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クラスの女子全員+俺だけの異世界帰還  作者: うなぎ
魔王編

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113/120

エリクシエルの末路

 異世界の魔王――レオンハルト。

 異世界の神――エリクシエル。


 二つの巨大な力がぶつかり合い、激戦が繰り広げられている。


 俺によって召喚された神――エリクシエルは霧状の体をした巨大な顔だ。叫び声をあげながら魔王とぶつかっている。


「――白光っ」


 エリクシエルの言葉とともに、彼女の体が白く光り始めた。

 この技を見るのは初めてだが、俺は〈白光〉というその単語自体に聞き覚えがあった。


 聖術。

 

 天界の神や天使のみが扱うことを許される特殊な技。魔法の源流となった力であり、その力には俺も随分と苦戦させられたものだ。


 エリクシエルと魔王は争いあった。エリクシエルは聖術を、そして魔王は魔法を。己の力を惜しみなく発揮し、そして全力でぶつかり合っていった。

 エリクシエル雷を呼び出せば、魔王は火を。

 エリクシエルが剣を呼び出せば、魔王は槍を。

 エリクシエルが土を呼び出せば、魔王は風を。


 聖術というのは一つの技ではない。かつて神であるエリクシエルはその力を配下の天使に与え、様々な力を発現させていた。

 確か五十二種類、だったか? 弱い技もあれば俺が全然対応できないようなレベルの技もあった。それを一人で扱っているのだから、その強さは俺の戦った天使たちに匹敵するものすらあるだろう。


 だが、やはり魔王は強い。

 どうやらこの戦い、魔王が押しているようだ。一つ一つの聖術が徐々に押し込まれ、劣勢になっていく様子がよく見える。助太刀してやりたいのは山々だが、あんな派手な空中戦をされてしまった手の出しようがない。


 そもそもエリクシエルは魔王に殺されたというのだ。だったら再び戦っても魔王に負けてしまうことは目に見えた結果であった。


「エリクシエル様……」

 

 俺の妻の一人、ミカエラが両手を合わせて祈るような仕草をしている。

 天使であるミカエラにとって、エリクシエルは主であり母である存在なのだ。かつて俺に心を許すようになる前のミカエラは、敵である俺と主であるエリクシエルの間で随分と心を揺らしていたものだ。

 あまりつらい記憶をよみがえらせたくはなかったんだけどな。……まったく、ベーゼの奴は本当に嫌なことしかしない奴だ。


 戦いは終わりを迎えようとしていた。

 煙の集合体であったエリクシエルはすでにその体を保つことも難しいようで、まるで曇りガラスの上から見てみるようにぼやけて見える。技の一つ一つも精彩に欠き、あらゆる面で魔王の力に圧倒され始めていた。


「なかなか楽しい余興ではあったが、所詮は一度我に負けた敗者。たった一体で我を相手にするには、いささか力不足が否めなかったな」

「オノレ……オノレエエエエエエエエエエエっ!」

「ふむ、しかしその我を恨む心意気は大変素晴らしい。その気概に免じ、しばしアンコールに付き合うことを許そう」


 何のつもりだ?

 意味深な物言いに、俺は不気味な何かを感じずにはいられなかった。


「――奇跡」


 半死半生のエリクシエルが放った、最後の聖術。

 俺はそれをよく知っていた。


 かつて奇跡の聖天使エリックと呼ばれる男がいた。

 彼は天界最強の天使を豪語し、俺たち人類を限界ギリギリまで追い詰めた。俺は全力で立ち向かったが全く太刀打ちできず、無残にも敗れさってしまった。


 そのエリックが使っていた聖術が〈奇跡〉。あらゆる攻撃を跳ね返し、そして自身の体すらも回復させることのできるおそるべき技であった。

 最強の天使が使う聖術。ならばエリクシエルが持っている力の中でもっとも最強であるということは言うまでもない。


 だが――


「万に一つの奇跡は起きない。それが強者である我との戦い。であろう?」

「ア…………アアアアアア……」


 理論的には、奇跡の聖術はあらゆる攻撃を跳ね返す最強の力。

 だがかつてのエリックがそうであったように、奇跡の聖術には使用制限がある。大量の攻撃を受けすぎると処理が追い付かず、無効化されてしまうのだ。


 魔王は幾重にも連なる魔力弾を撃ち込んだ。その数はとても肉眼で数えるようなレベルではなく、威力もまた十分なほどに強かったのだろう。

 最強の聖術で攻守とも完璧であったはずのエリクシエルは、大量の魔力弾に体を撃ち抜かれぼろぼろとなってしまった。


 もともとが霧状の体であるから血が出たり骨が折れたりはしないようだが、もう……とてもではないが戦えるようには見えない。


「……さて、これだけ弱らせれば十分であろうな。そろそろ始めるとしようか」


 ぼろぼろになったエリクシエルを見た魔王は、満足げにそうつぶやいた。

 そして、その手を瀕死のエリクシエルにかざす。


 黒い魔方陣が出現した。


「――〈剣成〉」


 そ、その魔法はっ!


 ここにきて、俺は魔王の真意を見抜いた。

 奴は……エリクシエルを剣にするつもりなんだ。

 かつてゼオンが人間たちを聖剣や魔剣にして集めていたように、この魔王は……神であるエリクシエルを剣にするのか?


 でも人間と違ってエリクシエルは仮にも創世の神なんだぞ? 本当に同じ魔法でそんなことが……。


「ア……ア……ア」


 な、なんてことだ。

 体の収束していくその様は、以前乃蒼がゼオンによって聖剣にされてしまった時と瓜二つ。魔王のたくらみは成功しようとしているのだ。


 俺は……い、いったいどうすれば……。



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