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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
やり直し編

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御影との再会

 俺は風俗街へと来ていた。


 かつて華やかな夜の街といった様子だったこの場所も、魔族の脅威にさらされた今となっては廃墟に近い。そこを走っている俺はかなり目立ってはいたが、誰にも見つかることはなかった。

 加藤は自らの配下として〈スカル・ジャンキー〉と呼ばれる組織を作り出していた。だが御影の気質を考えるとそんなことはしないと思う。有用な薬を生み出す加藤とは違って、御影のスキルは人望を得るには弱いと思う。そして御影に部下を従えるほどの器量はない。

 よって、ここまで配下に遭遇などといった事態も起こらなかった。配下がいれば〈操心術〉を使えるのだが……いないものは仕方ない。


 俺は発信器が示していたラブホテルへと入った。

 他の建物の例にもれず、電気が通っていないようだ。薄暗く、人の気配もしない。


 俺はこの建物の中で御影とリンカを見つけ出し、可能ならば奇襲を仕掛けたい。


 御影のスキル――〈時間操作〉はあまりにも危険だ。薬の合成時間という制約がある加藤と違って、一瞬で能力を発動できる。

 加藤の時は奇襲に失敗しても勝つことができた。だけどもし相手が御影だったら、あの時点で負けていた。

 

 焦ってはいる。

 だけど、慎重に行動しなければならない。


 負ければ……御影は容赦なく俺を殺すだろう。加藤のように執拗に暴力をふるうことはないが、奴には俺の子供を殺した前科がある。不法な行為にかっこよさや快感を見出す加藤と違って、それを悪いことと理解していない……。


 五階建のこの建物。平面地図に発信器が示した場所であるから、どの階かは分からない。

 しらみつぶしに探すしかない。


 ……それは、三階の廊下を歩いていた時のことだった。


「…………」


 幾多の戦闘をくぐり抜けてきた俺だからだろうか。

 感じる。

 この部屋の中に、何者かの気配を。


 当然ながら、ドアには鍵がかかっている。電気も従業員もないこの状況では、鍵を手に入れることは難しい。

 つまりこの部屋の中に入るということは、ドアや壁を壊して無理やり侵入するしかない。しかしそれだけ音を立てれば、たとえこの部屋に御影がいなかったとしても気づかれてしまうだろう。


 御影の能力は〈時間操作〉。何か怪しげな音が聞こえたら、時間を止めて様子を見に来るかもしれない。 そうなってしまえば俺に抗う術はない。時を止めた空間で殺されるか、武器を奪われ無力化されるか。いずれにしても避けたい展開だ。


 俺はドアに耳を当てた。

 こうすることでしか、中を確認することができない。先ほど感じた気配は間違いないと思うのだが……。


「……ん」


 どうやら、当たりだったらしい。

 防音仕様ということではあるが、耳を当てたこの状況であれば、ごくわずかではあるが中の声が聞こえた。


「ああああああああああああああああああああっ!」

 

 それは、明らかに女の子の悲鳴で。


 うそ……だろ。 

 俺は胸が締め付けられるような激しい動悸を感じた。

 心臓が破裂しそうなほどに脈打っている。とても……とても嫌な想像をしていたからだ。加藤から聞いた与太話が、思い出したくもないのに頭の中に浮かび上がってくる。


 ロリコン。

 時間操作。

 妊娠。 


 まさか、もう……。


「あああああああああああああああああ、許してええええええええええええええええええええ。生まれるうううううううう」


 この声は、まさか……。


 気が付けば、俺は奇襲のことなどすっかり忘れ……頭に血が上っていた。

 慎重さとか、奇襲とかスキルとか。そんな薄っぺらい単語は頭の中から消え失せていた。リンカを守りたい。その気持ちだけが体を動かしていた。


「御影ええええええええええええええっ!」


 ドアをけり破り、中に侵入した。

 ……の、だが。


「え…………」


 そこには、予想だにしない光景が広がっていた。


「何、やってんだよ、お前」


 リンカと御影は、ベッドの上にいた。

 密着している状態ではあったが、拘束したりとか暴力をふるったりとかいった様子はない。そもそも時間を操れる御影なのだから、逃げ出すことは不可能だ。

 にやつく御影と、震えるリンカ。御影はタブレット端末を持っており、それをリンカに見せつけているようだった。


 行為に及んでいる様子はなかった。


 先ほどまでの悲鳴に似た叫びは、リンカでもなければ御影でもない。タブレットの……おそらくは再生された動画か何かを大音量で流しているだけだった。


 ドアをけり破ったことによって、二人は俺の存在に気がついている様子だ。


「お父さん……」


 リンカが、俺の顔を見て涙ぐんだ。

 お父さん、なんて呼ばれたのは初めてだった。俺のことを嫌いだと言い、強気な姿勢を崩していなかったリンカが、こんなにも弱っているだなんて。。


「フヒヒヒ、自分がこれからどうなるのか、教えてあげてるのさ」


 御影はそう言って、俺にタブレット端末を投げつけてきた。


 そこに映されいた光景を見て、俺は吐き気を催した。

 加藤の言っていたことは、誇張でもなんでもなかったのだ。

 妊娠した女の子の映像が……。 


「こ……この子……」


 俺はタブレットに映っている女の子に、見覚えがあった。


「優の妹の……佐奈ちゃん」

「あははははっ、そーなんだ。園田君の妹さん、知ってるんだ」


 優は幼馴染である一紗の元彼氏であり、俺の友人でもある。数は少ないが、何度かあいつの家を訪問した。

 その時、多少話をしたことがあった。


 学園での兄の様子を質問されたり。

 顔の良い兄を自慢されたり。

 一紗とも仲良く話をしていたり。


 いい子だった。あまり話したことがない俺でも理解できるほどに。


 顔見知りの俺でさえ、こんなにも心を痛めているんだ。身内で、しかも大切な妹だった優の気持ちはとてもではない想像できない。


 思えば、再会したときの優はひどく追い詰められいた気がした。単身で避難民を守り、魔族や魔物たちと戦うなんて、命の危険すらある無謀な行為だ。彼にそんな捨て身の覚悟をさせたのは、妹を守り切れなかった自責の念なのかもしれない。


 すべては……御影のせいだ。


「おまえは……ここで死ぬべきだ」


 奇襲はできなかった。

 でも……俺はこいつを倒さなければならない。


 リンカのために。

 優のために。

 そして、これから犠牲になってしまう……この世界の人々を守るために。


素晴らしい提案をしよう。

お前も『読者』にならないか?


その拝読、練り上げられている

至高の領域に近い

なぜお前が至高の領域に踏み入れないかを教えてやろう

ブクマしてないからだ、評価してないからだ、感想書いてないからだ

読者になろう

そうすれば百年でも二百年でも感想を書ける、レビューも書ける。


ブクマしなければ……殺す

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