知らないアシスタントが増えてるぞ」


「変なおじさんが来たと思ったら、次は小学生の女の子。今度は――綺麗なお姉さんだな」


「手塚先生は何を考えてらっしゃるのだろうか?」



「はい、みなさん、静かにして下さい」


 手を叩きながら現れた治美は、髪の毛をツインテールにし、カントリー調の水色のチェック柄ワンピースを着ていた。


「はい!手塚先生!」


 金子が手を上げた。


「『オズの魔法使』を観に行ったでしょ?」


「えへへ!わかった?さすがは金子さん!」


 安村たちが首をひねっていると治美が説明をし始めた。


「安村氏たちは知らないの?漫画家になりたいならみんな映画を観なさい!ジュディ・ガーランド主演のミュージカル映画よ。私の格好は主人公のドロシーの服装を真似したものよ。こういうのはコスプレって言ってそのうち流行るから覚えておきなさいね」


 治美がそんな雑談をしている間に、背後の黒板に横山が何やら書きだした。


「みなさん、ご存じのように来週から手塚雅人さんが入試のために東京に行きます。雅人さんは入試が終わったら東京の出版社をいろいろと回って、原稿の持ち込みをして下さいます。そこで、これから1週間で持ち込み用の原稿をみんなで描きます」


 治美が振り返ると、黒板には持ち込む作品名と雑誌名と出版社名の一覧が書かれていた。



「ジャングル大帝」「漫画少年」G社


「リボンの騎士」「少女クラブ」K談社


「ぼくのそんごくう」「漫画王」A書店


「ロック冒険記」「少年クラブ」K談社


「新世界ルルー」「漫画と読物」S


「サボテン君」「少年画報」SG社


「冒険狂時代」「冒険王」A書店


「ピピちゃん」「おもしろブック」S社


「鉄腕アトム」「少年」K文社



 安村たちアシスタントは目を大きく見開いて驚いた。


「手塚先生!」


 安村が思わず立ち上がった。


「全部で9作品もありますよ!?1週間でこんなに描けません!」


「安心して、安村さん」


(手塚先生が安心しろと言う時ほど安心できないことはない)


 安村は心の中で毒づいた。


「9作品といっても、みんな最初の1話分だけよ。1作品につきせいぜい5,6ページしかないわ。ここにはわたし、安永氏、赤城氏、藤木氏、横山氏、金子氏、玲奈ちゃん、章子さんの8名も描き手がいるわ」


「それぐらいなら何とかなるかなあ」


「そうだな、8人もいるんだし」


 赤城と藤木がホッとした表情で言った。


「いや、待てよお前ら!大切なことを見落としているぞ!」


 慌てて安村が叫んだ。


「手塚先生、もしもこの持ち込みがみんな成功したら、一度の9作品も連載することになるんですよ!」


「そのつもりよ」


 ケロッとした顔で治美が答えた。


「そんなに沢山のストーリーを考えられますか!?」


「もうお話は最終回までできているから大丈夫よ」


 そう治美が言うと、事情を知っている未来人たちはウンウンとうなずいた。


 だが安村は信じられなかった。


「いつそれだけのストーリーを考えたのですか?手塚先生はついこの前まで単行本のネームを描いていたじゃないですか?そんなの到底人間業じゃありませんよ!」


「だって手塚治虫は人間じゃないもの。漫画の神様だもん!」


 おおっ!と全員が感嘆のどよめきを洩らした。


(いっけない!また自分で自分のこと神様だなんて偉そうなこと言っちゃたわ!)


 治美が恥ずかしそうに顔を赤らめた。

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