ブルト王国
王都の端にひっそりとある孤児院は今日も活気に溢れていた。
「ちょ、やめっ、髪を引っ張るな!」
俺は子供達とじゃれながらいつか来る子供達の卒業のために1人でも生きていける知識と技術を教えていた。
王都には学園があるがそんなトコロに入れるのはボンボンの貴族サマか豪商のみ、後は才能に溢れている民間人しか入れない。
貧民街で暮らしている俺や、子供達には縁もゆかりも無い場所だ。
「ロレスはそろそろ卒業だけど…どうだ?やっていけそうか?」
俺はそれとなくロレスに聞いてみる。
ロレスはくすんだ金髪を鬱陶しそうにこちらを向いた。
「院長先生が心配するほど私はバカじゃ無いですよ?」
クスクスと笑いながら話す。
ロレスは言動こそ少し高飛車な所があるが非常に優秀な子供だった。
「ま、スキルもかなりいいスキルだしな。大丈夫だとは思うんだけどな…」
この世界にはスキルというものが存在し、12歳になると1人1つだけスキルが発現する。
そのスキルによっては士官となったり出来るが…血筋が影響するのか俺や、子供達は普通のスキルしか発現しない。
もちろん例外はいるがそんな人は天性の才能を持っている人しか発現などしない。
ちなみに血筋が大事なのか貴族サマや王家にはトンデモないスキルが発現しているらしい。
王家などはどの様なスキルが発現するのか伏せられている。
だが、そのスキルのせいでこのブルト王国は貴族サマ中心の統治となっている。と噂で聞いたことがある。
「私のスキルは《剣術》ですからね。このままいくと冒険者になる方がいいのでしょうね。」
「まぁ、そうだろうな。」
孤児院の子供達は基本的に親から見放されたり亡くなってしまったりしている子が大半を占める。
なので卒業するとほとんどの子供達が冒険者となるのだ。
「私はもう薬草も見分けがつきますし、雑用、家事まで全部こなせます。これも院長先生のおかげですね。」
いつもの高飛車な笑いではなく、本当に感謝で一杯の笑顔を俺に向けてくれる。
俺は子供達が生きていけるように技術を教える。
自分のスキルの都合上、戦闘面での指導は拙いがそれなりに動けるため教えているのだ。
後、お金が無いので講師を雇うことは出来ないと言う悲しい理由もあるが…
「ロレスがこの孤児院では最年長だしな。いつも纏めてくれて助かっているよ。」
「それは院長先生のおかげですよ?私一人の力じゃとてもとても。」
孤児院は15歳まで、誕生日を迎える、もしくはそれなりにの年になると卒業となる。
「私は絶対に卒業したら恩返しに来ますからね。楽しみにしていて下さい。」
「……あぁ、待ってるよ。」
俺とロレスは微笑みながら子供達をあやしていた。