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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
魔王編

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 二本の神剣――エリクシエル。

 俺と魔王の戦いが……始まる。

 

「――〈正義〉」


 手始めに俺は魔王に向かって攻撃を放った。

 数ある技からこの〈正義〉を選んだことには理由がある。 


 かつて俺はエリクシエルと戦った。 

 その時、彼女が扱う聖術の一部に触れることができた。その中でも〈正義〉と呼ばれるこの聖術は、かなりの攻撃力を誇っていたはずだ。


 俺が技を放つと同時に、白い光が周囲を照らした。

 たしか、こんなエフェクトだったよな。


「ぐっ……」


 魔王は多少ひるんだ様子ではあったが、すぐに態勢を立て直した。


「なるほど、どうやら多少は心得があるようだな。だが……」

 

 魔王が神剣を構える。


「〈雷光っ〉!」


 〈雷光〉。

 これもまた聖術の中で高攻撃力を持つ技だ。

 光り輝く雷光が、空から一瞬にしてふり注ぐ。


 俺は即座にその技を回避した。

 

「…………」


 雷なんて肉眼で捉えられるわけがない。もし運が悪かったら、避けることもできずに攻撃を受けてしまっていただろう。

 

「この魔王、有象無象の聖術に破れるほど衰えたつもりはない」


 そう。

 単純な攻撃で魔王に勝るわけではない。エリクシエルは昔も、そして今も魔王に負けた存在なのだから。

 そもそも魔王は俺と同じ神剣エリクシエルを持っているのだ。剣自体で相手を圧倒するのは不可能だ。


「まさかその程度で終わりはしないのであろう? 勇者よ」

「…………」


 だが俺にはエリクシエルにはない力がある。

 聖剣・魔剣の力だ。

 こいつと神剣エリクシエルを組み合わせて、力を何倍にもして魔王に立ち向かうことができれば……勝利の可能性はあるはずだ。

 

 だが、生半可な戦術でうまくいくとは思っていない。すでに聖剣・魔剣同時使用による〈真解〉は試した後なのだ。単純に同じ技を同時に使っただけでは、こちらが消耗していく一方だ。

 頭を使う必要がある。


 よし、まずは――


解放リリース、聖剣ジュンパティー」


 聖剣ジュンパティー。

 この聖剣は俺自身ではなく周囲の人物に影響を与える。俺以外の人物、すなわち後ろに控えている家族たちだ。

 今回の目的は、俺の聖剣・魔剣適性を仲間に付加することだ。


「匠、これは」

「お父様……」


 雫とエドワードたちが声を上げている。突然何をするのか、と困惑しているのかもしれない。

 どれだけ力を上げたところで、所詮は聖剣・魔剣一本扱える程度の能力。その程度で倒せるなら、最初から雫や小鳥の力を借りていればいいだけのこと。

 このタイミングで、みんなを巻き込んだのには意味がある。

 

 次に俺は神剣を起動する。


「――〈分身〉」


 神剣エリクシエルの能力――分身。これは自らを分裂させる能力であるが、剣となったエリクシエルでは剣自身を分裂させる効果があるだけだ。


「みんな、これを……」


 後方に出現させた神剣エリクシエルのコピーは、もちろん仲間たちに使ってもらうためのものだ。


「お父様、僕たちはいったいどうすれば……」

「〈卵〉だっ! 〈卵〉を使えっ!」

「ほう、考えたな人間よ」


 ――〈卵〉。


 かつて俺がエリクシエルに止めを刺した最強の聖術だ。この〈卵〉から生まれる攻撃である孵化はその攻撃力は他の聖術を圧倒している。

 だがこの聖術には弱点がある。技を放つまで溜めに時間がかかること、そしてその間に自分自身が一定以上のダメージを受けてはならないのだ。


 一人しかいない魔王は俺の攻撃をすべて受けきらなければならない。したがって肉体にダメージが蓄積されるため、この聖術を使うことは難しい。

 逆に俺は俺以外の仲間に頼ればこの技を有効に使うことができる。


「だが剣を取るということは、戦いに参加する戦士であるということ。我の前に立ちはだかるのであれば、当然命を賭けて戦うということになる。もはや観客ではすまないぞ?」

「黙れっ!」


 エドワードの鋭い声が背後から響いた。


「僕はお父様のために戦う! 僕たちの世界を救ったお父様のように、今度は僕がこの世界を救う英雄になるんだっ!」


 …………。

 できることなら、最後まで観客でいてほしかった。

 だが〈真解〉の同時使用による攻撃が防がれた今、魔王を倒す方法はこのぐらいしか思いつかない。ふがいない父を許してほしい。


「俺が魔王を引き付けるっ! その間に〈卵〉をっ!」

「随分と威勢だけは良いな勇者――」

「〈雷光〉っ! 〈毒〉っ 〈土〉っ! 〈棘〉っ! 〈剣〉っ! 〈槍〉っ!」


 俺は矢継ぎ早に技を放った。

 神剣エリクシエルは聖剣・魔剣の同時使用と違って剣一本で様々な技を使うことができる。それは俺にとってもかなりの負担軽減につながった。


 魔王を倒せるレベルではないが、足止めにはかなりの効果がを発揮することができた。


 俺の技を魔王が防ぐ。

 しばらく、その応酬が続いた。

 時として魔王の強力な魔法の余波がこちらに迫ってくることもあったが、俺はそれを回避したり相殺したりしてなんとかしのいだ。

 そして。


「――〈卵〉っ!」


 後方に控えるエドワードたちが、〈卵〉を完成させた。

 孵化した卵から巨大な龍が生まれ、炎のブレスを吐き出すこの必殺技。ただの炎魔法ではなく、明らかにこれまでの攻撃と一線を画す巨大な一撃であった。

 これが複数。

 まともに食らったら、いくら魔王でも無事では済まない。


「――〈鏡〉っ!」


 対する魔王は己の神剣エリクシエルを起動する。

 〈鏡〉。

 この技は相手の攻撃を跳ね返すことができる。そのままでは〈卵〉の攻撃が反射されこちらに戻ってきてしまう。

 だが――


「〈白王刃〉っ!」

「な、何っ」


 魔王が驚くのも無理はない。

 〈鏡〉の力は自らがダメージを受けると無効化されてしまう。つまり俺からの余計な攻撃をくらってしまえば無効となるのだ。 

 だからこそ魔王は〈卵〉が完成した瞬間にこの技を使った。俺が付け込む隙の無いように、だ。


 だが俺は割り込みに成功した。


 〈卵〉はすでに完成している。このタイミングで俺が〈白王刃〉を割り込ませるには、あらかじめこの刹那のタイミングを見計らう必要がある。

 そう、俺は魔王のこの戦術を予想していたのだ。


 俺の〈白王刃〉が魔王の体を少しだけ傷つけ、〈鏡〉を無効化する。


「その戦術はなああああああ、昔俺たちが使った戦術なんだよおおおおおおおおっ!」


 エリクシエルの卵を鏡によって跳ね返す。

 それがかつて俺たちの勝利を決定付けた最後の一撃だった。


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