表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
帰還編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/120

幼女の黄金像


 突如としてサブマシンガンを乱射し始めたミゲル。

 銃を使うなんて、異世界ではありえなかった光景だ。

 

 俺はすぐに 腰を落として初撃を回避する。 

 ミゲル自身も銃を撃つことに慣れていないように見える。その隙をついての回避だった。


 だがミゲル攻撃をやめることなく、再び銃口を俺に向けた。後ろにいる信者たちを犠牲にしてでも……俺を殺すつもりらしい。

 精度は高くないが、あの数だ。

 部屋の中では避けるのにも限度がある。

 普通に考えれば……絶体絶命。


「……」


 あの時の俺なら、負けていたかもしれない。

 だが……。


「死ねえええええええええええっ!」


 ミゲルが再び銃撃を始めた。

 その狙いは正確――とまではいかないまでも銃口は確実に俺をむいている。銃弾のいくつかは……当たってしまうコースだろう。


「……舐めるなよ」


 俺は秘策を発動された。

 この状況を覆すことのできる、聖剣の力。俺はそれに心当たりがあったのだ。


 ミゲルの銃。

 俺の秘策。


 二つの力が、激突する。


「な……なぜ……」


 床に手をついたのは、ミゲルだった。


「なぜわたくしが……撃たれているのですか?」

 

 銃弾は……すべてミゲルに跳ね返ったのだ。手、足、脇腹、そして首と頭に銃弾。人間であればほぼ即死に近い状況であるが、魔族という肉体が彼の命を生かしてしまったらしい。

 だがいかに魔族といえど、このケガは重傷だ。もう……長くない。


 種明かし、というわけではないが、俺は勝利の要因となった剣をミゲルに見せつけた。

 三本目の剣――聖剣だ。


「これは聖剣ヴンダーという剣だ。確率操作で奇跡を引き起こし、相手の攻撃を跳ね返したりできる」

「バカな。あなたは……そんなもの、持って……いなかっ……た」

「そうだな、俺が今ここに呼び出した」


 〈籠ノ鞘〉というマジックアイテムがある。

 俺のポケットに収納されたこいつは、異空間にものを収納できる優れた能力を持つ。こいつで千に近い聖剣・魔剣を収納し、必要な時に必要な剣を取り出すようにしている。

 一紗のグリューエンも、俺のヴァイスもドルンもヴンダーも、みんなこの中に保管されていた。


「奇跡を操る聖剣? 異空間から聖剣を取り出す? そ、その力は、あの方の……」

「いつまでも同じ強さじゃない。俺だってあれからいろいろあったんだ。昔倒せた敵に……負けることなんてない」

「む……無念……です」


 銃はすさまじい威力を持つ武器だ。聖剣や魔法もそれはそれですごい力だが、単純な物理的貫通力の話となれば銃弾もかなりのもの。

 速度もおそらくミゲルの動きを完全に凌駕していたのだろう。しかもある程度連射の効くサブマシンガンだ。本来であればそれだけで人間を殺してしまうことのできる代物だ。


 だが、その強さが仇となったな。

 このミゲルという魔族、体の硬さはそれほどではなかったらしい。中には銃も効かない魔族だっていると思うが、こいつに関しては致命傷を与えてしまったようだ。


「わたくしは、また……死んでしまうのですね。ああ……魔王陛下、信仰至らなかったこのわたくしを、どうか……どうかお許しください……」


 それが、祭司ミゲルの最後だった。


 終わった。


 強敵だった。

 一歩間違えれば、俺は死んでいたかもしれない。途中から銃を使い始めるなんて完全に予想外だった。もし俺が今の聖剣・魔剣を手に入れる前だったら、間違いなく殺されていただろう。


「子猫! 子猫大丈夫か!」


 俺はすぐさま子猫へと駆け寄った。彼女は意識を失って縛られていたが、それ以外にはほとんど健康に見える。ケガもなさそうだ。

 脈も息もある。このまましばらくすれば目を覚ますと思うが、早く学校まで連れて行こう。


「おお……ミゲル様」

「我々はいったいどうすれば?」


 信者たちが一斉に嘆き始めた。彼らは本当にミゲルの魔王教に帰依していたらしい。

 困ったな。

 うまくいくかどうかは分からないが……説得するしかないよな?


「あんたたち、この世界の……日本人なんだろ? 魔王とか魔族とか……そんなわけの分からないものを信じてどうするんだ!」

「…………」

「俺を見ただろ? 人間だって魔族を倒せるんだ! 恐れなくてもいい! 早くここから逃げ出して、元の生活を取り戻そう!」


 異世界へ戻る予定の俺だから、この言葉は心からのものではない。しかし今は説得が最優先だ。


 絶望にその身を震わせていた信者たちだったが、俺の言葉に少しでも心を動かされたのだろうか? 瞳に光が宿っているように見える。


「とりあえず、俺たちの学園に来てくれ。誰もいないよりは安心だろ? この剣や魔法を使える人材が何人かいるから、きっと安全に過ごせる。そこで帰る方法を探して、安全な場所まで連れて行ってやるから」

「信じて……よいのですか?」


 やがて、一人の女性が俺に語り掛けてきた。

 どうやら、やっと信じてくれる気になったらしい。


「ああ、任せとけ! 俺は強いからな」


 その言葉に、何人かの元信者たちが立ち上がった。俺についてきてくれる気になったようだ。


 俺は気を失ったままの子猫をおんぶした。

 こうして、俺は保護した人々と一緒に、学園へと戻ることに……。


「おっと」 


 などと考えていたら、足元に転がっていた杖に躓きそうになっていた。

 ミゲルの投げ捨てたものだ。先端にはこの部屋の奥に飾られているものと同じ……黄金像が彫られている。


 それにしてもこの黄金像、幼女になってるぞ? しかも相当にかわいい。像が魔王で神なんじゃなかったのか?

 日本にきて、偉人の美少女化に目覚めてしまったのだろうか? オタク文化が魔族にまで浸透してたりして?

 

 ううーん、それにしてもこの女の子の顔。誰かに似てるような……。

 気のせいか?


 一瞬だけ気を取られてしまったものの、俺は黄金像のことはすぐに忘れ……岐路についたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