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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
帰還編

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13/120

アメリカ軍の仮設基地へ


 

 校舎に戻ると、ちょうど夕食の支度をしている最中だった。

 ミゲルの元信者たちが空腹だったため、一緒に食事をしてもらうことになった。奴は信仰だのなんだの言ってあまり食料を与えなかったらしい。


「あ、皆さん、待っててください。今、食器を並べますので」


 俺が連れてきた人たちがいるから、乃蒼は大慌てで増えた分の食事を作っている。一人ではさばけないから、璃々にも手伝ってもらっている状況だ。

 あっちはそれでいい。

 一方の俺、つぐみ、鈴菜は状況をまとめるために話し合いをしていた。本来なら雫やりんごを交えたかったのだが、出産関係でいろいろと厳しいため、今は休んでもらっている。


 空き教室を使った簡単な会議室。正直なところ三人では広すぎるのだが、校舎というのはこういった無駄に広々とした部屋しかないのが困る。


「すまない、子猫を助けるときに……一般人を見つけてしまった。危ないから連れて帰ったんだけど、食料は大丈夫か?」

「あれから璃々と二人で食料を調達しに行ってな。スーパーの倉庫で日持ちするものを持ってきたから問題ない」

「ありがとう」


 俺がいない間に、つぐみたちが食料を集めてくれたらしい。

 食事の心配はなかったようだ。


「一紗は目を覚ましたか?」

「まだだよ」


 と、鈴菜が答える。

 まだそれほど時間がたっていないからな、もう少し様子を見る必要があるか。

 本当なら一紗からも意見を聞きたかったんだが……仕方ない。

 話すとしよう。俺があの宗教施設で知ってしまった……衝撃の事実を。

 

「ミゲルに会った」


 この単語に、二人は反応しない。異世界ではそれほど珍しくもない名前だ。どこのミゲルか、という話をしなければ意味のない言葉だ。


「ミゲル? それは君の知り合いかい?」

「私が処刑した貴族か何かか?」

「俺が殺した魔族だ。昔さ、一紗を連れ戻すためにレグルス迷宮に潜ってたことがあっただろ? あの時雫をケガさせた魔族だ。あいつが……ここに住んでた」


 この言葉に、さすがに二人とも衝撃を受けたらしい。言葉を失っている。


「なんでこんなことになってんのか、俺も分からない。だけど……あいつがここにいるってことは……他の魔族たちもきっと……」


 そこから先は、言わなくても十分に伝わっているはずだ。


「そ、そういえば……」

「どうしたんだつぐみ? 何か気になることがあるのか?」

「匠も気が付いているだろう? 昔、魔族を倒した時の話だ。あの時の違和感、ここに魔族たちがいるとなれば説明がつくはずだ」


 確かに、つぐみの言いたいことは分かる。

 魔王こそ優が倒してしまったが、その後の幹部や大半の魔族たちは俺や現地の兵士たちが倒した。多くの犠牲が出た……熾烈な戦いであったことに疑いの余地はないだろう。

 ただ、全体としてみれば人類の存亡を賭けた一大決戦であったが、いくつか腑に落ちない点があった。


 例えば、幻覚魔法から目覚めたらすでに魔族が死んでいたり。

 集団で襲い掛かってくれば負けなかったはずなのに、攻撃が散発的だったり。

 大量虐殺の魔法を封印して使わなかったり。

 要人をさらって敵の援軍を呼び込んでいるような魔族もいた。


「死んだ魔族をこの世界に転生させる、おそらくはそういう算段だったのだろう」

「俺たちと仲の良かった魔族たちは何も言ってなかったぞ? 本当にそんな作戦があったのか?」

「異世界転移の件を知っていても知らなくても問題ない。魔王は死んだ魔族だけ生き返らせればいいのだから。あるいは、自殺や戦いを強要して……その魔族の忠誠心を試していたのかもしれない」


