もふもふ様に異世界召喚されましたが。
古より伝わる伝説。
闇が世界を覆うとき、聖獣が現れ紅き瞳の聖女を招く。
聖女が生み出す聖水の力を得て、聖獣は世界を救うであろう――。
昨年から相次ぐ天災、飢饉、疫病。
人々の顔が絶望に染まる中、伝説のとおり聖獣が現れた。
「で、召喚されたのが貴女様、というわけですじゃ」
恭しく説明してくれたのは、立派な白いお髭のおじいちゃん3人組。アラブっぽい民族衣装、彫りの深い顔立ち、褐色の肌。なのに喋る言葉は滑らかな日本語だ。
そして私達の周囲には、思い思いに寛ぐ猫が10匹。
むず。
「お話はなんとなくわかりました。でも人違いです。私、目赤くないし」
普通に黒目の女子高生だし。
それに、私が聖獣様とやらに選ばれる筈はない。だって私は……。
「それは聖獣様がご判断されますので」
おじいちゃんの視線の先、一段高い場所にある豪華な椅子。そこに寝そべるひときわ大きな猫が、ゆったりと頭をもたげた。
黄褐色に黒い斑点模様のすらりとした身体。小顔のわりに大きな耳は、ピンと立っている。
私には一目でわかった。
あれは、猫じゃない。
そう、あれは、保育園の遠足で行った動物園で出会って以来ずっと憧れている……サーバル!
サーバルは軽やかに椅子から飛び降りると、悠然と私に歩み寄る。しなやかな動きはまるで猫だが、長い足で歩く姿は凛々しい。
可愛くて格好良い、それがサーバル!
サーバルは私の前に、スッと背筋を伸ばして座った。金色の目が私を見つめる。
むずむず。
ダメだ。そう思うのに、私は魅入られたようにサーバルに手を伸ばした。
大きくて先の丸い耳に指先が触れる。
あ、柔らかい。そう思うのと同時に限界がきた。
「ふ……ふぇっくしょん!」
あああ、くしゃみが止まらない!
目が痒いぃ!
涙まで出てきた……と思ったら、ペロリとサーバルに目尻を舐められた。
次の瞬間、サーバルの全身が淡い光に包まれ……目の前には褐色肌に黒髪の超絶イケメンがいた。
「おおっ、聖獣様が人の御姿を……!」
どよめくおじいちゃんたち。
「見よ、娘御の紅い瞳を! 伝説は真であった!」
なんか小躍りしてるけど、いや、これ充血だから。
「我が聖女よ、会いたかったぞ」
金の瞳を蕩けさせて微笑むイケメン。あ、顔、超好み。
「そなたも、そなたの聖水も、全て我のものだ……」
そう言ってペロリと私の目尻を舐める。ヤバい。なんかゾクッとした。
でもね、私に聖女なんて無理。
だって私、猫アレルギーだから!
まだくしゃみ止まってないからー!
お読み頂きありがとうございました。
勢いで書いてみたものの、サーバルってどれくらい知られているんでしょう……?
ちなみに私はつい最近知りました。
猫好きさんはお好きだと思います!