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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
エピローグ

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119/120

そして異世界帰還

 俺たちは異世界転移を果たした。

 いや、もう俺たちにとってここが元の世界で向こうが異世界なんだ。だからむしろこれは異世界『帰還』なのかもしれない。


「ここは……」


 帰還の腕輪を使いこの世界に戻ってきた俺たち。

 目の前の光景には見覚えがあった。

 中央の噴水、そしてその周囲を覆う植物園のように整えられた庭。 


「どうやら屋敷の庭らしいね」


 俺が所有する屋敷の庭だった。


「…………」


 俺たちが向こう世界ん旅立って、数年経過している計算になる。

 さすがに俺が忘れられて伝説になってる……なんてほど期間ではないが、屋敷に別の人間が住んでいたりとかそのレベルのハプニングであれば十分に考えられる。

 もっとも、何度かこちらの世界の様子は通信を通して聞いているから、嘘をつかれてなければ何も変わっていないと思うが……。


「つぐみはどうする? 官邸に行くか?」

「数年もこの地にいなかった人間が、いきなり大統領顔して帰ってきてももめごとの原因になる。落ち着いてから向かうべきだ」


 まさかいない間にクーデターが起こってるなんてことはないと思うが、変に驚かせない方がいいだろうな。


「も、もう帰ってきたのか!」


 と、大慌てで屋敷の外の森から現れたのは、一体の魔族だった。

 スキンヘッドで人間ではありえないほどの大男。俺たちもよく知るその魔族の名は……そう……。


「ブリューニングさん?」

「悪いな。帰るという話は聞いてたんだが、向こうとこっちの世界では時間の流れが違うからな」

「派手な出迎えはいらないって言ったのは俺たちだからな。そうしてくれて助かるよ」


 時間の流れが違うということは、昼と夜の時間も一致しない可能性がある。二十四時間人を立たせて任せておくことはできなくもないが、そういった負担をかけないように話をしておいたのだ。


「君の子供たちが首を長くして待っている。この時間なら屋敷にいるはずだ。すぐに向かうといい」

「ブリューニングさんは来ないのか?」

「阿澄咲王妃にすぐに伝言をと頼まれていてな。ここにはいないから、魔法で伝えなければならない。俺はそういう魔法が苦手だから、ダクラスの奴を探さないと。話はまた後で」


 そう言って、ブリューニングさんは走っていた。


 俺たちは屋敷の中に入ることにした。


「…………」


 一応俺の家なのだが、あまりにも長い間留守にしすぎていた。帰った、という実感よりも緊張のほうが強いかもしれない。


 しかしこのままぼんやり扉の前に立っているわけにはいかない。後ろには妻たちが控えているからな。


 と、意を決して手を伸ばしたのだが、その前に目の前の扉が開き始めた。


「うおっ!」 

「「……パパ?」」


 そう言って上目遣いで俺のことを見上げる二人の女の子。この顔立ち……見覚えが……。


「瑠璃と琥珀か?」


 瑠璃と琥珀。

 俺と璃々の間に生まれた双子の娘だ。この世界を出て行ったときはまだ言葉も話せなかった子供だったのに……。 


「すごーい! パパあたしたちのこと分かるんだ!」

「愛の力だね!」

 

 さっきパパって呼ばれたから気が付いたんだが……。まあ、愛の力でいいか。


「ママああああっ! 会いたかったよぉ!」

「ママぁ」

「ふ、二人ともやめてください。みんなが見てますから……」


 二人は母親の璃々と話を始めた。


「え、ええええええええっ! 二人とも僕より背が高くなってるっ!」


 と、エドワードが驚いた様子で叫んだ。

 確かに少し背が高くなっているかもしれないが、横に並ばないとわからない程度だ。わざわざショックを受けるほどのことか?

 ……いや、この年ならそう思う可能性があるな。


「当然でしょうエドワード。 そもそもたかだか数か月一年の年齢差で兄だの妹だの差をつけること自体が間違っています。すべての人は平等なのよ? それは身長や体重で測られるべきではないです」

「すごーい、リンカお姉ちゃんは昔のままだね。お姉さんだね」

「私たちもいっぱい勉強してたのに、もっともっと頭がよさそう」


 ふむ。

 エドワードの反応はむしろ年齢相応だと思うんだが……。リンカは理屈っぽいな。


「優っ!」

「母さんっ」


 隣では一紗と息子の優が抱き合っていた。長い期間を開けてしまったが、こうして親子仲良く再会できたのはうれしい限りだ。


「ん?」


 ふと、壁際の柱を眺めていた俺は気が付いた。

 やれやれ、困った奴だな。


「何してるんだ……こっちに来いよ」


 俺はそう言って手招きをした。

 

「――そら


 柱の後ろからそろりそろりと顔を覗かせる少女。大所帯で帰ってきた俺たちに……まるで子犬のように怯えている。


 俺の乃蒼の娘――長女の『空』だ。


 本当なら、リンカやエドワードと一緒に空も向こうの世界に来る予定だったらしい。

 しかし体が弱く気も弱い空を異世界に連れていくことはあまりにも心配で心配で、エドワードもリンカも反対したらしい。

 結果として最年長であるにも関わらずこの世界でお留守番ということになったのだが、異世界での危険な出来事の数々を考えれば大正解だったかもしれない。

 空は加藤に拉致られただけでショック死してしまいそうだ。


「あの……お、お父さん。お、お久しぶり……です」

「はははっ、空は昔の乃蒼にそっくりだな。怯えなくていいんだぞ? 俺は空のお父さんだからな。家族なんだ、だから」

 

 そう言って、俺は娘の頭を撫でようとした……のだが。


「……あれ?」


 気が付けば、俺は涙を流していた。


「……なん……で……」


 そんなつもりはなかった。

 確かに感動の再会だ。向こうの世界で大激戦の末、生きるか死ぬかの状況で帰ってこれたのだから、涙が出るような展開であることは理解できている。

 でも俺は泣くつもりはなかった。現に瑠璃や琥珀を見ても涙が出なかった……はずなのに。


「お父さん、大丈夫?」


 不安そうな空が俺にハンカチを差し出した。


「ああ……ごめんな。久しぶりに会えて、お父さん嬉しかったみたいで……」


 なんなんだ、この気持ちは……。


 まるで、死んだ肉親と再会したような……。


 いや、これはきっと何かの錯覚だ。

 久々に家族に会えたから、感動しすぎたんだろうな。


エピローグ全二話予定。

次の投稿で完結予定。

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