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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
捜索編

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23/120

防衛術


 生き残りのアメリカ軍人を連れた俺たちは、仲間の待つ都市へと戻ることにした。

 車を使っての移動は、来るときと同じ道を使ったので問題なかった。俺が障害物を取り除いておいたのがだいぶ効いたようだ。


 校舎の近くまで車を進めていた俺たちだった、唐突にその動きを止めることになってしまった。


「うおっ!」


 鈴菜が急ブレーキを踏んだらしい。俺は車の揺れとともに、フロントガラスに頭をぶつけてしまった。


「痛い……」


 あまり勢いづいてなかったので大したことはなかったのだが、あとでたんこぶができているかもしれない。


「なんだ、どうしたんだ? 人でもいたのか?」

「…………あれを」


 そう言って鈴菜が示した先には、魔物がいた。


 あれは、サイクロプス。一つ目の巨漢であり、強力な打撃系攻撃を繰り出してくる恐るべき魔物だ。

 俺が倒せないほどではない。脅威という意味ではそれほどではないのだが、これだけ学園に近い場所でうろついているのは……少し不安になってくる。


「こ、こんなところにサイクロプスなんて、大丈夫なのか?」


 まさか、俺たちの拠点が襲われてしまったのか?

 奴レベルになると車で体当たりしてどうにかなるレベルではない。逆に車体ごと持ち上げられて横転されてしまう危険すらある。


「少し外に出る。鈴菜たちはここにいてくれ」


 俺は単独で車から降りた。


 剣を構えた俺だったが、すぐにそれが不要であることに気が付いた。

 攻撃が、来ない。

 完全にサイクロプスの間合いに入った形だ。俺の知っている奴であれば、吠えながらこぶしを繰り出してくるはずなのだが……。

 

「…………」

「…………」


 俺を見下ろしていたサイクロプスは、急に片膝をついた。それはまるで臣下が王に礼を尽くすような……そんな忠誠のポーズだった。


「ああ……なるほど」 


 その姿を見て、俺はやっと理解した。


 俺たちは魔物を召喚できる。

 かつて異世界で俺は魔族と戦った。魔物はもともと彼らの召喚したものであり、食物とかを運ぶために使っていたらしい。

 一部の魔族と仲良くなった俺たちは、迫りくる脅威から身を守るためにその方法を教わった。基本的には魔力に依存する技術のため、魔法が使える人間であれば誰でも使うことができる。


 つまりこの魔物たちは、都市防衛のために俺の仲間が作り出したもの。

 俺がいない間の戦闘力低下を、魔物で補うことにしたようだ。


「こいつら大丈夫だ。りんご辺りが召喚した魔物なんじゃないかな? 少し車を前に進めてみてくれ」


 こくり、頷いた鈴菜がゆっくりと来る前を前に進める。もし万が一のことがあれば俺が魔物を倒してしまう、そんな考えもあった。

 しかしその心配はやはり杞憂だったようだ。


 予想通り、魔物たちが襲い掛かってくることはなかった。人間には攻撃しないよう設定されているのだ。


「うああああああああっ!」

「こ、こんなところにも魔物が……」

「逃げろおおおおお、殺されるぞ!」


 おっと、事情を知らないアメリカ軍人たちが大騒ぎをしている。というかこのまま車でどこかに逃げられたそれこそ危ない。


「心配しないでください。あいつらは俺たちの仲間ですよ」


 ざわざわざわ、と騒ぎ始める軍人たち。


「魔物が……味方?」

「魔物は日本人が生み出した生物兵器なのか?」


 まいったなぁ。魔物召喚なんて大した技術じゃないんだけど、知らない人から見れば確かに脅威なのかもしれない。



「――召喚サモンっ!」

 

 俺はスライムを召喚した。

 俺もスライムみたいに弱い魔物なら召喚することができる。サイクロプスやシーサーペントみたいな高レベルな奴は無理なのだが。一応魔法の適正はあるから、頑張って訓練すれば召喚できるようになるかもしれない。


 これで少なくとも日本の生体兵器説は消えただろう。

 俺は召喚したスライムを肩に乗せ、無害さをアピールした。


「安全だろ? 安心してくれ。俺たちは魔族と同じように味方の魔物を召喚することができるんだ!」 

「本当にお前たちには驚かされるな。俺たちの常識が全く通じない。が……悪くない。頼りにしてるぜ」


 クルーズ軍曹が納得し、他のアメリカ人たちに事情を伝えてくれた。



 無害な魔物たちの間を通り抜け、俺たちはとうとう最初に召喚された校舎へと戻ってきた。

 全くの平穏。敵はいないし建物も壊れていない、そして血や死体の跡なんかも全く存在しない。

 半日以上時間を空けてしまったわけだが、どうやら平穏無事に留守番してもらえたようだ。


「乃蒼、乃蒼はいるか! 少し頼みたいことがあるんだ」


 夕日が落ちかかっているから、乃蒼は夕食の準備をしているかもしれない。しかし新しくやってきたアメリカ軍人や、船に乗れなかったミゲルの元信者たちの件もある。いろいろと話すべきことは山積みだ。


 俺の声が聞こえたらしく、ピンク色のエプロンを付けた乃蒼が大慌てで校舎前のグラウンドにやってきた。どうやら本当に夕食を用意していたようだ。


「匠君」


 俺を見てうれしそうにした乃蒼は、一瞬にしてその表情を歪め……瞳から涙を落とし始めた。


「どうしたんだ? あ、まさか子猫になにか?」


 ミゲルのもとから救出した俺の妻……須藤子猫。囚われたまま眠っているように見えたんだけど……まさか、何か呪いみたいなものが?


「ううん、子猫さんは大丈夫だったよ。目を覚まして、今は私を手伝ってくれてる」

「そうか、子猫にもあとであいさつしておかないとな」


 ……子猫じゃない?


「じゃあ、いったい乃蒼はなんで泣いてるんだ?」

「一紗さんが……」


 一紗? 


 

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