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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
異世界からの来訪者編

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方針会議

 

 咲を見送った俺たち。彼女が戻ってきたとき、俺たちは魔族に対抗する方法を得て、異世界へ戻ることもできるようになる。

 だが待っているだけでは何も始まらない。新たに三人も増えたこの状況で、俺たちは今後の行動をどうするか決めなければならない。


 ここは俺たちの教室。


 一紗を除く全員がここに集まっている。情報交換をしつつ、今後の方針を決める会議のようなものだ。


 もっとも、出席しているからと言って意見を出してくれるとは限らないが……。陽菜乃なんか完全に人形遊びに耽っていて話も聞いてないと思う。


「皆、今日はここに集まってくれて感謝する。これから私たちが歩むべき道を、匠とともに決めていきたい」


 この会議風の集まりを主導しているのはつぐみだ。彼女は大統領職を務めていたことがあるから、こういったことをまとめるのは得意だ。

 俺は仕切るのがあまり得意じゃないからな。

 

「さしあたっては私たちがこれからどこに向かうか、ということだが……」

「それについては俺から……」


 この件については考えてある。

 

「もし咲がまた戻ってくるとしたら、またここに帰ってくることになるはずだ。今回みたいに入れ違いになったら困るから、できればここを拠点にしたいんだけど……」


 以前問答無用で襲われた経緯を考えると、必ずしもそれが正しいとは言えない。だけど咲たちはここでしばらく過ごしていて無事だったんだから、もう……大丈夫じゃないだろうか?


「子供たちのこともあるからな。いつまでも車の中で連れまわしていくのは……正直気が引ける」


 ここにいるとき生まれた、雫とりんごの子供。

 そして旅先で生まれた、エリナと子猫の子供。


 四人の赤ちゃんを連れているこの状況で、車に揺れながらというのは少しきつい。 


 平和な異世界で、勇者の子供として幸せに育っていくはずだった子供たち。まさかこんな逆境に追いやられてしまうとは……夢にも思っていなかった。


「それじゃあ、保健室を赤ちゃん部屋みたいにして……そこでお世話をすればいいと思うよ」


 と、乃蒼が言った。

 あそこにはベッドがあるからな。


「不安だから護衛も配置しておきたいな。魔物は怖がるといやだから、できれば俺たちの中から……」


 とはいえ、俺は直接魔族とは戦わないといけないから、部屋にこもって護衛というのは難しい。

 一紗もいないし、魔法使い系や雫は部屋の中での戦闘には不向きだ。できることなら聖剣・魔剣使いあたりから……。


「私がやるよぉ~」

「小鳥か……」


 小鳥はそう遠くない将来出産する予定だ。すでにお腹が目立つほどに大きくなっている。

 俺としては部屋の中でゆっくりと過ごしていてほしかった。護衛といっても魔族がここまで侵攻してくるのは最後の最後。むしろそうならないということを仮定するのであれば、この役目は小鳥に適任かもしれない。


「じゃあ、護衛は小鳥に任せるよ」

「みんな、匠君との家族だもんね。絶対守って見せるよぉ」

「俺も小鳥のところまで敵が行かないよう、全力で守ってみせるよ」


 さて、これで子供たちの件は決まったか。


「さて、もう一つ……私たちははっきりさせておかなければならないことがある」


 話題を転換するように、つぐみがそう言った。


「私たちは異世界帰還で様々な場所に飛ばされて、再会した。この地域では陽菜乃と子猫、こちらに向かってきた小鳥、咲、月夜、美織、ひより。だが私たち家族は……これで全員じゃない」

「……そうだよな」 


 四人と再会した今、俺を含めた全員が懸念していることだ。 

 再会できていないクラスメイトは残り二人。

 亞里亞とミカエラだ。


「非戦闘タイプ亞里亞はともかく、ミカエラが問題だとは思うな。どうしてここまで来てないんだ? あいつの実力なら、よほどのことがない限りここに来れるはずだ。空だって飛べるんだからな」

「彼女は私たちと種族が違う。やはり天使という生まれが異世界帰還にマイナスの影響を与えたのではないか?」

「俺たちと違って異世界に残ってるってことか?」

「可能性はある。咲が戻ってくればそのあたりは報告してくれるだろう」

「だよな。でももし俺たちと同じようにこの世界に来てるんだとしたら……それは……」


 そこで、俺は言葉を切った。

 外から足音が聞こえたからだ。


「…………」


 誰かが、教室に近づいてくる。

 

 ここにいるのは俺たちだけだ。クルーズ軍曹たちアメリカ軍人とはここで別れたまま。ミゲルの元信者たちは旅の途中で関西地方へと見送った。

 一紗は寝ているはずだから、この足音の主は……間違いなく第三者。


 まさか……魔族?


 いや、そんなはずはない。近くには警戒用の魔物を召喚し、警備をさせている。かりに不審な魔族や魔物が歩いてきたとしたら、鳴き声で知らせてくれることになっている。

 にも拘わらず足音の主はここまでやってきた。そいつは警備の魔物に通行を許したタイプ……つまり俺たちと同じ人間だ。


 もっとも、人間だからといって俺たちに友好的とは限らないが……。いずれにしても、警戒が必要だということだ。


 俺は腰の剣に手を当てた。

 りんごやひよりは魔法を、美織や小鳥は剣を構えている。

 小鳥はもうすぐ出産が近いのに、苦労をかけて申し訳なく思う。

 

 教室のドアが開いたとき、俺たちの緊張は頂点に達した。


 現れたのは、一人の女だった。


 歳は二十代半ばといったところだろうか。俺よりも少しだけ年上に見える。少しやつれて見えるのは、昨今の関東を襲った災厄を考えれば当然のことだろう。


 俺は彼女の顔を知らない。そして周囲の反応を見る限り、他の女子たちも一緒だろう。 

 避難民か?

 関東が封鎖された、取り残されたしまった市民。俺たちは旅の中で何度もそういった人間と出会った。


 それにしても、わざわざこの建物までやってくるなんて……。


「あ……あなた様はっ!」


 どういう事情か知らないが、女性は俺の姿を見てとても驚いている。

 ……なんだ?

 俺のことを知ってるのか?



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