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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
ゼオン編

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58/120

生きていたミカエラ


 捜索魔法〈エコー〉を使い、魔族たちの注意を引く。

 その間に、リンカとエドワードを逃がす。

 俺たちの作戦が始動した。


 俺たちはまず、二手に分かれた。


 小鳥、子猫、そして子供たちが車に乗って西南側へ。

 そして俺、つぐみ、りんご、雫が東北側へ。

 残りは校舎で待機。

 この配置は魔族の勢力図を考えて決めたことだ。

 魔族は東京都を中心とする関東地方に散らばっている。ここは関東の西側であり、山一つ越えた南側には海が存在する。つまり奴らは東や北側からやってくるのであって、南や西側から戻ってくるとは考えにくい。

 つまりここで俺たち側が〈エコー〉の魔法を使えば、小鳥やリンカたちの安全性はかなり増してくれるはずだ。

 

 さて、俺は〈エコー〉という魔法をうまく使えない。そもそも魔法自体あまり得意とは言えなかったからな。

 その点、異世界で魔法使いとして戦っていたりんごであれば、上手に魔法を使うことができる。現に彼女は俺から口頭で説明された〈エコー〉の魔法を完全に身に着けている。


「始めるよ」


 りんごが杖を振るった。


 これが〈エコー〉か。

 あらかじめ天使から話を聞いていたことだが、俺はその力を感じ取ることはできなかった。ただゆっくりとではあるが、草や木の葉が波紋上に揺れていたような気がする。意識していないと分からないレベルではあるが、どうやら魔法が発動したらしい。


 さて……その成果は?


「いた」


 目を開いたりんごが、真っ先にそう呟いた。


「ミカエラさん、いたよっ!」

「本当かっ!」


 この魔法の第一の目標、それは行方不明となった俺の妻……ミカエラを見つけ出すことだった。


「ここからずっと東、少し高めの……たぶんビルみたいなところの屋上。動けないよう……縛られてるんじゃないかと思う。体が少し動いてるから、きっと生きてる」

 

 そんなことまで分かるのか? なかなか便利な魔法だ。もっと早く知っていれば……。

 いや、そんなことはどうでもいい。


 ミカエラ、やはり囚われていたのか。しかも下手をすれば半年近く……ずっとずっと……。

 人間なら死んでいたかもしれない。いや天使というその身であっても、辛く苦しい日々だったのだろう。

 俺は彼女の不幸を想像して、思わず涙が込み上げてくるのを感じた。早く迎えにいってやりたい。


「それにしても、なんでミカエラは囚われてるんだ? 魔族だったら戦ってすぐに殺したりすると思うんだけど」


 以前、異世界で魔族に鈴菜が捕まったことがある。

 ただあの時は変身してなりすましが目的だった。大妖狐マリエルは魔王の命令によって死ぬつもりだったんだから、俺たちをおびき寄せ戦意を焚きつけるための道具だったのかもしれない。

 まさか今回も、俺たちをおびき寄せるための罠? 考えられなくはないが、奴らの力ならもっとすごい魔法で俺のことを見つけられる気がする。それをしないのは、遊び半分で俺のことを舐めているからなのかもしれないが……。


「私たちをおびき寄せるためか、あるいは天使を使って何かをしたいのか。どちらにしろ、あまり気持ちいい理由ではないだろうな」


 つぐみがそう推測する。


 さて、目論見通り〈エコー〉を発動させた。

 ここにいるのは魔法を使うりんご、運転手のつぐみ、そして護衛としての俺と雫の四人。

 このまま車に乗って、学園のある街へ戻るのが当初の計画なのだが……。 


「俺たちさ、そこに向かわないか?」


 俺はそう提案した。


「どういうつもりだ匠? ミカエラのもとには魔族たちが……」

「今、敵は俺たちの存在を認識して、こっちに向かってきてるんだろ? だったらそれを逆手にとって、ミカエラを救出してしまえばいいんだ」


 もちろん、俺なんて無視する魔族もいるかもしれない。

 だが平時に比べて少しだけ警戒心が下がるかもしれない。なにより、ミカエラを捕えていることが魔族の総意だとは思えない。


「下手にミカエラを移動させられたら厄介だ。せっかく見つけたこのチャンスをさ、逃したくないんだ」

「罠だとしてもか?」

「ここで俺たちがミカエラを見捨てたら、あいつらはきっとこう思う。『そこまで馬鹿ではなかったか』って。そしてそのあと、用のなくなったミカエラが……殺されるかもしれないだろ?」


 生きていると知って、嬉しかった。

 心の中では、もう駄目かもしれないと諦めかけていた。 

 だから……。


「ここでミカエラを救出しよう。そして俺たちは、この世界に来て初めて……全員揃うんだ! それでいいよな、みんな?」


 少し冒険しすぎなのかもしれない。

 そんなことは分かっていた。でも彼女が生きていてうれしいと思う気持ちを抑えられなかった。

 こ良い流れのまま、すべてがうまくいくような気がした。


「もとより、敵が迫っているここにいることは危険だ。ならばこの場を離れミカエラのもとへ向かうのも一つの作戦。私は悪くないアイデアだと思う」

「りんごもたっくんに賛成」

「ふんっ、りんごが賛成なら私も付き合ってやる」

「みんな……」


 みんな、気持ちは同じなんだ。

 家族に会いたい。

 ただ、それだけのこと。


「ただし、あまり無茶はしないでくれ」


 少し浮かれていた俺に、つぐみがそう諭した。


「ミカエラが囚われている場所は分かった。そこまで助けにいくところまではいい。だがもしそこにいなかった場合は、諦めるんだ。いなくなったミカエラは探し回るほど……私たちには余裕がない。誓えるか? 匠」

「俺だってみんなを危険な目にあわせたいとは思ってないさ。無理だと思ったらすぐに諦める。それでいいだろう」

「分かっているなら問題ない」


 よし、これで話はまとまったな。


「じゃありんご、車の中で詳しい位置を教えてくれ」

「えっとね、たぶん隣の隣の市だと思うんだけど、駅前に噴水があって……」


 俺はりんごから話を聞きながら、つぐみの運転で現地に向かうことになった。


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