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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
やり直し編

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御影新のやり直し⑤


 反省文を書くことはとても苦痛だったけど、文を書くこと自体はそれほど難しくなかった。ごめんなさい物を大切にしますと適当に書いておくだけなのだから。


 もともと僕は加藤君にいじめられていた被害者なのだ。細井先生は僕の軟弱な態度が気に入らなかったみたいだけど、担任の先生は少し同情してくれているように感じた。

 結局、反省文と軽い会話だけでその日はすぐに解放された。


 もっとも、同情なんて今も昔もいらないんだけどね。そんな気があるなら加藤君をしかりつけてどうにかして欲しかった。今となっては……もうどうでもいい話だけど。


 放課後、無人の教室にて。

 僕は物思いに耽っていた。

 これからのことを整理するためだ。 


 僕は元の世界に取り残された。無能なまま、何の力も持たずに。

 それは認めなければならない事実。


 僕は始めから最強スキルを持って大暴れする主人公の物語が好きだけど、努力とか友情で修行して挫折して強くなっていく物語もあることを知っている。

 そう、今は試練の時なんだ。

 主人公である僕に課せられた、受難の時。


 無能で無力なこの僕が、どうやってこの世界で成り上がっていくか?

 方法は一つだけ。


 スキルを使うために必要なバッジを手に入れることだ。


 だけどそれが苦難の道であることは僕も知っている。ここは異世界でもなければ、貴族さんたちもいない。彼らが作るバッジを入手することは、基本的に不可能なのだ。

 だけど、可能性がないわけじゃない。

 可能性のある方法は……三種類。

 

 ①時任君、園田君からもらう

 前回の世界では、時任・園田君はすぐにこちらの世界へと戻ってきた。戻るきっかけを作ったのは僕だ。けど今回の世界でも時間は前後するにしても、帰還する可能性は高い。

 ただ彼らがバッジを持っている可能性が低い。僕がいてもいなくても、二人の性格を考えるなら貴族さんたちと対立してたと思う。それにスキルも無能なものばかりだったから、バッジは必要じゃないのだ。

 二人は加藤君と違って、こっちの世界に戻ってきても教室で授業を受けていた。見つけて話をすれば、異世界の情報をうまく聞き出せるかもしれない。


 ②下条匠からもらう

 この世界の下条匠と僕はまだ対立していない。したがって助力を頼んだりバッジをねだったりすることは十分に可能だ。

 でも、下条君はこの世界に帰ってくるのが遅い。

 話は聞いていないけど、しばらくは異世界で過ごすつもりだったのかもしれない。前回の世界ではずいぶんと活躍して、異世界で魔族さんたちをほとんど倒しつくしたと聞いている。

 こちらの世界とあちらの世界、時間の流れに差があるとしてもかなりの期間だ。彼の帰還が魔族たちの大暴れ以降になるのは間違いない。

 スキルを持たない僕にとって、魔族や魔物との遭遇は死を意味する……。


 そして、下条匠は魔族たちと対立している。

 彼を探して彼に近づくということは、必然的に僕自身も危険な目にあってしまう。スキルも何も持たない今の僕にとって、魔物どころか加藤君の配下一人でもとんでもない強敵だ。下手をすれば殺されてしまうかもしれない。

 

 下条匠がバッジを持っているのかどうかは分からない。

 僕にスキルが効かないから使わなかったのか、それとも本当に使えなかったのかは今となっても分からない。ただスキルを封じる道具を持っていたんだから、使うための道具を持っていてもおかしくはないと思う。

 

 リスクは少し増すけど、話せるなら試してみたい。


 ③加藤君からもらう。

 加藤君は確実にバッジを所持している。彼は貴族とも仲がいいし、それを歯に仕込んだりして隠す努力もしているから。


 ただ、僕とそれほど良好な関係でないのが一番のネックだ。園田君や下条匠は拝み倒せば貸してくれそうな気もするけど、加藤君だけはそううまくはいかない。

 僕は加藤君のことが嫌いで、向こうもおそらく僕のことがそれほど好きじゃない。試しに、というレベルでもバッジを貸してくれることはない。むしろ力を使って不愉快ないたずらをされてしまう可能性すらある。 

 下手をすれば、僕自身が殺されてしまうかもしれない。

 

 加藤君からバッジを手に入れるのは最後の手段にしたい。


「こんなところかな……」

 

 目下最大の目標は、園田君や時任君と会うこと。それはこの教室でずっと待っていれば達成される。


 でもこの世界で僕は何の力も持たない一般人だ。放課後の深夜、教室で一人残って彼らの帰還を待ち続けることは……はっきりいって不可能の近い。徹夜は辛く、それ以前に細井みたいな教師に見つかったらまた怒られてしまう。 

 常識的な範囲で教室にいて、深夜の時間帯はあきらめるしかない。二人は元の世界に戻ってきても教室で授業を受けていたから、そこで話をすればいい。


 園田君や時任君の帰還時、まだ魔族大侵攻は始まっていない。関東は安全なのだ。少なくとも二人が帰るまでは焦らなくていい。

 

 でももし、彼らがバッジを持っていなかった……その時は。


 今度こそ、僕は本当に覚悟の選択を迫られるだろう。

 夢を捨て、安全な関西圏に逃げ出すか。

 夢を追いかけて、この地に残り下条匠や加藤君と接触するか。


 耐えるんだ……耐えるんだ僕。

 今は主人公受難の時。この修行帰還を乗り越えれば、僕は失われた力を取り戻して大活躍できる!

 


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