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すべての元凶はあなた  作者: カーネーション


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第22話『光の部屋』

 ウィルが迎えに来るものだと思っていたら、ローラントがやってきた。相変わらず、立ち姿だけでも様になる。眼鏡も頭が良さそうに見えていい。堅実な仕事ぶりも絶対にモテるだろうなあ。


 なんてことを考えながら椅子に座っていたわたしの目の前に、手が差し伸べられた。


「行きましょう」


 抵抗できない点でいうと、ウィルよりローラントのほうが厄介かもしれない。ていねいに扱われると、こちらもそうしようと思ってしまうから。恥ずかしさを押し殺して手を重ねると、立ち上がる手助けをしてもらった。


 わたしが踊るという会場は、神殿の中央に位置している広い部屋だった。ここに来るのは2度目になる。天井も高くて、どうやって掃除しているのか不思議なほどだ。今回は祭壇があり、そこを使って何かが行われることはわかった。


 祭壇の奥には相も変わらず階段があり、台の上には椅子が設置されている。椅子は豪華なものの、背もたれは固いため、長い時間座るには向かない。座り心地の悪さは、経験済みだ。


 椅子の近くにウィルが立っていた。


 わたしが来たことなんて気づいていないようで、天井を眺めている。真剣に天井なんか見つめて何を考えているのだろう。ウィルが何も考えずにボーッと突っ立っているなんておかしいし。


 そう思っていたら、ウィルは天井に向かって手をかざす。ちらちらと降り落ちてくるのは白くて小さな光。手を出して光に触れてもあたたかみも厚みもない。ずいぶん前に触れた虫とは違い、実体のない光だった。


 ウィルが腕を下げても、光は絶え間なく落ちていく。床や椅子にぶつかると、跡形もなく消えていく。でも、また違う光が生まれて天井から降ってくる。それを繰り返す。


 魔法と呼べそうなものを見たのは、これがはじめてだった。人を召喚できる技術があるのだから、もっと魔法を使っているのかと思いきや、瞬間移動も見たことがない。ほとんど人の力で過ごしている。


 ウィルは台を降りて、呑気に突っ立っていたわたしをにらみつける。「何よ」と聞きたくなっても無駄だ。


「もし失敗したとしても、そこで躍りをやめるな。見ている方は完璧に踊れているかなど、わからないし、どちらでもいい。ただ、神聖に見えればいい。まあ、失敗など俺が許さんが、な」


 普通なら勇気づけるところだと思うけれど、この男のどこに「慈悲深さ」があるのか、ミアさんにちゃんとたずねたくなった。無いだろう、一ミリも。ここで証明されているじゃないか。


「早く座れ、開場する」


 信者さんのなかでも偉そうな人たちが集まってくると、ウィルは切り替えたように人格を変えた。にこやかである。「失敗は許さん」とか、言った同じ人とは思えない。ミアさんも他の人もこれで騙されているのだ、きっと。


 出番はすぐにやってきた。部屋の扉が閉まり、楽器を持った人たちが台の下に位置に着く。


「救い主様」


 嫌でも呼び出された時のことを思い出してしまう。あの時のウィルはわたしを「救い主様」と言っていた。今思い出すと、別人過ぎて、白々しいというか、寒気もしてくる。まだ、ぶっきらぼうに「救い主」と呼ばれる方がしっくり来る。大分、毒されているな、わたし。


「救い主様」


 もう一回呼ばれた。わかっている。台に上がり、信者さんたちを優雅に見渡す。それだけで救い主っぽく見えるのでしょう。ウィルの教わった通りにして、わたしは祭壇の前へとやってきた。

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