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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
やり直し編

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二人の居場所


 イグナートやマリエルと戦った荒野にて。

 俺は春樹からリンカとエドワードが攫われた時の状況を聞いた。


 突如現れた二人。

 加藤の脅し。

 そしてエドワードの犠牲。


 小鳥は自分に責任を感じているようだが、話を聞く限り責任なんて全くない。むしろ出産間近なのに無理をさせてしまって申し訳ないほどだった。


 そして、問題はそれだけではない。 


「これじゃあ……リンカたちがどこにいったのかも分からないじゃないか……」


 時を止めて立ち去ったのなら、人の目どころかカメラにすらうつっていないはずだ。だとすればもう、奴らを追うことはできない?

 俺は……どこか遠くの地でリンカやエドワードが犠牲になっていくのを、ただ待っていることしかできないのか?


「くそっ!」


 いらだちから、俺は地面に拳を打ち付けていた。


 二人は俺たちを助けるためにここに来たんだ。異世界人の子供だから、援軍になれるのは自分たちしかいないからと……こうしてやってきてくれたんだ。

 まだ子供なのに、そんな役割を俺たちは強いてしまった。


 俺が異世界に帰るだなんて言わなければ……。

 いや、そもそもあの時御影や加藤を殺してさえいれば……。


〝足取りを追えるかどうかは微妙なラインだが、有力な情報なら提供できる〟

「本当か春樹? どうやってあいつらの居場所を?」

〝子供だから迷子になっては困ると思ってね。勝手ながらここに来た時、発信器を取り付けさせてもらった。親の君に相談しなかったのは申し訳なく思うが〟

「いや、いいさ……」


 どうせ俺はイグナートたちと戦っていたんだ。許可を待っていたら本当に足取りがつかめなかったかもしれない。


〝服に縫い付けてある小型の発信器だ。よほど丹念に探りを入れなければ気づかれないだろうね〟

「それで春樹、奴らはどこにいるんだ?」

〝奴らは今、君の住むその町にいる。おそらく無人のホテルを使ってね〟

「……っ!」


 予想外の言葉に、俺は動揺を隠せなかった。


「……なんで奴らはここに来たんだ? 関西からはそんなに近くもないはずなのに……。やっぱり魔王の配下になってるってことか?」

〝おそらく、君に見せつけるためだろう〟

「俺に……」


 なるほどな。

 俺は異世界で加藤と戦った時のことを思い出した。

 当時の奴は俺に全く恨みなどなく、その矛先はつぐみへと向いていた。素行の悪さを注意されて腹を立てていたのだ。

 その時加藤は、大統領であるつぐみに媚薬を使用しようとしていた。そしてその痴態を国民に晒して、恥をかかせようとしていたらしい。


 派手好きでサディスティックな奴の性格を最もよく表したエピソードだと思う。今回はおそらく……俺とつぐみに見せつけるためにここまで来ているんだ。

 御影も俺が乃蒼を寝取ったとか言って恨み言を言ってたからな。やはり同様に俺に見せつけたい意図があるのかもしれない。


〝おそらく数日中に加藤から連絡を入れるつもりなのだろう。お前の息子たちにあわせてやる、とでも言ってね〟

「そんなの待ってたら二人が大変な目にあうだろ! 俺は一分一秒でも早くあの子たちを助けたいんだ!」

〝分かってるさ匠。俺も同じ意見だ。今から発信器の場所を言うから、そちらに向かってほしい〟

 

 俺は春樹から二人の居所を聞いた。

 ここより離れた、イグナートの魔法で壊されていないエリア。駅の近くで繁華街だった場所だ。


 加藤と御影、二人は近くにいるわけではなく遠く離れているようだ。

 まあ、これはある程度予想できた結果だ。今は仲間として一緒に行動しているようだが、もともとはいじめをする側とされる側だった。やはり過去のことで多少なりともわだかまりがあるんだと思う。


 場所は……ここからだと加藤の方が近いな。御影は少しだけ離れている。

 エドワードを連れ去った加藤の居場所はビジネス街として有名な場所だ。それほど背は高くないものの、ビルと呼んでもいいような建物が散在している。奴がいるとされるホテルもビジネスホテルタイプだ。 

 リンカを連れ去った御影は……風俗街の近くだな。場所がラブホテルになっている。あえて俺たちが近づかない場所を狙ったのかもしれない。


「二手に分かれていくのがベストだな。私たちも一緒に」

「いや……俺一人で行く」


 雫の申し出を、俺ははっきりと断った。


「相手は加藤と御影だ。これまでの魔族たちとは違う、スキルを使った戦いになる」

「……でも」

「特に加藤には例の媚薬がある。もしここにいる誰かが、一紗みたいなことになったら大変だ」

「……分かった」


 不承不承といった様子だが、雫が頷いた。鈴菜やつぐみも親としてついていきたい気持ちはあるだろうが、はっきりいって非戦闘員の同行など論外だ。


「俺一人で行く。雫や他の子たちは非戦闘員の護衛を頼む。学園にいる一紗も守ってやってくれ」

「匠は……大丈夫なのか? 奴らに勝てるのか?」

「奴らはまだ気が付いていないはずだ。エドワードとリンカがこの地にやってきたことによって、俺が新しい力を得たことを」


 そう。

 魔族には通じ切らなかったこの力。

 人間相手であれば、十分に効果を発揮するかもしれない。


 これはチャンスだ。

 まだ奴らは俺を呼ぶ準備ができていない。そして俺たちは奴らの居場所を知っている。奇襲の条件としては申し分ない。

 

 まず全力で加藤を叩き、そしてそのあと御影を攻略する。生かすとか許すとか、もう甘いことを言っている余裕はない。

 俺は奴らを殺してでも子供たちを守ってみせる。


 それで犯罪者扱いされても関係ない。

 今度こそ永遠にこの世界とは別れを告げて、異世界に骨を埋めるつもりなのだから。


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