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すべての元凶はあなた  作者: カーネーション


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第25話『いい日』

 新しい朝がやってきた。今日は珍しく目覚めも良かったし、ウィルが目の前に現れなかった。あの腹立つ顔を初っぱなから見ないで済んで、本当に平和だと思った。テラス(神殿にはないけれど)でお茶をゆっくりとすすりたいくらい。


 朝のスープは豆が多かったし、ミアさんがわざわざ作ったというパンは美味しかった。お祈りの部屋までの通路でつまずいたとき、ローラントが受け止めてくれた。「大丈夫ですか?」と聞かれたのでうなずいて返事したら、「良かった」と白い歯をのぞかせての笑顔は眩しかった。


 これだけ立て続けにいいことがあれば、期待してしまう。


 今日は何だかいい日になりそうな気がすると。


 まあ、神殿にいる限り、いいことなんてささやかなものだろうけれど、それでもないよりかはいいと思う。


 みんなの平和でも祈ろうかなあと、美しい気持ちに浸りながら歩いていたら、何となく柱の間が気になった。その景色に目を移す。


 朝からうろこに覆われた翼がいくつも見えた。そのせいで風は吹きまくり、薄い素材の服の裾をばたつかせた。案外、ドラゴンに慣れてくると迷惑に思えてくる。


 柱の間からは、とかげみたいな緑やくすんだ赤のうろこはよく見かける。だけど、黒いうろこのドラゴンはあまり見たことない。へえ、もしかして逆に、白いドラゴンもいるのだろうか。なんてぼんやり考えていたら、


「エマ様!」


 なぜか、ローラントは切羽詰まった声を出す。それと同時に、人間よりも数倍大きいドラゴンの胴体が迫ってきた。速度を落とすことなく、神殿にぶつかってくる! 衝撃で神殿の柱にひびが入った。地面がぐらつく。立ってはいられない。尻餅をついた。天井も同じだった。崩れ落ちていく。


「エマ様!」ローラントが被さって瓦礫からわたしの体を守ってくれる。


 いいことがあると思っていたのにこれだ。今までで最悪じゃないか。ローラントの背中に瓦礫が積もっていく。低く構えた頭から額にかけて赤い筋が見えて、わたしは手を伸ばす。


「ローラント……」


 ローラントはわたしの指を掴み取り、「大丈夫です、エマ様」と苦々しく笑った。何で笑えるのだろう。絶対、大丈夫じゃない。


 手が放された。ローラントはこんな状況でも、足をふらつかせながら、立ち上がる。どう考えてもダメそうだけれど、ローラントは背中から破片を落としながら、仁王立ちする。


「救い主を渡してもらおうか」


 ローラントの前にひとりの男が立ちはだかった。男は黒い髪を後ろでひとつにまとめていて、翼の風が髪を軽く持ち上げた。髭も生えているし、ローブも足元もくたびれていて清潔感がない。ローラントとは真逆な雰囲気を出していた。


 男が槍を振り回して、切っ先をローラントへと向ける。ローラントも腰に携えた剣を引き抜き、戦闘モードになったようだ。


「エマ様は渡さない」


 最悪な1日はまだ終わらないらしい。

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