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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
神雷編

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究極光滅魔法


 俺たちの故郷、ホテル前の道路にて。

 

 俺たちは何者かの攻撃を受けた。

 上空から放たれたその魔法は、まるで核爆弾か何かのように鋭い閃光とすさまじい衝撃を放ち、俺たちに襲い掛かってきた。


「う……ううぅ……」

 

 体にのしかかっていたがれきを跳ねのけ、砂ぼこりを手で払う。

 俺はゆっくりと起き上がり、周囲を見渡した。

 瓦礫と砂ぼこりに埋もれたその場所は、かつて繁華街があったはずの場所だった。まるで大地震の跡のような変わりように、俺は思わず息をのんだ。


 だが、これでも最悪は免れた。

 ここから離れた近くの山には、大きなクレーターができていた。これは先ほどの魔法が直撃した結果だ。ここにあるがれきや砂ぼこりは、その余波に過ぎない。

 あの時、飛行機から放たれた敵の魔法は明らかにこちらを向いており、そのままではここの地面が大きくえぐられ、俺たちは全滅してしまうところだった。

 魔法が放たれる瞬間、俺は最後の手段に出た。

 

 〈真解〉だ。


 絶大な威力を持つ〈真解〉はぎりぎりで魔法の軌道をそらし、直撃を避けることができた。ヴァイスはその衝撃でボロボロになっているから、また乃蒼に直してもらうしかない。

 聖剣の力で魔法をそらさなければ、全滅だった。


「あれは一体……なんだったんだ?」


 ……第二波がくれば全滅してしまうのだが、今のところその様子はない。

 見逃されたか?

 いや、今の奴に俺たちを見逃す理由なんてない。

 俺たちが死んだと思い込んだ……のか?

 

「おーい、誰かっ! 誰かいるか!」


 俺は声を張り上げた。

 これだけの大惨事だ。下手をすれば死者が出ているかもしれない。

 ただ、ホテル前の道路は幅が広かったため、大きな建物が崩れ落ちてきている様子はない。どこも少し大きめの破片が飛んできている程度だ。


 これなら、生存率はぐっと上がる。


「……ううぅ……う……」


 耳を澄ますと、ちょうど俺の足元から声が聞こえた。

 飲食店の薄っぺらい看板を押しのけると、そこにはつぐみがいた。


「つぐみっ」

 

 薄い金属の板が彼女を守っていたのだろうか? 大きなけがはなさそうだ。俺が手を差し出すと、彼女はゆっくりと自分の足で立ち上がった。


「こ、これは……」

「覚えてるか? あの飛行機から放たれた魔法のせいだ。俺が聖剣でなんとか逸らしたけど……それでも被害はでかかった……」


 そう言って、俺は山の方を指差した。そこには例の魔法で見るも無残にくりぬかれたしまった山が存在する。


「……このクレーターは、まさか……」

「何か知ってるのか?」

「そういえば匠は見たことがないんだったな。私は大統領として現地に赴いたことがあるからな」

「……?」

 

 何の話だ?


「異世界のダークストン州を覚えているか?」

「ダークストン州? ……それって」


 覚えている。

 俺たちが異世界で拠点としていた国――グラウス共和国。その首都からすぐ南に位置する地域の名前だった。


「例の戦争があった直後のあの都市もそうだった。こんな風に大地に巨大なクレータ―が生まれて、復興も大変だった」


 ダークストン州はとある魔族の強力な魔法によって滅ぼされてしまった。


 究極光滅魔法メギド


 かつて異世界で一都市を壊滅させたというおそるべき力。魔族三巨頭の一体――悪魔王イグナートが放つ最高クラスの魔法だ。


「あの時は俺たちに使わなかったくせに……」

「手加減する必要がなくなったということだろうな」

「…………」


 つぐみの言葉に、俺は異世界での戦争を思い出す。

 今にして思えばぬるい戦いだった。


 もし奴が、奇襲でこの魔法を使ってきたらどうなっていただろうか?

 異世界で何度か考えたことがある。でもそれは、奴を倒した俺たちにとって終わった話……だったはずだった。


 その結果が、今、というわけだ。


 悪魔王イグナートは異世界に転生するため死ぬ必要があった。彼だけではなく、配下の魔族たちも一緒にだ。彼はそのためにグラウス共和国に戦争を仕掛け、自分と……そして多くの魔族たちを犠牲にした。

 あの異世界での戦いにおいても、究極光滅魔法メギドは使用された。しかしそれは俺たちの住んでいる場所とは離れたダークストン州。結果として俺たちの戦意は向上し、魔族と戦う原動力となっていた。

 その戦争で、イグナートが究極光滅魔法メギドを使ったのは一度きり。そのあとは宣戦布告の手紙を送ったり、俺に幻覚魔法を使ったりと精彩に欠く戦い方だった。死に方も俺が倒したというよりは自殺に近い形だ。

 

 奴が異世界で活躍しなかったのは、この世界に転生するための布石だった。そのために俺の力が必要だった。だからこそ俺を殺さないよう、手加減した。

 もう奴に俺を生かしておく理由はない。この究極光滅魔法メギドによる奇襲は、奴の敵意の表れだろう。

 

 俺たちは……とんでもない魔族を敵にしてしまったのだ。


「うう……ぐぅぅ」

「………………」

「はぁはぁはぁ」


 周囲を見渡すと、仲間たちが次々と起き上がっていく。

 しかし、全員というわけにはいかなかったようだ。


「学園の方は射程圏外だから大丈夫だと思うけど、ここにいたはずの乃蒼や璃々が見当たらないな。体が小さめだから、吹き飛ばされたのか?」

「こういう現場では時間がたてばそれだけ生存率が下がる。とにかく全力でみんなを探す必要があるな」


 つぐみの提案に従い、俺は彼女たちを探すことにした。


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