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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
異世界からの来訪者編

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エコー


 俺の子供たち、リンカとエドワードが地球にやってきた。

 

 今、二人は寝ている。

 他の子供たちと一緒に、保健室で熟睡中だ。異世界に興奮してなかなか寝付けなかったらしいから、しばらく起きてくることはないだろう。


 今は深夜、時刻は四時ごろ。


 俺、つぐみ、鈴菜は水晶の前に集まっていた。

 時間が時間だが、俺たちは異世界とコンタクトをとることにした。


 水晶を起動させると、ブリューニングの姿が映った。


「おお、一週間ぶりだな」


 異世界とこの世界では時間の流れが違う。こちらではブリューニングと話したのは昨日の話なのだが……どうやら向こうの世界では一週間が経過しているらしい。

 もうそんなにたっているのか……。


「こっちから連絡してしまうと、そっちでは五、十分後なんてことになってしまうからな。時間のずれは難しい。俺たちはいつでも待機してるから、気兼ねなく連絡してくれ。そっちは深夜か?」

「ああ、リンカたちに聞かれたくない話だったからな」


 リンカたちがいる前では話しにくかったことだ。

 俺の真剣な表情を察したのか、ブリューニングも若干緊張しているように見える。


「……ミカエラが戻ってこないんだ」

「君たちの仲間になった天使のことだな」

「ああ、そうだ。こっちでは半年経過してるんだが、いまだに見つかっていない」


 ミカエラが不在。

 ただでさえ受難の多いこの世界において、今、最も心労の原因となっている出来事。それは俺の最後の妻である彼女と……合流できていないことだった。 


 こんなこと……娘たちに聞かせたなくない。

 別に親としてのプライドがどうとかいう話ではない。囚われたとか行方不明とか、そんな怖い話題を幼い子供に聞かせたくなかっただけだ。


「魔族に捕らわれているのかもしれない。あいつを探すいい方法を知らないか?」

「……俺は知らないが……確か、天使がそんな方法を……。少し待っててくれ」


 水晶に映っていたブリューニングの姿が消えた。どうやら誰かを呼びに行ったらしい。

 しばらくして再び水晶の前に現れたのは、白髪の中年男性だった。背には翼が映えている。


 この人は天使。名前はホワイト。

 人類とも魔族とも違う、天界に住む天使。それも高位の天使であり、創世神が亡くなった今となっては、実質的に天界のトップといっても過言ではない。


「ブリューニング殿から話は聞いておる。我らの同胞、ミカエラがまだ合流できていないと。半年の時を経ていまだ連絡一つないということは、何かあったとみるべきであろうな」

「俺も同意見です。すぐにでも彼女を見つける必要があるんですが、何かいい方法はありますか?」

「〈エコー〉、という魔法を知っておるか?」


 〈エコー〉?


 言葉自体の意味は分かるが、ここで聞かれているのはそういう話じゃない。おそらくその〈エコー〉とかいうのは魔法かスキルみたいなものなのだと思うが、俺には聞き覚えがなかった。


「すいません、聞いたことないです。魔法か何かですか?」

「分類としては魔族が扱う純魔法に近い。広域に魔力の波を放って敵や見方を探査する方法だ。それほど難しい魔法ではないゆえ、召喚魔法が使えるそなたらであれば口頭でも十分に伝わるであろう」

「ありがとうございます。すぐにでも教えてもらえますか?」


 俺より魔法が得意なりんごあたりを呼んだ方がいいかな?


「ただこの方法は魔族も熟知しておる。人間には魔力を感知する感覚器官がないが、奴らははそれを感じることができるからな。使えば……まず間違えなく奴らに感づかれてしまうであろう」

「…………」


 ミカエラは見つかるかもしれない。

 しかし、俺たち自身が見つかってしまう可能性がある、か。

 諸刃の剣ってやつか。


「もう半年もたってるんだ。これ以上ミカエラを待たせるわけにはいかないだろ? それに……」


 もしかするともう、死んでいるかもしれない。

 と、心に思ってしまったが、それを口にすることはできなかった。言ったら現実になってしまいそうだったから。

 

「今すぐに教えてもらえますか? 時機を見て使うことになると思いますので」

「うむ。まずは光魔法の要領で手に光を集めて……」


 俺はホワイトから口頭で説明を受けた。

 時間にして五分程度だろうか。

 普通の人間ならそれだけで魔法を使用することは不可能だが、俺たちは精霊魔法や魔族の魔法にある程度縁がある。それゆえにホワイトの説明もある程度は理解できた。


 そして俺は、〈エコー〉を取得した。

 ……のだが。


「俺はうまくできそうにないですね。やっぱりもっと魔法が得意な人に相談してみます」


 試しに使用してみたがあまりに威力が低すぎた。他の魔族たちにばれないようにこの都市を効果範囲に指定したはずなのだが、周囲十メートル程度しか認識できていないようだ。

 なんと言ったらいいのだろうか。魔力の波がぐちゃぐちゃで、進むべき方向に進んでいないような感じ。


 俺は魔法が苦手というわけではないが、それほど得意でもない。聖剣・魔剣を使った戦闘をメインで行ってたからな。

 

「とりあえずこの魔法、俺からりんごに教えて試してみます。今日はありがとうございました」

「また何かあれば気軽に連絡してくるがよい」


 こうして、二度目の異世界人との会話は終了した。

 新たな魔法――〈エコー〉。

 これでミカエラを見つけることができるのだろうか……。


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