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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
イグナート・マリエル編

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思わぬ再会



「みんな、ケガはなかったか?」


 残りのメンバー全員は、体育館に集まっていた。

 戦闘のできるエリナ、美織、月夜が前へ。その他非戦闘員は後ろに待機。それなりの魔族であれば対応できる陣形だと思う。

 だが、さすがにあのゼオンが相手とあっては、焼け石に水だろう。こうして全員無事だったということは、奴に敵意がなかったんだと思う。 


「あの魔族は僕たちを傷つける気はなかったようだね。紳士的に対応してくれたよ」


 答える鈴菜に傷は見当たらない。他のクラスメイトたちも同様だ。つまり、本当に戦闘自体が起こらなかったということ。


「罠かもしれないと思ったが、ここであのゼオンと戦っても勝てるわけがないと思ってね。素直に従う以外方法はなった」

「それで正解だと思う」


 良かった。

 下手に反抗していたら、大変なことになっていたかもしれない。


「すごい……力の差を感じたわ」

「……不覚」

「あたしは戦えば勝てた! 正義はいつも勝つ!」


 エリナはいつものことだが、月夜と美織は明らかな実力差を感じていたようだ。無理もない。ただの聖剣使いではどうにもならないほどの実力者だったのだから。


 ゼオン。

 奴が人を殺し、剣にしていたのは間違いない。残虐とまではいかないが、それなりに人を殺す危険魔族だった。

 でも、俺の妻たちに手をかけることはなかった。

 俺が全力で戦えるように配慮してくれたのかもしれない。戦闘狂ゆえに……歪んだ判断だとしても、今回はそれに救われたことを嬉しく思う。


 さて、終わったことはいい。

 今後のことを考えなければ……。


「ここまで大規模な戦いをするつもりはなかったけど、俺はゼオンを倒してしまった。そのことに気が付いた魔族たちが、今度こそ本気で俺たちを攻撃してくるかもしれない」


 ゼオンは並みの魔族ではない。そいつを俺が倒したということは、俺は魔族たちにとって強者ということ。


 基本的に戦闘狂な魔族たちは、もう俺を見逃してはくれないだろう。


「戦略を考えるなら、一旦ここを離れるべきだと思うけど」

「私も匠の意見に賛成だ。もう仲間は全員見つけたのだから、拠点をここに固定しておく必要はない」


 頭のいいつぐみの同意が得られたわけだから、その方向で話を進めていく必要がある。


「じゃあ、さっそくだけどみんな荷物をまとめて……」

 

 そこまで言ったとき、俺の言葉は遮られた。


「グオオオオオオオンッ!」

「…………っ!」


 これは。

 外に放った魔物たちが侵入者を知らせる、そんな鳴き声だ。

 誰かが、ここにやってきた?


 まさか次の魔族が? あまりに早すぎる。ゼオンクラスの実力者だったら、みんなを危険な目にあわせてしまうかもしれない。


「俺が囮になって敵を引き付ける。みんなはその間に校舎の裏から――」

「おーい!」


 逃げようとしていた俺のもとに聞こえてきたのは、そんな間の抜けた声だった。


「俺だ、俺。敵じゃないんだ! 誰かこの魔物を止めてくれ。頼む!」


 この声は……まさか。


「りんご、すぐに召喚した魔物たちを遠ざけてくれ。敵じゃない」

「う、うん」



 りんごが魔物たちに指示を出す。するとけたたましい鳴き声はすぐに止まった。

 しばらくすると、体育館に一人の人物が入ってきた。

 背は高く、まるで俳優か何かのように整った顔立ちをしている少年。手には魔剣らしき剣を携えている。


「いやーびっくりした。一応春樹から聞いてたんだけど、お前ら、剣や魔法だけじゃなくて魔物も扱えるようになったんだな。驚いたよ」

「優、優なのか?」


 園田優。

 俺の友人であり、かつて異世界に召喚されたこともあるクラスメイトだ。


「優、お前ここに残ってたのか? 関西に避難しなくても大丈夫なのか?」

「俺はさ、自分の意志でここに残ってるんだ」

「ここは危険なんだ! 魔王だって他の上級魔族だっている。悪いことは言わないからさ……逃げて……」

「あの時」


 優の顔に影が差す。


「あの時、俺さ……お前が御影を殺そうとしたの止めただろ? あれがなければ、こんなひどいことにはならなかったんだ。俺が魔王を復活させたようなものさ……」

「…………」


 自虐的に笑う優を見て、俺は何も言えなくなってしまった。

 あの時、とはまだ異世界にいた頃、俺と御影が戦った時のことだ。俺は奴を追い詰め、殺す寸前までいった。それを優に止められてしまったのだ。

 

 確かに、あの時優が止めなければ御影は死んでいたはずだ。確か魔王は、『御影の〈時間操作〉スキルでこの姿になった』って言ってたよな。だったら御影がいなければ、確かに今この現状はなかったかもしれない。

 だが俺は優を恨んではいない。確かに優にも責任があるかもしれないが、俺も全く無関係というわけじゃない。優に説得されたとはいえ、御影を殺さなかったのは俺の決断。そして魔王は俺と乃蒼の子供なのだ。

 他人を非難できるほど、責任がないとは思っていなかった。


「お前に比べれば大した腕じゃないけど、少しでもみんなの役に立ちたいんだ。魔剣も持ってるしな。もちろん無理はしないようにしてるさ」

「……決意は固いみたいだな。だったら俺も止めたりはしない」


 優の意志を尊重することにしよう。


「それより、ここに俺たちがいるって知ってたんだよな? 春樹から聞いたのか?」

「ああ、その件なら」


 優は懐から無線機のようなものを取り出し、操作を始めた。


「春樹、春樹、聞こえるか? 応答してくれ」

〝聞こえている。匠のところについたのか?〟


 無線機から聞こえてきたのは、俺のクラスメイトである時任春樹の声だった。


ここからがイグナート・マリエル編です

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