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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
帰還編

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謎の手配書

 小型船に乗って俺たちが連れてこられたのは、沖合いに停泊していた大型の軍船だった。

 普段俺たちが乗るクルーズ船のような船とは違って、見るからにごつごつした造りだ。


 客船とは違う、明らかに狭い通路を歩きながら……俺たちの不安は増していくばかりだった。

 連れて来られたそこは、牢で仕切られた営倉のような場所だった。


「入れ」


 ドンッ、と肩を押されてその中に押し込まれた。

 一瞬、何が起こったのか分からなかった。


 抗議するために駆け寄ろうとしたが、すぐにカギをかけられた。後ろでは銃を持った屈強な男たちが威嚇している。

 俺は牢に閉じ込められてしまったのだ。


「こ、これはいったいどういうつもりだ? 話し合いをするんじゃなかったのか?」

「君が魔族の仲間だということは知っている。その聖剣も魔族から手に入れたものだろう? しらじらしい」

「な、なにを言ってるんだ?」


 俺が……魔族の仲間?

 

 そういえば、加藤の仲間たちも俺の力を見て……魔族がどうだとか言ってたな?

 確かに、少し力を見せすぎたかもしれない。でもだからといって、この扱いはないだろ。


 つぐみや鈴菜、そして連れてこられた避難民たちは牢には入れられていない。しかし銃を突きつけられて両手を上げている状態だった。明らかに友好的な雰囲気じゃない。


「少し聖剣の力が強かったからって、あんまりじゃないか? あんたたちの身内だって剣を使えたんだろ? だったらもっと才能があるやつがいたって当然だろ! こんな扱いはあんまりだ!」

「君の聖剣に関する力量は関係ない」

「は?」


 違う……のか?

 混乱は増していくばかりだった? じゃあ、どうして俺は魔族扱いされてるんだ?


「我が国の諜報機関は優秀。すでに君たちの手配書の配布済みだ。先の横須賀基地における戦闘、その最大の戦犯。魔族の協力者――下条匠」

 

 そのタブレットには、俺の顔が映っていた。

 正確には俺ではなく、俺の顔を描いた似顔絵だ。名前、おおよその身長、性別など必要な情報が記されている。


 て……手配書?


 ど、どういうことだ? 俺はつい一昨日この世界に戻ってきたばっかりなんだぞ? なのになんで手配書が出回ってるんだ?

 あまりに早すぎる。

 ここに来てから俺が何をした? ミゲルを倒して、加藤の仲間と接触する以外何もしてないはずだ。


 まさかこいつらと加藤が繋がって?

 ……いや、どれだけ加藤が暴れまわっていたとしてもそこまではないはずだ。いくら何でもアメリカの、それも軍人にまで手が回るはずがない。

 そもそも加藤や御影が犯人だったら、俺の写真なんていくらでも用意できるはず。この世界に残っている俺の友人を脅せば、すぐにでも手に入る程度のものだ。集団疾走でさんざん報道されたはずだから、ネットに顔写真くらいは転がってるかもしれない。わざわざ精度の落ちる似顔絵にする意味はない。

 

 まさか……魔族?

 異世界で俺が殺した魔族が……手を引いているのか? 俺がこの世界に戻ってくることを見越して、犯罪者に仕立て上げた?


 と、とにかく、このままではまずい。

 逃げるか?

 聖剣の力を使えば、鉄格子を切り裂くことなんて容易い。


「あまり強引な手段は考えない方がいい」


 俺のたくらみを知ってか知らずか、担当官の男がそう釘を刺した。


「その聖剣は、光の刃を発生させて攻撃する剣なのだろうね。それを使えば、後ろに控えた者たちがすぐに君を射殺する。君の身内らしき女性も含めてだ。賢明な判断を期待する」


 脅し、それも人質を使った言い方。聖剣の能力をある程度把握した上での発言か。

 俺の聖剣の能力を知るため、配下の軍人を使ってあんな勝負を持ち掛けたってことか?

 

 でもあの驚き方が嘘とは思えない。俺の実力までは知らなかったんだろうな。アメリア軍の聖剣適性が低いのは本当だと思う。


「どれだけ強い武器を持っているとしても、逃げることは考えない方がいい。ここは海の孤島、船の上。沖のキャンプでは万が一にも君の脱出を想定して警戒態勢を敷いている」


 逃げれない、と言いたいらしい。


「俺たちをどうするつもりだ?」

「君はこれから一旦アメリカに向かってもらう。その後日本に引き渡すかアメリカで処刑するかは、ラスキン大統領の判断を仰ぐことになるだろう」


 大統領の判断?

 処刑?


 血の気が引いていく。

 英雄気取りのつもりはなかったが、まさか犯罪者にされてしまうとは思ってもみなかった。


「て、手配されてるのは俺だけなんだろ? 他の人たちはどうしてここまで連れてきたんだ?」

「魔族の仲間である疑いがある。どちらにしろ一旦本国に引き渡し、取り調べを行う予定だ。必要ならば弁護士を用意して……」

「ま、待ってくれ! あの人たちは魔族に洗脳されてずっと教会にいたんだ。俺たちとは全く無関係なんだから、すぐに解放してくれてもいいだろ?」

「それを確認するための取り調べだ。君の発言は全く参考にならないので、これ以上議論をしても無駄さ」

 

 …………なんてことだ。

 すでに魔族が押し寄せてから一か月以上の時がたっている。道路にしても船にしても、逃げる人はすでに逃げている状態だ。

 軍が救出したならともかく、俺一人が助けたというシチュエーションは怪しすぎたのか? 俺はともかく、無実の人たちまであらぬ疑いをかけられてしまうなんて……。


 避難担当の男は部下に命令を下すと、そのままこの部屋から出て行った。棒立ちの軍人たちは相変わらず銃を構えて俺たちを威嚇している。


 くそっ!


 避難すれば、安全だと思っていた。

 軍は民間人を守ってくれると思っていた。

 油断したつもりはなかったが、こんな扱いになるとは思っていなかった。ここは敵地だったんだ。たとえ魔族がいなくても、追い詰められる可能性は十分に存在した。


 目の前には銃を構えた軍人。

 そして聖剣ヴァイスの威力は、この船の中ではあまりに強すぎる。下手に船ごとぶっ壊してしまったら、みんなで遭難……なんてことになってしまうかもしれない。


 もう抗う術はない。

 ……と、軍人たちは思っているのだろうか?


 だが、奴らは勘違いをしている。


 俺の力は……何もこの一本の聖剣だけではないということだ。


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