アメリカ軍最高の聖剣使い
俺はアメリカ軍を舐めていた。
刀神ゼオンが生み出した人類最強の兵器、聖剣・魔剣。奴がここにきている以上、この地でも聖剣を生み出した可能性は十分にあった。
アメリカ軍はすでに聖剣・魔剣を手に入れていたのだ。それも使いこなしている?
クルーズ軍曹がここまでやってきた。
ブロンドの短髪。身の丈二メートルを軽く超える、縦にも横にもでかい大男だ。俺の前に立つだけで……見下ろされるような構図になってしまう。
下に見られている、というのは何も物理的な位置関係だけの話ではないらしい。クルーズ軍曹は口を緩め、いかにも人を小ばかにしたような笑みを浮かべている。
感じが悪い。
「……はっ、アニメを信じ込んだジャンキーか何かか? こんな貧弱坊やに剣が振り回せるわけねーだろ。さっさと田舎に帰ってママのおっぱいしゃぶってな」
こ、こいつ。やはり俺のことをバカにしているのか?
「クルーズ軍曹。小言はいい。貴様の力を見せてやれ」
「アイ・サー!」
上官の命令に返事をしたクルーズ軍曹は、そのまま俺を突き飛ばした。
「ぐっ!」
そしてその瞬間、俺の手から聖剣ヴァイスを奪い取る。
こ、こいつ、俺の聖剣を勝手に……。
単純な筋肉の力にかなうはずもなく、俺は強引に聖剣を奪われてしまった。
もちろん聖剣の力を使えば取り返すことができるけど、そこまでことを荒げたくない。少し意地悪だが持ち逃げするほど悪意があるわけでもないようだから、ここはおとなしく様子を見ておこう。
剣を握ったクルーズ軍曹が集中している。
「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
クルーズ軍曹が雄たけびを上げた。
膨張する筋肉、そして沸騰したように赤みを怯えていく肌。いかにも必殺技を放ちそうなその様子に、俺は少しだけ緊張を感じた。
「解放、聖剣ヴァイスううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううっ!」
握って聖剣の名前がわかるのは、この武器に対して適正のある証だ。
どうやら本当にアメリカ軍は聖剣を使いこなしているらしい。
クルーズ軍曹が剣を構えた。
目の前には、道路と砂浜を隔てる巨大なコンクリート壁がある。聖剣の力を使ってあれを破壊するつもりなのだろう。
平時ならその奥にある道路や建物を心配してしまうところだが、今この状況なら民間人に被害がでることはないだろう。
普通に試し切りができる。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、ハクヂンんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ!」
へなへなー。
は?
へなへなー、なんて効果音が出そうな〈白刃〉の一撃が、クルーズ軍曹の剣から出現した。
普通、〈白刃〉は三日月のような鋭くとがった刃を放つ。だが彼の放ったそれはまるで海を揺れるわかめやこんぶのようにペラペラしていた。
こんな形の攻撃、見たことないぞ? だ、大丈夫なのか?
クルーズ軍曹の放った〈白刃〉は、近くのコンクリートにペチッっとぶつかってそのまま消えた。もちろんその先を貫通しているはずもない。
あ、それでもちょっと威力はあったらしい。長さ三十センチの傷がついてる。
「ハグヂン! ハクヂン! ハクヂンハクヂンハクヂンんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ!」
へなへなーへなへなーへなへなーへなへなーへなへなーへなへなーへなへなーへなへなーへなへなーへなへなー。
クルーズ軍曹のふやけたこんぶみたいな〈白刃〉が、コンクリート壁に殺到した。ぺちぺちぺちっと全部当たって消えちゃったけど、傷口が前より大きくなった。
こ……これは? ひょっとしてウォーミングアップか何かなのか? いくら何でも聖剣使ってこの程度ということはないよな? 昔聖剣使ってた適正の低い貴族だって、こんなに弱くはなかったはずだ。
肩慣らしをして次が本番、ということだと思う。
……なんて思っていたら、クルーズ軍曹が倒れた。
「く、クルーズ軍曹!」
彼を呼び寄せた難民担当者が、慌てるように駆け寄ってきた。
「この馬鹿者が! 聖剣を三十秒以上使ってはならないと、あれほど厳命したではないか……」
「(ブクブクブク)」
クルーズ軍曹は泡を吹いて倒れている。体が小刻みに震えて、顔も真っ青だ。
聖剣・魔剣使いには適正というものがある。この適性が高いほど長く強く剣を扱うことができ、低ければ激しく体力を消耗してしまう。
この人、アメリカ軍最高の聖剣使いって言ってたけど、本当にアメリカ全体でこの程度なのか?
震えていたクルーズ軍曹が、ゆっくりと目を開けた。しかしその顔に生気が戻ることはなく、夢を見ているかのように目の焦点が定まっていない。
「ママの……ミルクが飲みたい。飲みたいよぉ……ママぁ、ママぁ」
「衛生兵いいいいいいいいっ! 至急ミルクを!」
うーん、相当無理をしてしまったようだな。
ミルクを飲んだクルーズ軍曹は多少落ち着きを取り戻したように見える。ただ砂の上に倒れたまま起き上がる気配はない。
「ふう、これで理解できただろう? 我々アメリカ軍は聖剣・魔剣を使用することができる。今はまだ研究中だが、やがては軍でも正式採用され、一大戦力として軍事利用されるだろう。最も、それが日本の助けになるとは限らないが……」
などと、避難の担当官が結論付けた。
おいおい……大丈夫かよアメリカ軍? このままじゃあ魔族になぶり殺しにされてしまうぞ?
「少しその剣を貸してくれ、今度は俺が使ってやる」
どうやら俺が手本を示さなければならないようだ。
俺はクルーズ軍曹が手放した聖剣ヴァイスを再び掴み取った。
「…………お前の……×××よ……り大きな〈白刃〉を……出してみろ。日本人」
正気に戻った軍曹が、そんな煽り文句で俺を挑発してきた。どうやらいまだに俺がこの剣を使えるとは信じてないらしい。
さて、ここで本気を出してしまったらさすがにやばいんじゃないだろうか? いくら何でも目立ちすぎてしまう。
ここは適当に手を抜いて……。
「…………はくじん(ボソッ)」
これだけ抑えとけば大丈夫だよな?
ゆっくりと振り下ろした俺の剣から生み出された白い刃――〈白刃〉は、予想外にも巨大に仕上がっていた。
あ……あれ?
ギュオオオオオオン、とすさまじい勢いで風を切りながら進んでいく。
俺の放った〈白刃〉は、怒涛の勢いでコンクリート壁を砕き、そのまま道路を貫通、さらには奥にある無人の建物を三棟貫通。そこから先は空に向かって飛んで行った。
「あ……ああ…………あああああああああああああああああああっ!」
「……し、信じられない。鉄筋コンクリートの建物をいとも容易く。あの魔族と同等に力を引き出している……」
近くにいる二人だけでなく、フェンスの中にいるほかのアメリカ人まで騒ぎ始めた。
……お、おかしいな、ちゃんと加減したはずなのにどうして。
やばいな、これ。相当目立っちゃったぞ?
どーすんの? 助けてつぐみ、鈴菜!
オレ、オレだよ読者のお父さん!
そう、息子の作者だよお父さん!
交通事故の示談に、なろうのポイントがいるんだ!
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