 魔族たちが死ねばこの世界に転移することを知っていたのかどうかは分からない。だがおそらく魔王は死ぬような命令を下したんだ。だから奴らは必死に戦った。

 死んで、この世界に転移した。


「……大変なことになってしまった。この国は……いや世界はどうなってしまうのだろうか?」

「匠がいない間に、こちらもいろいろと調べることができた。まずはこれを見てほしい」


 鈴菜が手に取ったのはラジオだった。


「ラジオ? 聞き取れるのか、それ? このあたりは停電してるんだろ?」

「ラジオの電波は遠くのものを受信することができる。この近くの基地局でなくてもな」


 鈴菜はそう言って、ラジオのスイッチを入れた。電池式か充電式かは知らないが、光っているからちゃんと動いているようだ。


〝――こちらは、臨時首都京都よりお知らせします。八月五日、関東地方に非常事態宣言による避難指示が出されました。各地域のお住まいの方は、速やかに指定の避難所し、職員の指示に従ってください。埼玉――〟


 それは、魔族との戦闘という異常事態に対応するための……避難指示だった。

 避難、といっても普通の災害みたいに高台や公民館に移動するものではない。今回の敵は魔族なのだから、そんなことをしても追い詰められてしまうだけだ。

 指定された場所は海沿いであったり、大きな道路に面していたりする場所だった。どうやらそこから関西や北海道に船や大型車で輸送してくれるようだ。


 俺たちの避難所に指定されていた場所は、ここから南に位置する海の周辺だった。なんでも支援に来たアメリカ軍が仮設基地を作っているらしい。

 とはいえこんな放送を聞けたとしても、外には魔物や魔族がいるかもしれないんだ。そう簡単に走っていける距離じゃない。

 俺たちなら魔族や魔物とある程度は戦える。

 だが、いろいろと問題も多いはずだ。


「じゃあこのアメリカ軍の基地に行けば保護してもらえるのか?」

「おそらくは」


 逃げることはできる。だけど……。


「……もしあの魔族たちが俺の倒した魔族だっていうなら、俺が倒さないといけない。俺は逃げられないから、戦闘能力のない陽菜乃や子猫たちだけを避難……ってわけにはいかないよな」


 俺たちは一緒に異世界に帰るつもりだった。それなのにここで離れ離れになってしまったら、もう二度と会えないかもしれない。

 今、この地域の状況を見る限り……あまり状況はよくない。魔族の強さを考えるなら、聖剣や魔法の力がこの国の軍に匹敵する可能性がある。

 俺が戦えば、状況が好転するかもしれない。……というのは少しうぬぼれが強いかもしれないが、役には立てるはずだ。


 俺はいけない。

 だけど……。


「だけどここには関係のない人たちがいる。あの人たちを送り届けるためにも、俺は一旦アメリカ軍の基地に向かうべきだと思う」

「私も同感だ。だがどうやって現地に向かう? 自転車では遠すぎるぞ」

「ミゲルの元信者たちは半分以上が大人だったから、車に乗れるんじゃないか? その人たちが大型車で移動してもらえば」

「私たちはここに帰るんじゃないのか?」

「……あ」


 ミゲルの元信者たちを送り届けた後、俺たちはここに戻らなければならない。

 俺は地理に詳しいこの地を拠点にすべきだと思うし、まだここにいない嫁たちが俺たちを探してここに来るかもしれない。

 困ったな。帰りの足がない。


「僕が車を出すよ」

「鈴菜? 車、乗れるのか?」

「二年前にアメリカで運転免許を取得している。さすがに大型バスは乗れないが、普通の乗用車……五人乗りの車なら問題ないはずだ」

「…………」


 それ、日本では違法だよな?

 いや、まあ向こうで過ごした時間を考えるなら、俺たちはもう十八歳以上。乗用車の免許だってとれるはずだから、海外の免許もってるなら乗れるのか?

 いやでも海外だとハンドルの位置が違うんだろ? 大丈夫か? 大丈夫なのか?


「と、とりあえず子猫や陽菜乃の話を聞いてみよう。今日はもう遅いからな」


 こうして話し合いは終わり、俺たちは夕食をとることになった。



 その後、話し合いの結果、俺たちはアメリカ軍の仮設基地へと向かうことになった。



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