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秋の桜子エッセイ

その名……漢名は鳳梨(ほうり)といふ

作者: 秋の桜子

この季節になると思い出す、高校時代のエピソードです。

 かの香りたかいモノの名前は、漢名は鳳梨ほうり、アナナスと呼ぶのである。そして結実した果実は


 パイナップルなのである。


 野菜である。野菜なのだ。いちごもメロンもバナナも、分類は野菜なのである。


 木から周年採取出来るのが果物なのである。農業経営を担当するご隠居は、そう教鞭をとったのだ。


「ふふふん、知らなかっだろう、ワーハハハ」


 かくしゃくたる爺先生。知るわけないだろ!とピカピカの一年生のときは思った。


「長寿日本と言われておるが、君達が爺婆になる頃は、きっと短命となる」


 そう話すご隠居先生。質問を許すとの声に、なぜか?と聞けば、


「公衆衛生が行き届き、暑いときには涼しく、寒いときには暖かく、旨いものを食べ脂質を取り込み、無意識不可抗力に、合成保存料、及び生鮮保存剤を取り込んでいる身体は、弱いとワシは思うのだ」


 一同ぐうの音も出なかったのは言うまでもない。




 パイナップル。丸ごと売ってるパイナップル。


 南国の香り高い果物。ここにアナナスの果実がある。漢名は鳳梨ほうり、パイナップルなのだ。


 私達農業高校、園芸科、三年生、奥原チームの一同は、実習ハウスに集結をしていた、ある休日の午後。なぜに休みの日に学校か、それは当直当番なるシステムがあり、それぞれの科の可愛い生物ちゃん達の、お世話に来るのである。


 畜産科は、牛さん豚さん、コッコちゃん。造園科は植木とか、食品加工科は無いだろと聞けば……


「味噌とか納豆とか、ハムとか、ベーコンとか、翌日売りに出すパンや仕込みがあったりする……」


 ステンの浴槽に畜産科から来る、肉食用ブロイラーちゃんが鳥肌立ててご入浴し、お待ちしているらしい。


 良かった……身長が低くて、ぶどうのジベレリン処理する時に、液剤顔に浴びる試練があっても、内臓処理はなーい。


 消毒バッチリなので毛虫もいなーい。蛇はいるけれど。ちなみに高校印のソーセージも作ってると、友は言っていた。豚さんの腸詰めである。豚さんの!


 勿論、手作りなのである!ちなみに畜産科は、食肉加工するので、食品加工科には、さばいたばかりの、鮮度の良い原材料状態で届けられている。


「私スプラッタ見てもどうもなくなったわー。本物のほうが綺麗だし、温度感がないのよね、質感とか」 


 しれっと話す、中学校からの友人、13日のジェイソン君を見て、キャーキャー言ってた、繊細な友の姿は消滅していた。  


 そんな午後の休日、歩いて行ける、JAぽにゃラピーで仕入れてきたそれをステンレス製の、作業台の上に置き取り囲む私達。綺麗に拭いた台の上にはまな板と包丁。


 その上に首チョンパを待つパイナップルがゴロン。我々の任務。それは……


 ――、パイナップルの挿し芽をしよう!そしてミニミニパイナップル観葉植物を作るのだ!


 なのでまずはパイナップルの上部が必要なのである。それと植木鉢、発泡スチロール材料の鉢底資材、パーライト、バーミキュライト、鹿沼土、水苔、マグァンプk!


 どの辺りでチョンパするかで成功、腐るの第一段階。葉の根元から数センチ下を切るのだが、個体による完熟度、大きさによりほぼ神任せの世界。


 ここだ!とスパッと切り落とす。ちなみに包丁まな板は完備されている。それはマスクメロンを栽培しているからだ。マスクメロン、高級感あふれるそれ。私達は懸命にお世話をする。


 そして糖度チェックをし、出荷にならない代物は、生徒の食べ放題になるのだ。しかし私はマスクメロン成長途中を見続けたのと、食べ放題の甘いトラウマにより、メロンは嫌いになってしまった。




 さて、パイナップルである。切り落とした、果実部分は美味しく食べるために、園芸科、野菜実習ハウスの作業室に置いてある冷蔵庫に素早く運ばれる。冷蔵庫……この中にはシーズンには、トマトが占拠している。


 形の悪いそれは、完熟迄置かれて冷蔵庫、そして食べる少し前に、ステンボウルの氷水の中にダイブ!生徒の食べ放題となる。これは食べても食べても飽きない!夏のハウス作業の後の極楽タイムなのだ。


 トマトを、どかしてパイナップルを寝かせる。冷やして食べるのだ。ラップの上には名前を印しているのは当然、三年生の物に、下級生は手出しはできないのだ。


 ハウスに戻ると、植え付け準備に入る。鉢にネットを入れ、発泡スチロール、肥料を混ぜ込み配合した土、鹿沼土、そして水苔に巻かれたパイナップルの葉っぱ部分を丁重に植え込む。固定するために周囲にバーミキュライトをいれ、水苔を押し込んでいく……。 


 後は運を天に任せるのだ。上手く発根すれば、そのままアナナスが育ち、中心からにょーんと茎が伸びてきて、小さな握りこぶし位の花が咲き、そして!


 ミニミニパイナップルがちんまり結実するのだ!


 去年卒業された先輩が、作っててそれはもう可愛くて可愛くて、キャーキャーみんなで、眺めたのだ!


 後は腐らぬ様に、乾かぬように水やり!温度管理!夏場の楽しみ!


 育て!ミニミニパイナップルちゃん!


 お、わ、り。

水やりホースと戦う一年生、を次回書こうかな(^o^)/

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― 新着の感想 ―
[一言] 農業高校楽しそうですね (*´▽`*) 拙者は中学のころ部活でランを枯らしました ><。 すみません(懺悔)
[良い点] 初めまして(*´ω`*) 農業高校出身者仲間さんの作品だったので、飛びついてしまいました(笑) 私は授業ではなく部活で蒟蒻芋を植えたんですが、 三年生になってもまだ収穫できなかったなぁ(…
[良い点] ものすごい盛りだくさんの高校時代ですね。 輝いているし、スプラッタだし。 [一言] 昔の少女マンガの「ここはグリーン・ウッド」てご存じでしょうか? あのマンガを読んだような気分になりまし…
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