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REMAKE~わたしはマンガの神様~  作者: 八城正幸
第13章
56/128

ジャングル大帝 その2

初めて誤字報告をしていただきました。

こんな素晴らしい機能があったのですね!

早速修正いたしました。

ありがとうございます。

 雅人は茶の間で学生服を脱ぎ、部屋着に着替え始めた。


「それじゃあ、そろそろわたしはエリザさんちに戻りますね」


 治美はちゃぶ台の上の描きかけの原稿用紙をまとめると脇にかかえて立ち上がった。


「なんだ。晩ご飯、食っていかないのか?」


「雅人さんの勉強の邪魔したら悪いですから。もう追い込み時期でしょ」


「別に…。どうせ第一志望は落ちるとお前から聞いたからやる気なくなっちまったよ」


「あららら!ごめんなさい。やっぱり未来のことは言わない方がいいですね」


「そうだ!俺は来月になったら入試で東京に行くだろ。試験が終わってから、ついでに出版社巡りしてきてやるぞ。持っていくための原稿を用意しておけ」


「本当ですか!ありがとうございます!それでしたら、GD社の『漫画少年』に『ジャングル大帝』を持ち込んでもらえますか?」


「『ジャングル大帝』か。それって重要な作品なんだな」


「ええ。後に日本初のテレビ用カラーアニメになります。それにGD社の『漫画少年』は売れてもらわないと困るんです。『漫画少年』には読者の描いた漫画の投稿コーナーがあって、そこに応募していた読者の中から大勢漫画家が生まれるんですよ」


「よし、わかった!その1社だけでいいのか?」


「まだ書き下ろし単行本の仕事もあるし、アトムとジャングル大帝だけで手いっぱいですよ」


「これから何本も同時に連載するつもりなんだろ?もっと他の出版社にも売り込んできてやるぞ」


「でもわたし一人じゃそんなに描けませんよ」


「ちょっと待ってろ……」


 そう言うと雅人は茶箪笥の引き出しを開けて、中から分厚い茶封筒を取り出して治美に渡した。


「はい、お年玉だ」


「えっ!雅人さん、小遣い少ないのに無理しないで下さいよ!いつもお世話になっているのだから、逆にわたしが雅人さんにあげないといけないのに」


「バ、バカ言え!孫娘から金なんかもらえるか!お年玉ってのは冗談だ。封筒の中をよく見て見ろ」


 治美は茶封筒の中身を無造作にちゃぶ台の上にぶちまけた。


 手紙の入った封筒や漫画の原稿用紙がドサッと出てきた。


「何ですか、これ?」


「新しいアシスタント希望者の手紙だ」


「おお!こんなに沢山ですか!?」


「手塚治虫の住所が俺んちになってるからみんなここにファンレターを出してくるんだ。アシスタント希望のヤツも大勢いたから、以前から手紙のやり取りをしていたんだ」


「あ、ありがとうございます!アシスタントを大勢雇ったら沢山漫画を描けます!」


「履歴書と絵のうまさを見るために自分で描いた漫画原稿も送ってもらった。誰を採用するかは治美が決めてくれ」


「うわあー!こんなに一杯いたら目移りしちゃうな」


「それぞれの人生が掛かっているんだ。慎重に選ぶんだぞ」


「わかりました!」


 治美は期待に胸弾ませ、きゃっきゃと喜びながら履歴書を見ていった。


 次々と履歴書を見ていると、次第に治美が静かになっていった。


「吉沢友里恵、高峰よし子、鈴木恵子、小森章子、角田澄江…。女性ばっかりですね」


 治美は不満げに呟いた。


「手塚先生が女性だからな。どうしてもそうなるな。なんだ、不満か?」


「いえいえ!とんでもないです!」


 雅人が履歴書を指さしながら言った。


「俺のお勧めは高峰よし子と鈴木恵子だ。この二人は東京で実家暮らしをしている高校生だ。お前が上京してから通いで手伝ってもらえばいい。それとこの小森章子って女性は飛び抜けて絵が上手い。今は大阪のカフェーで女給をしているらしい」


 治美は漫画原稿を一枚一枚手に取りじっくりと見ていった。


「みんな、絵がうまいですねぇ…」


 と、一枚の原稿を目にして治美の手が止まった。


「―――このイラストは?」


 治美がいろんなキャラクターが描かれた原稿を手に取り、雅人に尋ねた。


「ん?えーと…、ちょっと待てよ。ああ、この子はダメだよ」


「えっ!?どうしてですか?」


「望月玲奈。まだ十二歳の子供だ」


「ぜひこの子をここに連れて来て下さい!」


「急に何を………………?そうか!そうなんだな!?」


 治美はコクリとうなずいた。


「望月玲奈は未来人です。間違いありません!」


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